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#1 貧血の人は低血糖症になりやすい。貧血と低血糖症の関係とその対処法とは?オススメの分子栄養学的アプローチを解説
女性と子供は特に貧血になりやすいといわれています。貧血になると、疲れやすくなったりイライラしたりなどの身体的、精神的不調が引き起こされる原因になります。
一方で、食事をする度に血糖値が急上昇、急降下してしまう隠れ低血糖症や、血糖値を上げられない無反応性低血糖症も近年新たな病気として注目されるようになってきました。
この貧血と低血糖症にはどのような関係があるのでしょうか? 実は、この貧血と低血糖症には深い関係があると言われています。しかし、世間では貧血と低血糖症との関連はあまり知られていません。
今回は、貧血と低血糖症の関係とそのメカニズム、貧血の原因とその改善方法を解説します。
貧血だと低血糖症になりやすくなる!?貧血と低血糖症の関係とは。
現代の日本女性のうち約40%が貧血だといわれ、特に月経のある20代〜40代の女性の約65%が「鉄欠乏性貧血」もしくは「かくれ貧血」と言われています。
貧血はもはや国民病とも言える症状の1つで、この貧血からくる精神的不調や体調不良に日々悩まされている方も少なくありません。
また、鉄欠乏性貧血を抱えた女性の多くが出産適齢期であることから、妊娠・出産と共に更に鉄消費が増大して鉄欠乏が進行し、産後に重度の鉄欠乏性貧血になってしまう方もいます。
加えて、貧血はお腹にいる赤ちゃんにも悪影響を及ぼします。赤ちゃんの成長には鉄が欠かせず、鉄が足りない場合は十分な成長が出来ません。そのため、母体が貧血の場合は赤ちゃんの成長に大きな悪影響を及ぼし、場合によっては発達障害や成長障害などを引き起こす原因となりえます。
そんな貧血の主な症状としては、「めまいや立ちくらみがする」「太りやすくなった」「爪がもろくてすぐ割れる」「喉に違和感があり、物を飲み込みにくい」などがあります。この他にも、次のように様々な症状が引き起こされることが知られています。
鉄欠乏性貧血とその症状
めまい、立ちくらみがある
爪先が割れる、もろい
頭痛、耳鳴りがする
風邪を引きやすい、風邪が長びく
疲労感がある、何となくだるい
下痢をしやすい
むくみやすい
イライラしやすい
軽い動作で動や息切れがする
注意力が低下している
寒がり、冷え症である
喉に違和感がある、カプセルが飲みにくい
朝起きられない
口内ができやすく、荒れやすい
食欲がない
歯茎から出血しやすい
顔色が悪い
知らないうちにあざが出来ている
毛穴が開いている、肌のきめが粗い
好き嫌いが多い、菜食主義である
化粧ののりが悪い
痩せている(BMI*が18以下)
抜け毛、キレ毛が多い、つやがなくパサつく
代謝が悪く、太りやすい
このような不調の症状が多岐にわたることから、元々は貧血が原因にも関わらず「うつ病」や「パニック障害」などの精神疾患と間違えられてしまう場合も少なくありません。
しかも、貧血と低血糖症の症状は似ている部分もあり、この2つの症状が重なる事で更に症状が酷くなることもあります。例えば、低血糖症の主な症状を下記の表にまとめてみました。鉄欠乏性貧血の症状と見比べてみると、かなり似ていることが分かりますよね。
低血糖症の主な症状
全身の倦怠感、疲れやすい
集中力が無い
眠気が強く、朝起きられない
寒がり、低体温
動悸がする
めまいがする
冷や汗をかく
不眠
イライラする
頭痛
神経過敏
不安、恐怖感が強くなる
太りやすくなった
また、貧血と低血糖症はどちらも症状が似ているので、貧血の裏に低血糖症が隠れていることにも気がつかない場合も多いです。もしくは、どちらも徐々に進行していくことから不調の状態に慣れてしまい、貧血や低血糖を抱えていることにすら気がつかない人もいるほどです。このため、貧血も低血糖症も精神疾患など他の病気と間違えられやすい病気でもあります。
では、具体的に貧血と低血糖症にはどのような関係があるのでしょうか?
