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【連載】僕の親友は不法滞在 3

3 留学生の実情

 僕の親友、ベトナム人のHは、僕と東京の杉並区にあったボロボロの四畳半アパートに一緒に暮らしていた。日本語学校に通っていたが二度目の就学ビザが切れる前に不法滞在を決め東京を出ることを僕に告げた。

 表面上移民を受け入れていない日本に来るベトナム人の多くは2種類だ。留学生と技能実習生。また一般に留学といわれるものには2種類あり普通の日本語学校に通う就学(いわゆる就学ビザ)と、大学または大学付属の日本語学校に通う留学(いわゆる留学ビザ)の2種類だ。僕の親友Hは一般の日本語学校に通っていたので就学ビザであった。就学ビザは普通1年更新の2年間で、その次は大学か専門学校等に行かなければ不法滞在(オーバーステイ、不法残留)となってしまう。逮捕されるといわゆる強制収容所に入れられ強制送還となる。

 僕の親友Hもそうだが大半のベトナム人留学生は勉学が目的ではない。メインは労働(つまりお金)が目的だ。現在2020年ベトナム人留学生は4万人、10年前は4000人で10年で10倍だ。その大半が出稼ぎ労働者でありそれが激増しすぎている。

 労働目的留学生はとても甘い考えでやって来る。留学とは本来勉学が目的なので日本の法律ではアルバイトは週28時間以下が原則と決まっている。ということは1年は52週間(1,456時間)なので年収は例えば時給1,000円とすると1,456時間×時給1000円=145万6000円(1か月約12万円)。時給が800円だったら1,456×800=116万4800円(1か月約9万7000円)。ここから税金を引かれたのが手取り。そして衣食住交通交際費が引かれて残ったのが貯金または仕送り金となる。日本の若者が貧乏の上貯金ができなくて問題になっているのに、その問題の生活をやりながら、貯金したり仕送りしたりしようとしている。しかもみんな親戚近所から借金を抱えてやってくるので返済もしなければならない。

 ほぼみんな貧乏に貧乏を重ねた上、貯金できず苦悩する。貯金できずカツカツで生活していても2年間はやってくる。次の学校に籍を置かなければ不法滞在になってしまう。

※一般にビザといわれるものは正確にはビザ(査証)ではなく在留資格といわれる。また、現在、就学ビザはなくなり留学ビザに統一された。


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