フェイズⅣ 戦慄! 昆虫パニック
何だこのタイトルは。
いい匂いがプンプンするぜ!!
監督はあの超有名なグラフィックデザイナーのソール・バス。
そうです、オットー・プレミンジャー監督の『バニー・レークは行方不明』とか、ヒッチコックの『めまい』のタイトルデザインをした人です。
あの彼なんです。
...?昆虫パニック?ってなるよね。わかる。
だってファッションデザイナーのトム・フォードが監督した映画は2本とも息継ぎする暇もないくらい「美」が散りばめられていたし、
もともと美大生で絵画を勉強していたデヴィッド・リンチの作品は言わずもがな、病みつきになるような映像を魅せられることになるじゃない。
なんか映画とは違う畑で活動していた人が手がけた映画ってさ、
どっか「プライド」みたいなもの、感じるときあるじゃない。
戦慄!昆虫パニック!ですよ?
何回でも言います、戦慄!!昆虫パニック!!!!です。(最高)
あらすじはこうです。
宇宙のどっかで何かがパーン!して、
何だ、何が起きた!?地球に影響はあるのか!?ってな感じで調査をしたらどうやらアリが不穏な動きをしているらしいぞと。
何でも天敵であるはずの蜘蛛とかカマキリとかが一切アリを襲わなくなって、その上アリの種族同士が結託して、数が急増しているとか何とか。
その調査に乗り出したたった2人の男。
暗号学に詳しい生物学の専門家のレスコ(マイケル・マーフィー)と、
ベテラン生物学者のハッブス博士(ナイジェル・ダヴェンポート)。
彼らと超高い知能を身につけた「スーパーアリ」の大群の戦いを描いております。
最初はこっち側、いわば人間サイドが「アリの実験」を行なっている流れなんですが、
中盤で立場が逆転するんですよね。
気がつくとアリが「人間の実験」を行なっているわけです。
エアコンを壊して行動を制限してみたり、殺さずにじっと観察してみたり。
そのことに気がついたレスコは「何故だ?目的は何だ?」って一生懸命考えるんですけど、その答えは結局最後まで明らかになりません。
「侵略」とか「征服」とかが明確にゴールとして設定されている映画はよくありますよね。
でもこの作品に関しては、ひたすらに「憶測」しかないんです。
だって分かりっこないですよ。リアルでは動物は喋らないし、具体的な意思疎通の手段なんてないんですから。
わたしは大学で心理学を専攻していたんですが、心理学って結構実験するんです。
円形の部屋の中央に目隠し状態で座って、12方向に設置したスピーカーのうちどこか1箇所から流れてくるノイズを、「どの方角のスピーカーが出している音か」選定する実験とか、
鳩に「ボタンを押すと餌が出でくる」ことを学習させる実験とか。
こうやって文字にしてみるとはぁ?ってなりますが、当時は頑張って必死にレポート書いてました。
もちろん上記のことを専門に、何十年も研究し続けている教授がいて、
初めて私たちみたいな学生が勉強出来ていたんですが、
ここで教授に質問してみましょう。
「その研究に何の意味があるんですか?」
これ、最強のキラーパスです。
もちろん、学習能力の限界を〜とか、音源定位能力を測定することで脳科学の観点から危機回避についての〜とか、そんなんは答えてくれるでしょうが(完全にうろ覚えです)、突き詰めていくと意味という意味はないんですよね。
実際にお世話になった教授がそう仰ってました。
意味という観点だけで言えば、農家さんとか漁師さんとか電力会社とか、
そういう人たちの方がよっぽど意味のあることをしていると。
ただ、明らかにしたいんですよね。好きなんですよね。もっと言っちゃえば取り憑かれてます。
だからこそ長い間、研究を続けている。
もちろん、警告の意図もあるでしょうが、
そんな学者たち、オタク達の滑稽な愛おしさ、おぞましいその狂気を、
ソール・バスは客観的に見せたかったのかなぁ〜なんて思いました。
話のスピード感は良いし、
ところどころに幾何学的なオブジェクトが見られて面白いと思いますので、
気になった方は是非観てくださいね。
[ Wikiがありますよ〜 ]
[ DVDが出てますね〜 ]
"Phase IV " 2021.3.11