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#1 オーソモレキュラー療法は自宅でできる検査キットを使って実践できるのか? クリニックで受ける検査との違いや問題点を解説
近年、健康意識が高まるにつれて「メガビタミン健康法」や「オーソモレキュラー療法」に関する情報が増えてきました。
メガビタミン健康法とは、主に海外サプリメントなどを使ってサプリメントをメガドーズする療法です。対してこちらで解説しているオーソモレキュラー療法は、血液検査を行って専用のサプリメントで栄養療法を行っていくものです。
どちらもサプリメントで足りない栄養素を補給していきますが、この際どれくらいサプリメントを摂るかについては、主に血液検査を用いて判断しています。この血液検査は血清フェリチン値など保険診療の血液検査では受けられず、対応しているクリニックも多いとは言えません。
そこで候補に挙がるのが「自宅でできる血液検査キット」です。自宅でできる検査キットでは、郵送を利用して自宅に居ながら血清フェリチン値や総タンパクなどを検査することが出来ます。このため、自力でやりたい方やクリニックが近くに無くて検査が受けられない方に人気となっています。
ですが、このような自宅でできる検査キットで出た結果は、果たして正確な値と言えるのでしょうか? 今回は自宅でできる検査キットの問題点と、クリニックで受ける検査との違いについて解説します。
オーソモレキュラー療法は、 自宅でできる検査キットを使っても実践可能?
オーソモレキュラー療法とは、基本的にオーソモレキュラー療法に対応するクリニックで専用の採血を行い、その結果を基にサプリメントを用いてアプローチしていく療法です。
このオーソモレキュラー療法を行うと、現代の医療では治療が難しい原因不明の不調や、うつ、パニック障害などのメンタル的な不調が改善出来ると言われています。また、アンチエイジングや美白など美容にも効果があるとされ、様々な病気の予防や改善など、多くの効果が期待出来るとされる療法です。
そんなオーソモレキュラー療法で効果が期待出来ると言われているものには次のようなものがあります。非常に様々な不調や病気が当てはまることが分かりますね。
オーソモレキュラー療法で効果が期待出来ると言われているもの
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このように様々な不調に効果が期待出来ると言われているオーソモレキュラー療法ですが、難点があります。それが、対応するクリニックでしか検査が受けられないことと、オーソモレキュラー療法の検査は健康保険が適用されないため、保険適用の検査と比べるとどうしても高額になってしまう事です。
例えば、当方が推奨するオーソモレキュラー療法の血液検査(基本スクリーニング検査)では、血液、唾液、尿を含めた全60項目以上もの項目を検査することで、全身の状態や栄養状態を把握することが出来るようになっています。
更に、オプション検査として糖尿病や骨粗しょう症、SIBOやリーキーガット症候群、DHEAs、酸化LDL検査など様々なオプションを加えることで、更に詳細に身体の状態や栄養状態を把握することが可能です。
これらの結果は、分子栄養学に精通した専門医が一人一人のデータを解析し、レポートにまとめられます。メディカルレポートでは、血液検査結果についての解説を主に行い、栄養レポートでは個別に最適な栄養アプローチのアドバイスが記されています。
このようなレポートを参考に、専用の分子栄養学実践専用サプリメントで栄養補給を行っていくのがオーソモレキュラー療法です。
このオーソモレキュラー療法の検査では健康保険が適用されず、すべて自己負担となる自費診療です。加えて、抱えている病態が多ければ必要な検査の数も増えてしまいます。
このため、人によっては検査代が2万円〜5万円、受けるクリニックによっては10万円や20万円以上するケースも見られます。特にオーソモレキュラー療法の検査に対応したクリニックはまだまだ少なく、料金はクリニックが独自で決めているところも多くあります。そのため、近くで受けられるクリニックの料金設定によっては、かなり高額になってしまうところもあります。
また、使用するサプリメントも特殊なもので、市販されているサプリメントに比べると非常に高額です。人によってはオススメされたサプリメントの合計額が5万円〜10万円以上と高額になることもあることから、その金額の高さで躊躇してしまう方も多くいます。
これに対し、もっと手軽で安く出来ることを売りにしたのが「メガビタミン健康法」です。メガビタミン健康法は、「高額な検査は必要なし」「使うサプリメントは安い海外サプリメントでOK」とした、藤川徳美氏が独自に提唱している健康法です。
特に、2018年11月に発売された「うつ消しごはん」(藤川徳美著)や、2020年11月に発売された「心と体を強くする! メガビタミン健康法 」(藤川徳美著)という本によってメガビタミン健康法が大きく知れ渡るようになりました。
メガビタミン健康法では、うつ病などのメンタル的な不調や体調不良は「タンパク質不足」と「鉄不足」が原因だとし、これを改善させるためにプロテインを始めとしたサプリメント(ATPセット)をメガドーズしていく手法です。
例えば、うつ病など精神的な不調は原因の1つとして「鉄欠乏性貧血」が関係している事があります。鉄欠乏性貧血とは、その名の通り鉄分の摂取量が足りない場合や、体内で鉄分が不足してしまっている場合に起こる貧血です。全体の貧血原因の約7割が鉄欠乏性貧血だと言われています。
ただ、鉄欠乏性貧血といっても、単に鉄分が足りないだけで無く、タンパク質が足りていない場合も鉄欠乏性貧血となる事があります。これは、体内で鉄を運搬、貯蔵、利用するためには、タンパク質の利用が欠かせないためです。
