新型コロナウイルスのPCR検査は拡大すべきか
こんにちは。
新型コロナウイルスの影響で家にこもりっきりの日々ですが、こんな状況だからこそ何か新しいことを始めるいい機会なのかもしれません。YouTuber歴2週間の友人のTakumaもそう言っていました。
僕は動画は見る専門のYouTubeeなので、動画ではなく文章を書くことにしました。これは与えられたテーマに対して素人の頭で意見を綴っていく企画です。昨日のオンライン飲み会中に決まりました。頂いた「PCR検査は拡大すべきか」というお題に対して、今の僕が考えられることを書いていきます。
・背景
新型コロナウイルスが全世界に与えている影響の大きさはわざわざ説明の必要もないでしょう。そして感染拡大のために行われている施策が各国により異なり、現状の日本政府の施策についても賛否両論の声が多く上がっています。とりわけ日本は検査数がOECD諸国の中で圧倒的に少なく、これが有病率の把握を困難にしていると指摘されています。
・結論
「拡大すべき。ただし症状有の患者の検査基準は今のままにとどめる。感染拡大が深刻な東京において無症状者を含めたランダムサンプルの検査を3,000件以上行う。現在の市中感染率を把握し、感染収束にむけた最善のシナリオを描くことが目的である。」
という結論にいたっていますが、目的は収束に向けたシナリオを描くための現状把握です。僕が把握していないだけで関係各者は把握しているという話のような気もしますが素人なりの考えを書いていきます。
・現状の問題点
「終わりが見えない」の一言につきるかと思います。政府・自治体より様々な施策が発表されていますが、僕たちはどこに向かっていて、この生活がいつまで続くのか、自粛生活によるストレス・経済的不安は蓄積される一方です。戦略を決める際には「あるべき姿」を提示したうえで「現状」を正しく認識し、そのギャップを埋めるシナリオを描いていく必要がありますが、現段階ではどれも不十分に思え、どのようにこの危機を脱出していくのかが見えてきません。
・感染状況でわかっていること
検査数の少なさが適切な感染状況の把握を妨げるという批判はよく耳にしますが、僕たちはウイルスを最適な方法で収束させるために、何の情報を把握しなければならないのでしょうか。例えば東京に関して現時点の情報でも以下のことがわかっている、あるいは推定されます。
① 現時点での累計陽性者数は4,317人。126人が死亡。検査数は11,697人。
陽性率36.9%と非常に高いです。そしてこの4,317人という数字が検査数の上限に隠された氷山の一角であることは誰もが想像できるところです。死者数については実態を反映できているのか判断が難しいですが、肺炎死亡報告数も激増しているわけではないので、感染者のように全く把握できていないというような状況ではなさそうです。
(参考) https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
(参考) https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/2112-idsc/jinsoku/1847-flu-jinsoku-2.html
② 現時点での都内の推定感染者数は10万人~70万人
慶応義塾大学病院の公表によると4月13日以降に新型コロナウイルス感染症以外の治療目的で来院した無症状患者171人のうち7人がPCR検査陽性となっています。この171人のサンプル内感染率は4.1%であることから、無症状の東京都民における感染率は95%信頼区間で1.1%から7.6%と推定されます。もちろん、PCR検査の感度・特異度は公表されていませんが検査結果が的中していること、無症状患者が東京都民のランダムサンプルといえること、僕が大学一年生で学んだ統計学を正しく理解していることが前提となります。
(参考) http://www.hosp.keio.ac.jp/oshirase/important/detail/40185/
③ 都内で37.5度以上の発熱が4日間以上続いている人は推定2万人
検査が受けたくても受けられないという報道もよく耳にしますが、実際に発熱が4日間以上続いている人が都内だけで2万人いると推定されます。ちなみにこれは厚労省・LINEが行ったアンケート結果ですが、都内だけで350万人という回答数で全国でも20%以上の人が回答しています。おそらく日本のアンケート史上、圧倒的No. 1なのではないでしょうか。僕も1問目の簡単さにつられてアンケートページにとばされ、しっかり回答しております。あれをデザインした人は天才だと思います。話が逸れました。