1つ言えることとして、貧血があると低血糖症になりやすくなるという傾向があります。
その主な理由の1つは、貧血の状態だと身体が作り出せるエネルギー生成量が低下してしまうためです。貧血は単に血が足りないだけと思われがちですが、それだけではありません。血液や鉄分は体内の細胞に酸素や栄養を届けたり、脳の神経伝達物質を合成する材料としても使われています。
そのため、貧血の場合ではその分だけ全身に酸素や栄養を運ぶ能力が低下し、酸素や栄養が足りなくなると身体の細胞はエネルギーを作れなくなります。その結果、代謝機能の低下や脳機能の低下、免疫機能の低下や自律神経の乱れを引き起こしてしまうのです。この代謝機能低下や自律神経の乱れが引き起こされることから、貧血は低血糖症やPMS(月経前症候群)などを発症する原因になると言われています。
女性と子供に多い「貧血」が低血糖症の原因に。その貧血の原因とは?
最初にも解説しましたが、貧血にも腎性貧血や溶血性貧血など様々な種類があります。その中でもやはり一番多い貧血が「鉄欠乏性貧血」です。鉄欠乏性貧血とは、その名の通り鉄の摂取量が少ない場合や不足している場合に起こる貧血のことで、この鉄欠乏性貧血は、全体の貧血原因の約7割を占めています。
この鉄欠乏性貧血は特に女性と子供に多く、理由としては女性の場合は毎月の月経によって定期的に出血し、血液と共に鉄分が失われてしまうためです。加えて、妊娠出産によって鉄の需要と消費が多くなるのも女性に貧血が多い理由です。
また、女性に多い貧血としては、間違ったダイエットや偏食による摂取不足、ストレスによる吸収能力低下、消化管出血なども関係しています。他にも、子宮筋腫、過多月経など何かしらの疾病や病気、怪我によって出血量が多くなった場合も鉄欠乏性貧血となります。
特に最近ではダイエット志向や健康志向の増加、糖質制限ブームなどによって、肉を食べない方や食事制限を行う方が増えてきました。このような背景も、鉄欠乏性貧血の発症に大きく関係している原因です。
鉄欠乏性貧血に陥る原因
肉類の摂取量低下、菜食主義
コーヒーや紅茶の摂りすぎ(タンニンの影響)
レトルトやインスタント食品の摂りすぎ(リン酸の影響)
タンパク質不足
胃の消化能力低下
ビタミンCやビタミンB群、亜鉛など造血に必要な栄養素の不足
上のリストでもまとめましたが、特にダイエットや健康志向などによる鉄分の摂取不足に加え、現代の食生活で摂取量が多くなったコーヒーや紅茶、レトルトやインスタント食品の摂りすぎも関係しています。
これらは「タンニン」や「リン酸」などが多く含まれており、これらの成分は鉄分の吸収を阻害してしまいます。そのため、余計に鉄欠乏性貧血に陥りやすくなってしまっているのです。
次に、成長期のお子さんも貧血になりやすいという傾向があります。成長期のお子さんの場合は特に鉄の消費量が激しく、これは骨や血液を作るために大量の鉄が必要になるためです。また、初潮を迎えた後は成人の女性と同じように毎月定期的に月経による出血が発生します。
特に子供の身長が伸びる速度は著しく、身長を伸ばすための骨を形成するには骨の鉄筋部分を担う「コラーゲン」が欠かせません。このコラーゲンは鉄を材料に作られており、骨以外にも肌や歯肉など様々な組織においてコラーゲン繊維が重要な役割を果たしています。
成長期のお子さんは身長を伸ばすためにコラーゲンの合成量が著しく、日々大量の鉄分が消費されています。また、お子さんがスポーツをしている場合は更に鉄分の消費量と必要量が上がります。特に初潮を迎えた女の子がバスケットボールやバレーボールなどの激しいスポーツをしている場合は貧血に陥りやすいです。
これは成長期に必要な鉄分に加え、生理での出血量とスポーツによる赤血球へのダメージが重なる事から、鉄分の消費量が多くなるためです。女の子に限らず、男の子の場合も貧血になりやすいので、お子さんがいるご家庭は注意しましょう。
このように、成長期のお子さんと女性は鉄分の消費量が多いことから、貧血になりやすいという傾向があります。貧血になると、低血糖症やめまい、頭痛やうつ症状など様々な不調へと繋がってしまいます。
鉄欠乏性貧血と診断されていなくても注意が必要!隠れ鉄欠乏性貧血とは?