そのため、メガビタミン療法ではうつ病に対して基本セットとなる「ATPセット」と呼ばれるサプリメントセットの摂取が推奨されています。ATPセットとは、「プロテイン」「ビタミンB」「ビタミンC」「ビタミンE」「アミノ酸キレート鉄(フェロケル)」の5種類のサプリメントのことです。
これらサプリメントを、例えば次のような量摂取することがメガビタミン健康法の基本的な手法です。
ATPセットの標準量とメガ量の例
標準量;
ホエイプロテイン・・・20g〜30g×2〜3回
ビタミンB50:2錠、朝夕。
ビタミンC1000:3錠、朝昼夕。
ビタミンE400:1~2錠、朝。
キレート鉄(フェロケル)36mg*2~3、もしくは27mg*3~4。夜に摂取。
メガ量;
ホエイプロテイン・・・20g〜30g×2〜3回
ビタミンB50、3~6錠、朝昼夕。
ビタミンC1000、9~12錠、朝昼夕(腸耐性用量の2/3程度)。
ビタミンE400、3~5錠、朝。
キレート鉄(フェロケル)36mg*2~3、もしくは27mg*3~4。夜に摂取。
※プロテインの量はお腹の調子をみて減量する場合がある。
※男性の場合は、鉄の摂取は非推奨
https://ameblo.jp/kotetsutokumi/entry-12412449253.html より
これらサプリメントを摂取していき、タンパク質や鉄の血中濃度を高めていきます。その際、タンパク質が足りているかどうかや、鉄が足りているかどうかを調べるのが、血液検査項目の「BUN(尿素窒素)」や貯蔵鉄である「血清フェリチン」等です。
メガビタミン健康法では、BUNの目標値は20、アルブミン4.2以上、GOT、GPT、γGTPは20前後が理想と言われています。
また、フェリチン値の目標は150~200程度とし、3ヶ月〜半年ごとに測定して血清フェリチン値が目標の範囲内に収まっているかどうかを確認するとしています。
この血液検査は自身で受ける必要がありますが、保険適用の検査では何かしら病気の疑いや病気を抱えていないとこれら項目の血液検査は受ける事が出来ません。また、フェリチン値を調べる検査は健康保険適用外で、そもそも検査自体を行ってくれないクリニックが大半です。
そのため、検査をしたくても受けられない方もいますよね。そこで候補に挙がるのが、自宅でできる検査キットの活用です。
現在では、Amazonを始めとした通信販売が普及したことで、自宅でできる血液検査キットなども販売されるようになってきました。
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これらは検査キットに同封されている案内に従い、ご自身で採血します。そして、採血した血液を郵送で送ることで、後日結果が郵送されてくるといった流れです。
主に12項目前後の項目が検査でき、値段も数千円と手ごろなことから、病院で採血を受けられない方や自力でオーソモレキュラー療法を行っていきたい方に利用されています。
DEMECAL 生活習慣病+糖尿病 セルフチェック
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検査項目
栄養状態総タンパク(TP)、アルブミン(ALB)
肝機能AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ‐GTP)
脂質代謝総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDL-C)、中性脂肪(TG)
腎機能尿素窒素(BUN)、クレアチニン(CRE)
痛風尿酸(UA)
糖代謝血糖(GLU)、ヘモグロビンA1c(HbA1c)
価格
7,370円(税込)(記事執筆時点)
自宅でフェリチン検査!(標準キット)
検査項目
鉄関係:血清フェリチン、血清鉄 (Fe)
生化学:AST (GOT)、ALT (GPT)、γ-GTP、中性脂肪 (TG)、総コレステロール、LDLコレステロール (悪玉コレステロール)、HDLコレステロール (善玉コレステロール)、尿素窒素 (BUN)、クレアチニン (Cr)、尿酸 (UA)、総タンパク (TP)、アルブミン (Alb)
価格
オンライン一般価格:7,200円 (税込7,920円、送料無料)(記事執筆時点)
このような検査キットを使えば、自宅で手軽にBUNやアルブミン、GOT、GPT、γGTPやフェリチン値などを検査することが出来ます。これならわざわざクリニックまで血液検査を受けに行かなくても、オーソモレキュラー療法が出来そうですよね。
では、これらを用いて正しいオーソモレキュラー療法は出来るのでしょうか?
結論を先に言いますが、このような自宅でできる血液検査キットを使ってのオーソモレキュラー療法実践は、問題点が多くオススメできません。
なぜなら、これら検査で使われている試薬が不明なため、出てきた数値の基準値やカットオフ値がオーソモレキュラー療法のものと全く異なるからです。
また、他にも検査項目が少ない、タンパク質や鉄が不足した原因までは分からない、検査で出てきた数値がそのまま体内の栄養状態を表しているとは限らないなど、様々な問題があります。
自宅でできる検査キットを使ってオーソモレキュラー療法を行う際の問題点
検査項目数が少ない
カットオフ値、基準値の違い
タンパク質や鉄が不足した原因までは分からない
検査結果がそのまま体内の栄養状態を表しているとは限らない
そのため、自宅でできる血液検査キットを使ってのオーソモレキュラー療法実践は、問題点が多くオススメできません。
※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