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【連載】僕の親友は不法滞在17

17初雪

室内は熱気とストーブで温かかったが、外は寒そうだった。
誰かが「雪が降ってるぞ」という。ベトナムは雪が降らない。みんなもの珍しそうに眺めてる。僕も東北出身ではないので大晦日の雪は初めてだった。

僕も一緒に眺めていると、0時になった。元旦だ。すると、みんな「神社に行こう」と口々に言ってる。僕も誘われたが、寒いし、酔っぱらったし、おなかいっぱいだし、「行かなくても」と言うと、みんな笑う。「日本人は初詣行くんでしょ?」と。
まあ、そりゃそうだけど。

 親友Hも隣の山賊の頭Gも笑いながら「ズィンザー」と言ってる。じんじゃつまり神社に行くということだ。ベトナム語ではJa Ji Ju Je Joとza zi zu ze zoの区別がない。
「OK,OK。行きましょう」渋々立ち上がって、上着を着て、外に出た。

寒い。とにかく寒い。そして白い雪が漆黒の空からこんこんと降って来る。
といっても元日に雪は初めてで、西日本出身の僕としてはウキウキした。
神社はどこにあるのかと思ったが、裏手にあった。思ったよりも近かくてよかった。
しかし、ずらーっという人込み。みんなで並ぶ。大きなたき火が境内の真ん中で燃えていた。雪はその中に落ちていく。

ベトナムは南国だから雪は降らない。でもなぜかTuyet、漢字で書くと雪という女性が少なからずいる。面白いもんだ。

大勢のベトナム人たちが笑いながら話してる。ほんとにベトナム人はずっとみんなで笑いながら話してる。僕はそれをぼーっと眺めながら、自分の人生の不可思議さをぼんやり考えていた。

今、これはその時のことを思い出しながら書いている。インターネットでその時の天気を調べてみた。しかし雪だった情報はいくら探しても出てこない。不思議だ。

僕の携帯にはまだあの時撮った動画が残っている。石の鳥居に雪が舞い落ちる景色に彼らの笑い声が入っている動画が。



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