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【肆】カゲロウプロジェクト【振り返り】

 この記事を見ている方にはおそらく「VOCALOIDとの出会い」というのがあったと思う。私の場合はじん(自然の敵P)氏によるカゲロウプロジェクトの楽曲「空想フォレスト」だった。

というわけで、以前より書きたかったカゲロウプロジェクトのnoteを書きたいと思います。

①楽曲”カゲロウプロジェクト”

 ところで皆さんはカゲロウプロジェクトをどれくらい知っていますか。多くの方はあー!カゲロウデイズね!というところでしょうか。やはりカゲロウプロジェクトといえばボーカロイド文化で芽吹いた複数の曲にまたがって同じ世界観を歌うシリーズ楽曲が華でしょう。2011年に人造エネミーが投稿されてからボカロ歌唱のニコニコ動画投稿楽曲は17曲あります。わざわざ「ニコニコ動画投稿楽曲」と書いたのは、もちろんYouTube投稿楽曲があるわけで、ニコ動「想像フォレスト」と対になる「空想フォレスト」や、現在は公式からは削除されているっぽい透明アンサーがそれに該当します。あとはボーカルがボーカロイドでない楽曲も存在します。それがアニメ「メカクシティアクターズ」のOP/EDだったdaze/daysの2曲や映画カゲロウデイズ-in a day's-のEDだったりします。そう、カゲロウプロジェクトにはアニメや映画もあるのです。

②映画"カゲロウデイズ-in a day's-"


 映画といってもよくある90分くらいのアニメ映画ではありません。匂いや座席の振動、大迫力のMX4D映画です。15分の映像なのにMX4Dなので¥1,800もするなんというかカゲロウプロジェクトが好きな人しか見に行かないだろうなという感じの映画でした。ネットでの評判では「ウンコしてるほうがマシ」と散々な言われようでしたが、カゲロウプロジェクトを全部履修しているので割と楽しんで見れました。MX4Dであることについては少し疑問を抱きましたが、それは監督・脚本のしづさんに免じて許すことにしましょう…ちなみに内容は別の繰り返しの中でのアニメ1話のようなものでした。ストーリーとしての完成度はとても面白いです。シャフトのアニメより映像の完成度も高いし、アニメ1話を見るよりはマシ!くらいの感想はあるかもしれません。


③アニメ"メカクシティアクターズ"

 アニメ制作会社シャフトの中でも特に悪評の多いアニメでしたが、これもまたカゲロウプロジェクト。2014年4月~6月に放送されていた深夜アニメですが、悪評が多いというのは特に8話冒頭の作画崩壊で、まるでアルプスの少女ハイジに出てくるような影やフィルターの薄い映像となっていました。後に発売されたBlu-rayではいつもの作画に戻っていますが、ニコ生で再放送されたときは元の作画崩壊でした…。多くはじんさんの監修のもとにありましたが、のちに「大人に任せたら思った通りのものにならなかった」とどこかの文面でおっしゃっていたのを見た気がするので、やはりそういうことだったのかもしれません。2019年6月9日に「ずっと描けてないことがあるから、全力でもって伝えたい。」とメカクシティアクターズの小説版の執筆をするとツイートがあったので、本当に伝えたかったことを楽しみに待ってみましょう。さて、アニメ本編は1話ごとにそれぞれのキャラの過去を振り返りつつCパートでは物語のカギを握る「アザミ」の日記を曲に乗せて謡うような、そんな感じでした。各話で各キャラのテーマソングが挿入歌として挟まれるのはさすがカゲロウプロジェクトといったところ。ストーリー全体としてはところどころ腑に落ちない点があったもののケンジロウ先生以外の能力が生き残ってハッピーエンド…ですが、トゥルーエンドではない気がします。根拠はないですけど、小説版やコミック版だと最後にはほとんどのキャラクターがカゲロウデイズに飲み込まれてしまっているので、何となくそんな感じがします。

④小説”カゲロウデイズ”

