カレーが手抜きって誰が言ったの。
二週間ほど前、結婚して初めて、我が家に手作りのカレー(いなばのタイカレーは休日などに愛用)の香りが漂った。
にんじんっ(にんじんっ)、玉ねぎっ(玉ねぎっ、)、じゃがいもっ(じゃがいもっ)、おにくぅ(おにくぅ)♪(※結構前に松田聖子、神田沙也加親娘がCMしてた熟カレーのメロディで読んでください。わかんなければ普通に読んでください)
は、一切使ってません(キッパリ)。
野菜はホウレン草(ドバッ)とホールトマト(一缶)のみ。ホウレン草は事前にゆで、適当な長さに切っておく。オリーブ油でしばらく炒めたあと、水とコンソメをぶちこんで、カレー粉ベースにその他クミンやら適当にあるスパイスを入れて煮ること30分。
結婚祝いに従姉からもらったハンドブレンダーで、原形がわからなくなるまで撹拌したら、塩コショウしておしまい。
スタイリスト伊藤まさこさんが紹介していたホウレン草カレーをかなり大雑把にしたカレー、のできあがりである。
鍋一杯に出来たこれを、その日食べる分を除いて一食ずつジップロックで冷凍したら、二日分のストックが出来た。
つくりおき万歳だ。
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「えぇー、また今日もカレー?」
と、うんざりとした顔を見せる子どもと、手抜き料理を前に照れた笑みを浮かべる母親。
これは一体、誰によって刷り込まれた幻想なんだろう。少なくともこれを考えた人は、自分でカレーを作ったことがないにちがいない。
あえて言おう。
カレーはめんどくさい料理だと。
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旦那と一緒に暮らし始めたのは夏。そして現在冬。
最近、夕飯作りにかかる時間が段違いに延びている。
理由はただ一つ。
「皮むき」
のせいだ。
思えば、ピーマン、なす、かぼちゃ、ズッキーニ、トマト、きゅうり……いわゆる夏野菜たちは、みんなみんな、皮をむかなくとも、そのまま調理し、食卓にあげることができた。
が、現在は冬。
大根、れんこん、ごぼう、里芋、かぶ……この時期に旬を迎える人たちは、基本的に皮をむかれないと調理されてくれない野菜たちなのである。例外が葉物野菜だが、根本に土がたまるという特性ゆえ、いかんせん洗う時間がかかる。
ここで、「世のお母さんが作る一般的なカレー」の具材を思い出していただきたい。
にんじん、じゃがいも、玉ねぎ。
大事なことなのでもう一度言う。
「にんじん」「じゃがいも」「玉ねぎ」!
そう。
全部皮をむく野菜!
おまけに売っているじゃがいもや玉ねぎはほとんど泥つきで丁寧に洗わないといけないし、じゃがいもは「芽をとる」という至極めんどくさい作業が待っている。
私には無理だ。
帰宅して、にんじんの皮をむいて一口大に切って、じゃがいもを洗って芽をとって皮をむいて一口大に切って何なら水にさらして、玉ねぎの皮をむいて一口大に切って(奥さま!こだわる人はみじん切り玉ねぎを飴色に炒めるんですって!)、野菜じゃないけど肉も切って、あーあーあーようやく炒められるぜよっこらせっと……。
無理だ。
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ホウレン草カレーのメリットは、具が撹拌されているため、冷凍できることだ。
これなら、数ヵ月単位で日持ちするし、食べたいときに解凍すればいい。
ところが、一般的なカレーは冷凍できない。何故なら、じゃがいもの成分が冷凍することにより破壊され、カスカスになるから、である。
「3日連続で食べればイージャーン」
と言う声もあるが、私は3日連続カレーを食べたら絶対飽きる派だ。実家では一週間に一回でもやや飽きてた。
そう、何よりイラッとするのは、そうして手間隙かけたカレーを「また……?」みたいな顔で食べられることなのだ(ごめん母)。
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そして先日、イナバのタイカレーでもホウレン草カレーでもない一般的なカレーを、約三ヶ月ぶりに食べた。
共働き夫婦の食生活を心配している母による差し入れである。
生野菜のサラダと、手作りドレッシングのびんまでつく芸の細かさだった。
久しぶりに食べた、バーモ○トで作る母のカレーは、主婦の手間と、娘夫婦への愛の味がした。
(旦那絶賛)