Champagne

 シャンパーニュ。

 嗚呼、こうして口に出して読むだけで、なんとも心地が良い。グラスの底から立ちのぼる細やかな泡は、よく見るとその一粒一粒が連なりながら天に昇る、優雅な光の魔法のよう。まずはその淡いゴールドの液体を目で楽しませてもらい、おもむろにグラスを交わす。冷えた液体がほどよい発泡とともに、これから始まる物語の予感を喉の奥へ運んでゆく。

 初夏は屋外。パラソルの下、陽射しをよけてグラスを傾けるのがいい。しっかり冷やしたシャンパーニュもあっという間にグラスが汗をかき始めるから、ぬるくならないうちにサッと飲み干してしまおう。

 冬は、小走りで到着した待ち合わせのレストラン。コートを脱いで席に着くと、外との温度差で頬が火照っている。乾杯のシャンパーニュはそんな体をちょうどよく落ち着かせてくれる。橙色の照明に照らされ、向かいの様子を映し出すフルートグラスは、さながら上質な広角レンズのよう。

 さて、今夜の一杯目はどんなシャンパーニュだろうか。
 願わくばメゾンものではなく、レコルタン・マニピュランを。その一期一会がいい。ふくらみのあるグラスで少し複雑味を帯びた芳しい香りを鼻に感じると、夜の扉がそっと静かに開くことでしょう、

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