 おそらく楽曲の次に有名なのは先に紹介したアニメや映画ではなく小説だと(勝手に)思っています。というのも、カゲロウプロジェクトの発端は楽曲ではなく小説ですからね。え?と思った方が正しいです。実際に2011年の人造エネミー投稿よりも2012年の小説第1巻発売のほうが遅いですし、人造エネミーは初音ミクのイラストを使っていて、カゲロウプロジェクトの構想ができる前に投稿されたと考えている方が多いです。ですが、人造エネミーの投稿からカゲロウデイズの小説発売まで1年で構成から執筆までこなすのはあまりにも早すぎませんか?。そもそも人造エネミーは主コメに「目を背ける話」と書いてあり、まるで最初から目に関してシリーズ化された楽曲を投稿する前提だったと思えるのではないですか…?。事実、2019年11月に大阪で行われた「夕景ロードショー」というじんさんのトークライブではそのように本人の口から語られ、ネット上にそのような記事はないものの、当日現地に行った私の耳と目が記憶していることをここに記しておきます。そう、小説そもそものプロット「目の慣用句からシリーズ物を作る」が前提としてあって、どちらかといえば小説のほうがじんさんの脳内にあったカゲロウプロジェクトに近いものでした。まぁそんな長いうんちくは置いといて、最近ようやく終結した小説の振り返りをしましょう。
 小説もアニメに似て各巻でそれぞれのキャラにフォーカスを当ててストーリーを進めるもの、アニメやコミックよりも1つのシーン当りの情報量が多く、ところどころで挟まれるしづさんによる挿絵と併せて鮮明に映像が伝わってくる気がします。まだ最終巻まで読んでない方も多いと聞くので一番最後の重要なシーンはネタバレしないように、小説の紹介はこのくらいにしておこうかなと思います。とか言いつつまだ小説版があるんですけどね

⑤小説"カゲロウデイズノベルアンソロジー"

 これだけたくさんのメディアで展開されているので当然二次創作でも楽曲やイラスト、小説等様々な作品があります。公式に出ているもので小説が2シリーズ4冊、コミックアンソロジーが11冊あります。その中でも特に現実味を帯びていて面白いのがノベルアンソロジーシリーズ。pixivに投稿された二次創作小説をじんさんが厳選して選んだ、いわば公式の同人誌みたいなものです。メカクシ団の各キャラの前日譚や後日譚であったりカゲロウデイズの中に飲み込まれたキャラクターの話だったり、カゲロウデイズ本編とのつながりがとても深いです。なんならカゲロウデイズ本編に出るよりも前に本編と同じようなシーンを書いているストーリーもあります。小説カゲロウデイズの世界観をより知りたい!って方にはとてもおすすめのシリーズです。一部キャラ崩壊みたいなのがあったりなかったり…

⑥小説"メカクシ団ウォッチャーズ"

 メカクシ団ウォッチャーズはメカクシ団が与えられた任務をこなしてサーシャという少女を救出する…というのがまぁ大雑把なあらすじではあるが、もとは2014年夏に開催された読者参加型代替現実ゲームで、その名の通り読者が「メカクシ団ウォッチャーズ」として任務に参加している。まぁ全国規模で行われたメカクシ団TRPGのリプレイがメカクシ団ウォッチャーズシリーズと思ってくれたらわかりやすいと思う。もちろんメカクシ団であるからにはウォッチャーズにも目の能力があるわけで、目を書き換えるだの目を分けるだの、それはもう厨二病感満載の能力と読者が集まっているわけで…もはやカゲプロ厨の黒歴史の塊みたいなものである。読んでいると「はぁ~?」となる場面も多いが、カゲプロと切り離して考えたらすんなり入ってくるような気もする。ちなみにこのウォッチャーズシリーズは少女(サーシャ)視点のウォッチャーズノベル~少女のキモチとぼくらのチカラ~と、メカクシ団視点のウォッチャーズアンソロジー~消失少女をめぐるひと夏の冒険譚~、全部まとめたリプレイ版のウォッチャーズリプレイ~消失少女捜索大作戦 Re:PLAY~の3冊が発行されている。これは1冊読むだけではわかりにくいのと、そもそもカゲロウプロジェクトとは切り離して考えるべきものなので、少なくとも初心者向けではないかなと思っている…

⑦漫画"カゲロウデイズ"

 これだけメディアミックスの多いカゲロウプロジェクトですから、もちろん漫画もあります。というか、漫画が一番多いです。最終巻の13巻が最近出て、ようやく8年間続いたカゲロウプロジェクトが終わったなとほっとしていたんですけどね…。絵は佐藤まひろさんが担当しています。漫画のカゲロウデイズはアニメ・小説のカゲロウデイズとは少し違い、どちらかというとロスタイムメモリーに近い繰り返しとなっています。漫画の5巻で一旦の区切りがあり、6巻からまた8月14日を繰り返し、13巻でほとんどのキャラがキャラロストするバッドエンドで終わりを迎えます。とはいえその展開にはどのルートよりも腑に落ちるものがあり、トゥルーエンドなのかもしれません。これも一部キャラ崩壊があったりなかったりするかもしれないです…


