「凪ノ恋」制作秘話(スクリプター編)
こんにちは、Nutrientsスクリプターのかのさわです。
「凪ノ恋」完成から一か月弱が経ち、生活も落ち着いてきたので、制作秘話(というと大げさですが)を紹介しようと思います。
制作全体というよりは、私が関わった作業の中からトピックを抽出して紹介します。
ティラノビルダーからスクリプトへの切り替え
過去二作ではティラノビルダーを使っていたのですが、本作ではティラノスクリプトにツールを切り替えました。
というのも、個人的にはksファイルを直接いじって作業することが多く、スクリプトの方が効率が良いと考えたからです。
ツールの切り替えには、色々なメリット/デメリットがありました。
メリットとしては、「ksファイルの記述量が半分程度になって、作業効率が良くなり、全体の見通しもよくなる」ことや、「コメントアウトが使える(ビルダーだと自動で削除されてしまう)」ことが挙げられると思います。
デメリットとしては、まず「自分しかスクリプトを触れなくなる」というのが大きかったです。
凪ノ恋は元々短編を予定していた(!?)ため、大きな問題にはならないと考えていましたが、途中で長編に舵を切ったため、作業量が膨大となってしまいました。
特に、小さな修正も全て集約して私が対応する必要があったため、下の画像にあるような「修正要望シート」が209行にまで達してしまいました。
また、「途中からデバッグしにくい」というのも負担になりました。
工夫としてksファイルを細かく分けていたのですが、それが(スクリプトの良いところである)一括処理や検索性の足かせとなってしまったりしました。
というわけで、メリット/デメリット両方あったわけですが、次回作では「ビルダーに戻す」方に気持ちが傾いています。
やはり作業量が膨大すぎて、一人でやるのは心身ともに厳しいです(長編のシナリオとスクリプトを一人でやってる人凄すぎー)。
音声編集へのAutoVoiceCutの導入
以前紹介したAutoVoiceCutというツールを本作の制作で導入しました。
https://twitter.com/nutrients2017/status/1319631488279744513
https://www.vector.co.jp/soft/winnt/art/se521988.html
AutoVoiceCutは、自動でボイスカットして連番ファイルとして出力してくれるもので、このツールのおかげでボイスカットの作業時間を1/2~1/3程度に短縮できたかなと思います。
ただ、上記note記事に書いたように、元々は作業時間を1/10に短縮できる目論見でした。
目論見が外れた要因として以下の3点を挙げることができます。
①自動カット結果を信頼しすぎた
②5分以上のファイルは分割して入力する必要があった
③一つのセリフに対して複数音声が収録されてるケースを想定してなかった
「①自動カット結果を信頼しすぎた」は、カット結果のチェックが適当だったため、結局あとでボイスカットし直すケースが多かったです。
本ツールを使う上で「全音声を再生してチェックする」のは必須工程だということが分かりました。
「②5分以上のファイルは...」は、5分以上のファイルで処理がフリーズしてしまうため、一度音声を5分以内に分割して、それをそれぞれAutoVoiceCutにかける必要がありました。
一回一回は大した作業ではないですが、音声データの量が膨大だったため、全体としてかなりの工数がかかってしまいました。
「③一つのセリフに対して複数音声...」は、一つのセリフに対して色々な演技で収録いただくことがあるのですが、「その中から良いものを選んで、他を削除する」という機能がAutoVoiceCutに入っていませんでした。
以上の要因によって、目論見よりも工数が増えてしまったのですが、①については再生チェックすることで回避でき、②③については対応したバージョンのAutoVoiceCutを今週中に公開予定です!
Live2D作業(動画向け)
OP動画(現状、ゲーム内でのみ閲覧可能)と、以下のシナリオ選択画面用にLive2Dモデリングを行いました。
https://twitter.com/nutrients2017/status/1429388483408265221
前作「こと国シスターズ!」のOPでもLive2Dを利用したのですが、それに比べるとかなり自然な動きを表現できたかなと思います。
また、今作では絵師さんに絵を描いてもらう段階で、極力レイヤを細かく分けてもらうことで、「私の」作業量を減らすことができました。
一方で、それ以上に「絵師さんの」作業量が増えてしまい、良い分担を模索する必要があるなと反省しました。
特に、せっかく細かく分割してもらったのに、クリスタとPhotoshopの互換問題のせいで、結局レイヤ結合してもらったりとかがあったので、次回作ではその辺りを意識して作業をお願いする必要があるなと考えています。
まとめ
ビルダーからスクリプトへ、AutoVoiceCutの導入、Live2Dの三本でお送りさせていただきました(ぺこり)。
最後に宣伝をば。
手前味噌になりますが、「凪ノ恋」はすごい作品に仕上がったと思っています。
サークルメンバー・声優さん・楽曲制作にかかわっていただいた方々など、全ての力がうまくかみ合って、この物語は完成しました。
長編&シリアスという気軽にプレイしにくい組み合わせではありますが、絶対に損はさせないという自信があります。
プレイいただければ幸いです。