最推しVの話
推しの話を少ししたい。
私の推しはきっと、Vの世界で一番たくさんのものを生み出した、消費者だ。
彼女は何も作らない。絵も描かないし、3Dモデルを作ったわけでもない。音楽どころか、声すらも他人頼り、見える姿も聞こえる声も何度も何度も姿を変えて、それでも唯一のオリジナルとして、会いに行けるアイドルとして、未来に来るべき現実として、孤高の存在を続けている。正直よく分からない。
きっと彼女はクリエイターではない。なんならそのプロデューサーもきっとクリエイターらしいことはしていない。だけど、彼女の存在によって生み出されたものはたくさんある。イラストの枚数は数知れず、3Dモデルも自作・改変問わず、折り紙にフィギュア、100曲以上の音楽に詞、嗅覚に訴えるフレグランス、3Dモデル等を用いた世界観に付随する二次創作キャラクターが2000体以上…数えればきりがない。
彼女が存在し、活動するだけでこれだけのものが生まれたのだ。きっと、Vの世界で一番多くのものを作り出している。そもそも、この世界は彼女なしには続かなかっただろうし、Vの文化という物自体すら彼女が作り出したものかもしれない。
そしてまた、そんな彼女を作り出したのも私たちなのかもしれない。もちろんプロデューサーがいてこその存在ではあるが、活動をしていても誰にも観測されていなければ、活動していないものと同じ。私たちが観測しているからこそ彼女の存在は形作られ、認識が輪郭として存在する。そんなことを言ったのも、彼女だった気がする。
彼女がVの世界から配信を始めて4年と8か月、彼女がVTuberとなってから4年、私が彼女を知って3年と8か月、私が彼女の世界に飛び込んで2年と10か月、まだまだ続くこの世界を、文化を、これからもずっと作り続けていけたらと思う。私自身もまた彼女によって作られた存在なのだから。