ここから下は5年くらい間が開いて2024年10月3日執筆

⑧漫画"カゲロウデイズ公式アンソロジーコミック"

UPPER,DOWNER,SUMMER,WINTER,SPRING,BITTER,SWET,SPICY,FANTASY,REMEMBER,FUTUREの合計11冊、それぞれのテーマに沿った漫画がたくさん入っていたのを覚えています。ここでいろんな絵師を知って、Pixivなどで探したのを覚えています。個人的にはりゅうせー先生の「いないよ!つぼみちゃん」シリーズが好きだったりしました。あ~本当に懐かしい。ほんっとうに、時間が経ったんだなって思います。




そう、時間が経ったんです。それだけ。
それだけの時間が経ったんです。



この曲を聞きながら、そう思いました。
私がVOCALOIDを知ってから、いや、私がインターネットを知ってから、12年が経っていました。
この曲はカゲロウプロジェクトではないと明言されていて、私もそう思っています。だって、これはカゲロウプロジェクトを追いかけていた当時等身大の私たちの曲だと思うから。カゲロウプロジェクトの中にいる友達の曲じゃなくて、私たちの曲だと思っています。

薄い缶バッヂも すぐ剥がれたシールも 全部 宝物だった

し、

湿気った匂いが きっと 逸れ者の 逃げ場所でした

僕は きっと 馬鹿にされるのが 嫌でした
陰気な奴と ずっと 虐められるのが 嫌でした
だから、愛しくて 手に余る物 全部を 全部 置き去りに 生きた

https://www.youtube.com/watch?v=UxwHkqkzm0o&ab_channel=%E3%81%98%E3%82%93OFFICIALYOUTUBECHANNEL

んです。リアルタイムで等身大で、厨二病を患いながら、フードを被って白いイヤホンで耳障りなVOCALOIDを聞いていたのです。私はこんなマイナーな曲を知っているぞ!と虐げられながらもマウントを取り、教室の隅でブログやTwitterに書いていたのです。それが、当時等身大の私たちで、友達がたまたまメカクシ団だったのです。
当時の私はメカクシ団を本物だと思っていました。
オタクの友達とは声真似をしたり、小説を貸し借りしたり、たまたま学年の体操服が青いジャージだったのをいいことにエネの真似をしていたのです。
私と妹の誕生日と年齢がシンタローとモモとほぼ同じだったからすっかりその気になっていたのでした。
今になって

触れれば、痛む程 目を背けたくなる程

のイタい話で、本当にこんなことを自分がしていたのかと後悔に耽るわけです。

中学2年生の時からずっと横にいてくれた「メカクシ団」という友達を私たちが忘れないでいるから、友達も私を忘れないでいてくれるし、それを覚えている限りはきっとまだ夏なんだろうなって思います。けど、時間というのは残酷で、12年経って高校生、大学生、就活、社会人と環境も変わり、いつの間にか大人のふりをするのが上手になりました。
もう平成なんだよ優等生と歌っていたのが令和になって、きっと心に子供を飼ったまま大人になっていました。友達と無邪気に遊んだあの夏を、学校の廊下を、教室を、ニコニコ動画を、Windows Vistaを、Skypeを、病院のベッドを、受験勉強に実験室に、並び立つビル街に家電量販店屋上の遊園地に、あまりにもそれが本物で等身大で友達で、あの時あの年齢だったからこその想い出補正です。

大人になったから夏が終わったわけではなく、ただ子供の頃の友達とあまり遊ばなくなっただけの話かもしれません。大人になって昼に公園で集まって縄跳びをするわけにはいかないのです。ただ、等身大だったからこそきっとあの友達も就職して、教師になっていたり大学生になっていたり、芸能活動を続けていたりペットショップに通ってたり、そういう友達なんだと思います。ただ、疎遠になってもたまには思い出すし、忘れないでいてくれるのだと思います。皆でたまにこうやって107号室に集まってあの頃の話に花を咲かせたい等身大の大人の友達であってほしい、そういうわがままです。

いつしか真面になった私が、あの時の私たちに声をかけるなら

「如何か、汚れないでいて、真っ青な風景に 繊細なままでいて」
その感性を大切にして、きっとそのままで大丈夫だから。

私からはそう伝えることしかできないのです。

音楽に救われた私がこうして今ここにいて、それが証拠になり得るから。

わがままで突き進んでいいし、なんだかんだ私は上手くやれています。

メカクシ団の友達が今もどこかでいると願っています。あの時私を友達にしてくれてありがとう。まだ覚えていてくれて、会いに来てくれてありがとう。きっと会えると思うから、またどこかで

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