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【編集会議禄】資本主義の欠片とAesthetics |独立日記 本屋への道 054

2025.2.4(火)

昨日ZINEの作り方を調べたり、企画を考えていたら、脳がそっち方面にいった。ずっと放置していた、所属している出版部で作る新しい紙媒体の編集会議もしてしまう。

どうやって表現するかということを話す。本のカタチについてだ。写真集と読み物を別冊にして、同時に販売するというのをひらめいたので提案してみる。写真集だけ欲しい人はそれだけでも買えて、読み物だけ読みたい人もそれだけ別に買える。セットだとちょっとお得みたいな価格で。

以前は、定期刊行物として雑誌のような見た目の誌面展開をしていたのだが、それだとなかなか写真を大きく見せられなかったり、紙質をコロコロ変えると印刷代が高かったりして、写真と文章が良さを消し合ってしまっているような気がしたのだ。

なので、写真と文章を共存させたいと思った結果、物理的にはそれぞれを独立させた方が良いと思った。中身はシンクロさせて、一緒に読むと知らなかった世界が広がるような感じを目指したい。

テーマは、行き過ぎた消費資本主義からの逃避、都市文明の断片、抜け殻の都市、ノスタルジーとユートピアと「いま/ここ」、都会の孤独、人がいない巨大なショッピングモールなど。空疎な商業施設の美しさと揺らぎと哀しみみたいな感情を出せれば。

気になる美学(Aesthetics)もあげていく。廃墟、心霊、スピリチュアル、オカルト、city pop、Vaporwave、The Backrooms、liminal space、ambient、Mondo、Kitsch、Dreamcore、Weirdcore、Traumacoreなどなど。

この辺は一緒につくってるS氏が詳しくて、私の知らない本やサイトをたくさん読んでいるので、ほおほおと聞いていく。「Aesthetics Wiki」というサイトの存在を教えてくれたのでチェックしてみた。面白い。

「ヒプナゴシア(hypnagogia)っぽい都市の光景を切り取りたい!!」とか言われて、最初は何を言っているのかよくわからなかったが、色々インプットしてチューニングを合わせた結果、最近やっと理解できるようになった。

ヒプナゴシアは、眠りにつく前の半覚醒状態のことらしい。うつらうつらしている状態というか。簡単にいうと窓から淡い光が指して、揺れているような光景というか。

私のインプットしてきたものが2層も3層もレイヤーが古くて、鈴木清順監督の『陽炎座』とか『ツィゴイネルワイゼン』が思い浮かんだ。でもこちらはシュールや幻想が、日本的であり土着だ。土臭さがちゃんとあるというか。

それに対して、同じ幻想なんだけれども西洋的であり無機質な感じ。ベルギーの幻想系画家のルネ・マグリットやポール・デルヴォー。アメリカの都市の孤独が表現されたエドワード・ホッパーとか。私のキャッチできる範囲の美学だとシュールレアリズム。その令和版っていう感じかなとか。

Traumacoreの話をしていて、ふと『メトロポリタン美術館』という子供の頃にトラウマになったNHKのみんなのうたを思い出す。

幼心にすごく怖かった。不気味な彫刻の天使やミイラと踊ったり、深夜の美術館で迷子になる怖さがあった。この感覚。当時はだれとも共有できなかったんだけど。youtubeで「怖い」というのでアップされていたので、やっぱり同じ感情を抱いた人がいたのだ。

見返してみると今でも不思議な気持ちになる。取り残されたような。ブラウン管の中に連れていかれるような。神隠しに合うみたいな感覚。曲や歌い方の明るさと、歌詞と映像の暗さというか恐怖感が、アンバランスで不安になる。「大好きな絵のなかに閉じ込められた」という歌詞で終わるのも怖すぎる。でもやけに明るい。踊ってる子供も笑顔だし。その笑顔も不気味だし。

テレビとか彫刻とか、非人間的なのに、人間っぽいものの怖さっていうか。不気味の谷現象っていうか。全貌のわからない巨大なシステムに取り囲まれている不安がある。

というわけで、編集会議では本のカタチや構成がなんとなく見えてきた。通底する美学や概念の名前がわかったので、チューニングを合わせたりインプット&アウトプットしていく段階へ向かうというようなすり合わせをする。

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