【連載】僕の親友は不法滞在
21 負のスパイラル
以前(連載7回)で、話したが、不法滞在労働者というとどういうイメージがあるだろうか?
実はそのイメージは恐らく違います。なぜならみんなまともに労働できないのですから。雇ってくれる会社なんて日本にはほとんどありません。経営者が犯罪者となります。
そして一番甘く考えてるのが当の本人たちで、現実を突きつけられて大変な思いをします。
7回の時に言葉は悪いがと断った後、不法滞在者を雇う経営者なんて、労働者を奴隷にする悪徳経営者か、倒産寸前でとにかく安い人手がほしい経営者か、何も知らない頭の悪い経営者か、、と言いましたが、僕の親友Hが働く所は、倒産寸前の会社が続いた。
ある大型連休に彼の住んでいるアパートを訪ねたら、彼はげっそり痩せて、肌は真っ黒に日焼けしていた。
あまりにも変わっていたので、どうしたのか聞くと、彼は3度目の会社で、鋳物工場に勤めているんだと言った。
愛知県にはトヨタの部品を作る部品工場がたくさんあり、鋳物工場も多い。
そしてどこも零細企業で、社長と数人の若くはない男性という構成が多い。
移民問題を取り上げると、反対派は「日本人の職が外国人に奪われてしまう」とよく言う。
しかし、実際、高度成長期前期、中学校卒業した金の卵たちが集団就職して働いたような工場に今の日本の若者は就職しない。
ものすごくきつく、汚く、低賃金な仕事を今の若者がするはずもない。では、誰がするのか?それは外国人だ。
今、日本を下で支えているのは外国人、不法滞在の外国人たち。
不法滞在外国人が日本人がやらないような仕事を今するからこそ日本の経済は回っている。普通の日本人が知らない世界がそこにはある。
絶対だめだと拒否することもいいだろう。しかし必要悪として存在しており日本を支えている現実がある。
もちろん僕は肯定はしません。なんというか、とても難しい問題が潜んでいるということを知ってもらいたいのです。
親友Hはとても暑くてきつい仕事だと言った。しかし仕事しなければならないのだ。
それから数か月後、その鋳物工場も倒産してしまった。
倒産すると給料がもらえず、次の仕事をみつけるまで、無職で、アパート代をはじめとする生活費を出さなければならない。そして見つけては倒産、見つけては倒産というスパイラルを繰返すのだった。
さらに半年後の連休に彼のアパートに行ったとき、何の会社かは忘れたが、一日中ディスクグラインダーを使うきつい仕事をしていた。一日中使っているので手の震えが収まらなかった。
そしてその会社も数か月で倒産していた。
「こんな生活はもうやめたほうがいいのではないか?」僕は彼に言うようになった。しかし彼にも意地がある。
彼は、「次は倒産しない会社に入って貯金するんだ」と人生を頑張っていた。
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