勝ちを喰らう。

小学校の校庭。木陰が差し込む、冷えた岩に子供たちが座る。
 話をする。特別なことは無い。行方不明の少年の死体を4人で見に行く訳でもない。秘密基地を作る話でもない。ただゲームがどれくらい進んだとかいう話。

 気を引きたい
友達の気を引きたい
ヒーローになりたい
私という人間で笑って欲しい

そうだ、石を食べよう。
「石を食べる」というボケをしよう。

口に石を放り込む、舌に石が乗る。石にまとわりついた砂利や砂が口の中に広がる。
この味は悪くない。勝利の味だ。笑いの味。

私は勝ちに貪欲だ。ただの勝ちじゃ腹は満たされない。圧勝しなければ。圧勝しなければいけない。

次の瞬間には私は草を喰らった。そこら辺にある。ただの草を。
辛かった。しかしこれは私を成長させる辛みだと思った。一筋縄では行かないのは覚悟していた。
今まで誰も手に入れたことの無い勝ちを手に入れようとしているのだ。未踏の地を草を掻き分けて進んでいる。その先の勝ちを手に入れようとしている。

石は飲み込めない。しかし草は違う。

その草を飲み込んだ。

私は開拓者になった。誰にも真似出来ない笑いを手に入れた。この日から私は、自信を手に入れた。
全てに立ち向かっていく自信を。負けないんだ。
この先私の人生に、負けは無い。
そう確信した小学生時代である。

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