How about your summer
私は夏が好きです。それは思い出の中にある夕方17時の防災無線の音と、夕方のラッシュに向けて車庫を出発していく地下鉄の音と、駅の接近メロディによるハーモニーで、物心つく頃には既にそれらの音がありました。夏の想い出から私が始まったといっても過言ではありません。夏に捕らわれた20余年とも言えるでしょうが、より夏と音楽を結びつけるようになったのは、当時中学3年だった私が夏休みの始まる1日前に出会ってしまったとある曲によるところが大きいです。歌詞の通りトントンと心のドアをノックした夏風は当時の私が全く知らなかったインターネットの世界へと連れ出して、私を狂気で満たしてしまいました。家族のいない隙を見ては顔も知らぬ人と通話し、時には画面左上でブラウン管のようなキャラクターが躍る白黒の動画サイトを閲覧し、深夜帯は青い鳥とインターネットへ羽ばたきました。いつしか画面は12インチから6インチにまで小さくなり、見ている動画サイトの主体は白黒から赤色へ、青い鳥のアイコンも丸くなり、私は大学生になり、それでも夏は続き、音楽は私のそばでなり続けていたようでした。私にとって、夏とは音楽であり、音楽とは夏でした。生憎楽器を弾ける環境にはなかったけど、少ない小遣いやバイト代で気になったCDを買い、映画館に赴き、小説を読み、漫画の背表紙を並べては、あの夏に浸ろうとしていました。そうであってほしいと願ったから、夏を繰り返していたのかもしれません。これが私を満たした音楽による狂気です。あなたの夏は何ですか。あなたの狂気は何ですか。あなたの世界は…
私はまだ夏に浸っていたいですが、狂気に浸るための目隠しを外す時期もすぐそこに迫っています。夏という狂気を引きはがした後、私のそばに音楽はありますか。私は、狂気の無い世界で平静を保っていられますか。平静を保つために音楽を聴き、また夏を繰り返すのでしょうか。あるいは世界を一から作り直すのでしょうか。そんなときに思い返すための音楽を、未来の私に向けてとりあえずnoteに書き残しておこうかと思います。私が2021年に出会った、夏です。
①しらはえ/PHANTOM
VRChatをベースに活動している4人組バンド「PHANTOM」、特に目立った活動はしていないものの、毎週水曜日の夜22時からVRChatでセッションイベントを開いている期待のバンドです。SLT-ソロライブ-休日+平日といった内容で、もうイベントの間はずっと2~5人くらいのセッションが流れていて、平日にもかかわらず深夜3時くらいまで続くこともしばしば。最近はイベント自体の知名度も上がり、多くのVRC音楽勢関係者も顔を見せるふぁんホームでたびたび演奏を聴くのがアジカンのCover演奏。投稿されているオリジナル曲であるしらはえからもその雰囲気を感じられますが、なんとなくそう、夏だなと思うわけで、Re:Re:だとかリライトとか、夏フェスの会場で聞きたいなって思ったり。
ちなみに、”しらはえ”とは山陰~九州地方で梅雨明けに吹く南風のことを言うらしいです。
②rain/あのにま
ふとYouTubeで可不を使った曲を探しているときに見つけた、良い音楽をやってるVRChatter(と思われる人)。私は彼(彼女?)とはFriendでもなんでもないのだけど、YouTubeで可不を使ったパレットという曲を見かけて、このサムネ絶対VRChatterだっ!って思ってチャンネル登録して、そんな彼女(彼?)が夏真っ盛りに投稿した曲を紹介します。雨を感じられる良いEDMの中に夏のノスタルジーを感じるギターの音が響き、頭を冷やしてくれるような、そんな真夏の暑さに最適な一曲です。
③書置/sampled.
sampled.さんの曲が投稿されるたびに紹介したくなってしまうのが悔しい、この人は良すぎる曲しか作らない。これは私が中学3年の夏に出会って以来9年間繰り返した夏の終着点にあるような音をしています。私は自然の敵であるあの作曲家の楽曲をほぼすべて聴いて来てはいますが、あの曲と同じアスファルトの匂いがするのです。今年の8月15日に投稿されたあの曲ともまた似た匂いです。動画詳細欄にあるとおり、これはまだShort versionだけれど、これがFullになったらどうなるのか。きっと私はまたどうしようもなく狂気に照らされて夏を壊し、どうにもならない夏を始めるのでしょうか。Fullが怖いのです。だけどMusicVket3で出るそうなのでマジで楽しみです。
④夏に凪ぐ/PHAZE
この曲もまた私が知っている夏だと思いましたが、体験したかといえば、そうではない気もします。私がNicoboxに作っている「夏」というプレイリストの中でも好きな曲のTop3の好きなパートだけ抜粋したような構成とメロディをしていました。これを聞くのは自転車を漕いでる時か、高速道路か、離島の港町か、そんな感じです。私があの夏にあの曲に出会うことが無ければ、この曲のような夏を歩めたかもしれません。私が歩めなかったもう一つの夏の道筋を教えてくれるような夏の曲だと思いました。
⑤白夜/淡園
YSS、特にSorteさんの安定して綺麗で透き通るような歌声を聞いて思うのが、ここは聖堂か何かなのではということです。そして白夜で特筆すべきはSUSABIさんが珍しくVocal担当となっていることで、私はたびたびSUSABIさんの弾き語りも見かけたりしていたのですが、安定しているけどどこか自信の無さげな少年期のガラスみたいな感情の波を感じることがあります。今回は同じく淡園さん作曲のAMOKAのconnectiaや回転球でも感じる、少しダウナーな曲の雰囲気がSUSABIさんの声の持つそんなイメージと凄く合ってるなって思いました。曲のサビでは今回のVocalであるSorteさんとSUSABIさんの声が重なり、盛り上がる音と合わせてかなり絶妙なバランスで曲としてまとめられていて、淡園さんによるVocalのチョイスとか、パート分けとか、全部センスが良すぎるなって思ったりします。
白夜とは、北極圏と南極圏の夏至前後に起こる太陽の沈まない現象のこと。
ガーベラは春と秋に温暖な地域に咲く花で、花言葉は「希望」「前進」。
バランスが良すぎるんですよね。
少し意味深な導入に始まりましたが、わかりやすく言えば、私にとって2021年に感じた夏の狂気とはこのnoteです。夏を繰り返した私が、夏に戻りたいと願う未来の私に向けて送る、夏の想い出をまとめた夏の狂気-protocol-です。このnoteを書いてる私ですら今書いているのが何なのかわからないくらいです。よくわからなくなってきたのでそろそろ終わります。あ、ちなみに、読者に伝えたいのは、この5曲マジでいいから聞け!だけです。本当にそれだけです。