ゴールデンチョコレートが新発売だった頃の話
もうかれこれ20年以上経つだろうか。
当時大分の大学に通っていた頃の話。
固定のアルバイトで大分駅の近くのCDショップで働いていた。
いつも電車で通っており、仕事終わりは上司のお姉さんと駅にあるミスドに寄っていた。
そんなある日の出来事。
その日は、当時新発売になったゴールデンチョコレートを食べたくて時間が少ない中、二人でテイクアウトで帰る事にした。
それぞれ選んで会計を済ませ。ドーナツの入った袋をそれぞれ持って終電に乗る。
(念の為言っておくが、二人は別方向の電車で通っている)
自分はは早く食べたかったので、電車が動き出すと同時にワクワクしながら袋を開けた。
すると……
その袋の中には、頼んだはずの物が入っていなかった。
目当てであるゴールデンチョコレートが入っていない。あの、茶色いチョコレート生地のドーナツに黄色いパウダーのトッピングがかかっている、独特の外観のドーナツが入っていないのである。
それに気付いた瞬間、いろいろなことが頭をよぎる。
どう考えても袋の中身がお姉さん好みの品揃え。トレー一つでお姉さんと一緒に会計。先に袋を手にしたのはお姉さん……ん?お姉さん?袋間違えた?
その時俺は財布にお釣りを戻していて見ていなかった。目線を戻した時には袋は一つしか置いてなかった……そうか、その時だったか……
自分が降りる駅まであと一つ、落ち込む気持ちを抑え手元にあったドーナツ達を一気にかきこみながら「明日確認してみよう」と思った。
次の日、店に着くと目の前をお姉さんが歩いていた。
ちょっと後ろを振り返り、俺の存在に気付くお姉さん。
小走りに逃げていくお姉さんを追いかける俺。追いついて一言。
「昨日……間違えたよね」
無言でうなずくお姉さん。
「……うまかった?」と聞く俺。
ニヤッと笑いまた逃げていったお姉さん。
こんな子供みたいな23歳の男と28歳の女はその後も毎日のように二人でミスドに通いましたとさ。
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