僕の親友は不法滞在 25話 ～ベトナム人が日本に観光しに来ること。ビザ申請～

25　ベトナム人が日本に観光しに来ること 

（新型コロナの話は除外）
　日本人への信用度は世界一であることをご存じだろうか？

　日本人はビザなしで旅行できる外国の数が世界一なのだ。191か国をビザなく観光することができる。
　日本人はこれがすごいことを知らない人が多く、普通だと思っている人が多い。中東やアフリカなど国内情勢が不安定な国や国交がちゃんとしていない国々以外はだいたい行ける。

　では、ベトナム人がビザなしで旅行できる国はいくつか？
　54か国しかない。日本にただ観光に来るにもビザが必要なのだ。

　ある時、僕は親友Hに頼まれたことがあった。Hの妹が観光ビザで日本に来て、そのまま不法滞在として日本で働きたいと言っているというのだ。
　これには僕は驚いた。
　彼女は、ベトナムの首都ハノイの大学に行き、英語が流暢な才女だった。
僕とはチャットで何度か会話をした。頭がいいけど、すごく「いらち」という印象だった(笑)
　そんな大学に通っている才女が日本に不法滞在して底辺労働したいってベトナムは相当な国だなと思ったものだ。

　僕はHにはまず断った。Hも苦労して貯金なくただ日本滞在が伸びているだけで、入管の捜索を日々怯える生活をしているのに、どうして妹を来させようと思っているのか？と問いただした。
　彼の答えでは、まず彼女が働くのならアパート代は折半することになり、光熱費含めて、むしろお互いが楽になる。そして、大学を卒業してもベトナムでは思った職に就けないから、いっそ日本で数年間働いたほうがいいということを言う。
　僕は、彼女にもチャットで話し、結局力になることを約束した。

　ベトナム人が日本に「観光旅行」するにも、ビザが必要で、そのビザは日本人の親しい「保証人」が必要なのだ。
　その保証人になってあげることを約束した。
　ビザを取得するには保証人と親しいという証明が必要で、彼女が英語の文面を考えて、僕が彼女にその手紙を書いた。内容は、今度は日本でまた会いたいですねえというようなものだったと思う。
　その手紙を親しい証明として彼女はベトナムで日本大使館にビザ申請をするわけだ。

数日後、Hから連絡が来た。
　不許可だったそうだ（笑）笑うしかない。

　外国人の出入国については、一般的に外務大臣の自由裁量の権限であると言われている。どんな理由でダメなのかを大臣は知らせる義務はないし、我々は不服申し立てをする手立てもない。だからなんでダメなのか分からない。

　僕の収入が低く、信用できないとされたのか、親しい間柄か証明する手紙が不十分だったのか（ツーショット写真なんてないし）、その両方だったのか、違う理由があったのか。

　とにかく、僕はHにも妹にも偉そうなことを言ったのに、日本政府から信用できない人間として烙印を押されたと感じた。情けない人間だ。
　やっぱり誰も助けることができなかった。