それから、現在「鉄欠乏性貧血」と診断されていない方でも注意が必要です。通常、貧血かどうかの判断は病院の血液検査で診断して貰いますよね。
しかし、現在の病院では貧血の診断を「ヘモグロビン」という値が低いかどうかだけで診断しています。ヘモグロビン値の低下は確かに貧血を診断する指標となるのですが、この値が一定以下にまで低下していない限り、仮にギリギリ下限の値だったとしても貧血と診断されません。この貧血と診断されていなくても貧血の状態になっている「隠れ鉄欠乏性貧血」の方が非常に多くいるのです。
また、貧血を判断する血液検査項目にはヘモグロビン値以外にも「赤血球数」や「血清鉄」「不飽和結合能」、鉄の貯蔵量を表す「フェリチン」などの検査項目があります。貧血が進行する際はこの貯蔵鉄であるフェリチンから減り始め、次に血清鉄、次にヘモグロビンと段階を追ってヘモグロビン値が下がっていきます。
つまり、ヘモグロビン値が下がってきて貧血と診断されたときは、もう既に重度の貧血になってしまっているのです。貧血と診断される前から貧血は徐々に進行しており、貧血だと気がつかないまま徐々に頭痛やめまい、倦怠感や食欲不振などの症状が悪化している場合もあります。
このような貧血と診断されていないけど貧血に陥ってしまっている状態の方はかなり多く、一般的な病院の血液検査ではまず見つけてくれません。このような貧血と診断されていないけど実際には貧血が隠れている状態の事を、「隠れ貧血」や「潜在性鉄欠乏性貧血」などと呼んでいます。
もし上記のような不調がある場合は、隠れ貧血の疑いがありますので注意が必要です。この隠れ貧血や潜在性鉄欠乏性貧血も低血糖症を引き起こすきっかけになりますので、ご自身に隠れ貧血が無いかどうか血液検査でチェックしてみて下さい。チェックの仕方は、血液検査の結果からある程度判断することが出来ます。
血液検査でチェックする項目としては、「赤血球数」「ヘモグロビン」「血清鉄」「不飽和鉄結合能」「フェリチン」などです。これらは貧血の状態だと数値が低下することが多く、貧血を判断する指標となります。具体的な判断指標としては以下の通り。
血液データから見る貧血の判断基準
赤血球数……430〜500万
ヘモグロビン……13.0以上
血清鉄……60〜100以上
不飽和鉄結合能……250〜300
血清フェリチン……125以上
これらの数値を参考に、ご自身が貧血や隠れ貧血に陥っていないかをチェックしてみてください。ちなみに、血清フェリチンの検査は、通常の保険適用の検査では行ってくれません。フェリチン値を知りたい場合は、オーソモレキュラー療法の血液検査を受けてみて下さい。
フェリチンは、貧血を見るマーカーの中で最も鋭敏に反応する数値です。この値が低下していた場合は隠れ貧血の疑いがあります。もし低かった場合は、後述する方法で積極的に鉄分を補給するようにしましょう。
また、逆にフェリチン値が正常範囲だったからといって安心することは出来ません。フェリチンは生理不順や炎症によっても数値が上昇する事があります。この場合は数値がよく見えても貧血に陥っている可能性が高いです。このあたりの判断は専門家でないと難しいですので、貧血かどうかはご自身で判断せずにオーソモレキュラー療法の血液検査を受けるようにして下さい。
この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