(参考) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10798.html
・収束のシナリオ
さて、現状感染状況でわかっていることはこれくらいで、無症状の患者が異様に多いということのようです。それでは日本はどこに向かっていくべきなのでしょうか?考えられる収束のシナリオは①ウイルスの完全封じ込め、②ワクチンの開発、③自然感染による集団免疫の獲得くらいかと思います。
① ウイルスの完全封じ込め
書いといてなんですが、これはもはや不可能でしょう。一部地域で完全収束させても1人でも感染者が域外から入ってきては再燃のリスクがあります。これを達成するには外出自粛生活と人の移動の制限を半永久的に行う必要があります。経済的打撃云々以前に僕の生きたい世界ではありません。
② ワクチンの開発
ではなぜ今移動を制限しているのかというと、重症患者を適切に治療する医療資源には限界があり、感染スピードを抑える必要があるためです。集団免疫獲得のための時間稼ぎともいえるでしょう。ワクチンの開発が集団免疫獲得の最善策に見えますが、実現は早くて1-2年かかるといわれています。既に東京は医療がぎりぎりの状況で、緊急でない手術の延長も起こっていると考えれば、更なる感染スピードの加速は避けなければなりません。となるとこのシナリオでは、今の緊急事態宣言下の状況を、程度は変われど1-2年継続させなければならないでしょう。
③ 自然感染による集団免疫の獲得
もう一つの集団免疫の獲得方法が自然感染によるものです。これにより収束が達成されるためには、免疫がどのくらいの期間持続するのか、再感染の可能性がどの程度あるのかといったことを明らかにしなければなりませんが、それは②のシナリオでも同じことです。はしか風疹の場合、集団免疫の獲得は人口の95%が抗体を持つ必要があるようですが、新型コロナウイルスの場合とりあえず7-8割と考えておきます。では人口の7-8割が感染するまでにどのくらいの期間がかかるのか?これとワクチンの開発とのどちらが先に達成されるかで収束のシナリオが変わってくると思います。
・ランダムサンプルの検査による感染状況の推定
自然感染による集団免疫の獲得までにかかる期間を推定するためには、今人口の何%が既に感染しているのかを無症状者を含めて把握することが不可欠です。慶応義塾大学の検査結果は、無症状者を対象とした貴重なデータではありますが、先に述べた通り感染者数を推定するためのサンプル数が十分とはいえません。
もし4月時点で都民の10%が感染しているのであれば、今の感染スピードを持続させて医療崩壊を防ぎながら、集団免疫を獲得するのにかかる期間は1年弱といったところでしょうか。治療薬の開発や既存薬の有効性検証によって、今より多くの感染者を許容できる状況がつくれれば、それより早く収束させることも不可能ではありません。
一方で、まだ感染率が1%という話であれば、ワクチンの開発を待つよりほかなく、致死率も感染率が10%のシナリオよりも10倍高いことになりますから、超長期化に備える必要が出てきます。
まずはこれを把握するために3,000人も検査をすれば統計的に十分です。自分がコロナかもしれないという人を検査しても、治療薬がなく、軽症者は入院させないという方針である以上、あまり意味はないでしょう。ここに資源を投入するのではなく、無症状の市民の感染状況の把握こそ今後のシナリオを決めていくうえで必要になると思います。
終わりの見えない戦いほどつらいものはありません。このような状況下だからこそ、「あるべき姿」を描き、「現状」を把握し、両者に存在する大きなギャップを埋めるシナリオをつくる決意が必要なのだと思います。
・おわりに
いきなり難しい内容でしたが、昨日お題をもらってから久々に頭を使ったという感じです。そもそも収束とは、感染とはみたいなことを考え始めると泥沼にはまりそうでした。なにか面白い次なるテーマも募集しています。
最後になりましたが、この未曽有の事態に際して、最前線で働く医療従事者の方々や、感染拡大防止に取り組む政府関係者の方々、社会インフラを守り経済活動を維持するために現場で働かれている方々に心から敬意を表します。家にいれる人は家にいましょう。