3話 曇天と夕凪

あぁ。外がうるさい。ガヤガヤしている。
そんなことを思いながらぼーっとしながら自転車を漕ぐ。だが次第に違和感が僕を襲う。
その違和感に気付かぬまま学校に着き、靴を履き替えていると昨日聴いた声が聞こえてきた。
リオだ。どうやら心配したような顔で僕に昨日の通り魔事件ヤバいよね。という内容の話をしてきた。違和感の正体はそれだった。
違和感に気付き全てを思い出した僕は震えた。
昨日叔父が刺されたというのに僕は覚えてすらいなく、のんきに学校に向かっていたのだ。
僕は全身の血が抜けたように青くなり、リオに小声で震えながら告げる。
「刺されたのは僕の叔父だった。でも僕はそれを覚えていなかった」と。
なぜ覚えていなかったのか。そう考えていたら頭がキーンと割れるような痛みと共に鼻血が出てきた。リオの肩を借りながら保健室に向かっていたが途中で意識を失い倒れたらしい。
目を覚ますとベットの上にいた。だが体は動かない。いや、動かせない。
拘束具が付けられていて身動きひとつ取れない。まるで夕方のトンネルような明るさで6畳くらいの狭い部屋。そして窓はなくベットしかない。すぐにこれが監禁されていると気付く。
理由は分からない。
首を動かすと時計、机、椅子。そしてベットしかない。時計は19時くらいだろうか。メガネがなくてぼやけて見えない。やることも無いし頭の中で状況を整理していた。
すると、ドアが開く。入ってきたのは着ぐるみを着た160前半くらいの背丈のボイスチェンジャーを使った、ナイフを持った危なそうな人。
その人は言う。

「君は今日からここで過ごしてもらう。俺の正体を当てることが出来たらここを出してやる。
条件付きだがな。そして俺はV.V.だ。ビビとでも呼ぶといい。困ったら机の上にある呼鈴を押すといい。さらに、君にはある程度の自由を与える。俺に質問するも良し、この室内を散策するも良し。ご飯は1日2食、風呂は1日に1回。飯は少ないかもだが許して欲しい。」

そう言ってビビは拘束を解く。
ナイフが怖くて暴れることも出来ない。
ただ言いなりになるしかないがそれでもまぁいいだろう。この様子だと殺されることは無さそうだ。更にもうひとつ。
喋り方的におそらくビビは女性だ。
女性によくある喋る時の抑揚がそう感じた。
更に育ちもいいのだろう。まぁ、監禁なんてしてりゃ育ちなんて言ってられないが…。
とりあえず出された夕食を食べようと。机に向かう。机には表紙が塗りつぶされた本が2冊あった。だがそれを読むにはまず腹ごしらえだ。
白米、温野菜、焼き鮭、味噌汁…
なんて健康的な食事だろう。僕は無事間食し、呼鈴を鳴らす。
食事が美味しかった事、本を置いてくれた事。
そして肝心な質問をするために……

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