-看護実習のすべてがわかる!-なんでなんだの看護過程ガイドブック① 序章
2024.10.29更新
※本書はメンバーシップ追加のため有料設定となっていますが、-看護実習のすべてがわかる!-なんでなんだの看護過程ガイドブック① 序章 ~ ② 第1章ついては全文無料でお読み頂けます。
はじめに
本書は看護過程の一連の流れとポイントをまとめたものです。「看護実習」=「看護過程」と言っても過言ではないくらいに、看護実習ではほとんどの領域で看護過程を展開しています。看護過程を理解せずに実習に臨む学生は、その時々で自分がなにをすべきか分からないため先生や実習指導者に言われるがままに受動的に実習を進め、後手後手の対応となってしまいます。その結果、先生や実習指導者に言われるがままに進めたにも関わらず、低い実習評価を受けて再実習になってしまう様な事態を招いてしまうのです。
それではどうすればいいのかと言うと、実習がはじまる前に看護過程を理解しておけばいいのです。その時々で自分がなにをすべきか分かっていれば、自分の考えを持って主体的に実習を進める事ができます。そこに先生や実習指導者から貰ったアドバイスをプラスしていけば、主体的に実習を進める事ができるだけでなく、実習に対する理解をより一層深める事ができます。
本書では看護過程を1~5章に分けました。実習前に読んでいただくのがベストですが、すでに実習が始まっている方でも自分がどのタイミングでなにをすれば良いのか確認できる様にしています。
序章 「看護過程」とはなにか?
看護過程の概要
看護過程は看護実践における体系的で継続的なアプローチであり、個別的な看護ケアを提供するための基本的な過程(道筋)です。看護過程には、アセスメント(評価)、看護診断、看護計画(目標設定)、看護の実施(介入)、評価の5つのステップがあります。
■看護過程の3つの特徴
1.体系的なアプローチ:看護過程は連続のステップからなり、アセスメント(評価)、看護診断、看護計画、看護の実施(介入)、評価という順番で進めます。この体系的なアプローチにより、看護師は患者の健康状態を評価し、適切なケアを選択し提供する事ができます。
2.継続的なプロセス:看護過程は循環的で継続的なプロセスです。患者の健康状態やニーズは日々変化するため、看護ケアもその度に修正されます。ケアと評価のステップによって、看護師は提供したケアの効果を確認し必要に応じて修正します。
3.患者中心の看護:看護過程は患者の個別のニーズに基づいています。患者の思いや意思を尊重し、個別的な看護ケアを提供する事が重要です。患者中心の看護により、看護師は患者の主体性を尊重し、患者のゴールに向けてケアを選択し提供します。
看護過程の展開
ここでは看護過程の5つのステップを1つ1つ解説します。
■アセスメント(情報収集+評価):患者から健康状態に関する情報を収集し、収集した情報が正常なのか異常なのか健康状態を評価します。次に健康状態の評価から患者の健康上にいまある問題や今後問題となり得るリスクの評価を行います。
【第1・2章で詳しく解説】
■看護診断:アセスメントで評価した内容を分析し、患者の問題を特定して明確にします。
【第3章で詳しく解説】
■看護計画(目標設定):看護診断で明確にした患者の問題を解決または患者の目標を達成するために計画を立案します。看護計画は次の様に作成します。
1.患者の状態やニーズに基づいて個別化する。(ケアの個別化)
2.ケアの方向性、目標、優先順位を明確にする。(ケアの方向性、目標や成果の設定)
3.誰が見ても同一のケアを行える様に立案する。(継続性の確保)
【第4章で詳しく解説】
■看護の実施(介入):計画したケアを患者に実施します。患者の状態は日々変化するため、立案した内容と患者の状態が合っているか確認し、必要なケアを判断して実施します。また、ケアの実施中や実施後に患者の状態や反応を観察します。
■評価:実施したケアが効果的であったかを評価します。評価は次の様に行います。
1.目標や成果が達成されたか判断する(達成度の評価)
2.目標や成果が達成されていない場合、計画の継続・追加・修正を判断する(計画の見直しと修正)
【第5章で詳しく解説】
看護過程はSOAP+PDCAと考えると分かりやすい
ここまでは他の本にも載っている様などこにでもある内容です。しかし、これだけ見ても実習でなにをするのか具体的なイメージは湧かないのではないでしょうか?
実習を経験した事がある人なら、言われてみればそういう流れだったと思うかもしれませんが、まだ実習を経験した事のない人にとっては小難しい事を言われてもなんの事やらサッパリでしょう……。
そこで、本書では看護過程を実習の流れに沿ってさらに嚙み砕きます!
とても分かりやすくするために、看護過程は「SOAP+PDCAサイクル」と覚えてください!
まずは「SOAP」と「PDCAサイクル」について見ていきましょう。
※暗記する必要はありません。覚えるのではなく理解しましょう!
■SOAPとは?
看護や医療分野で一般的に使用される文書記録形式で、問題指向型診療録の1つです。それぞれの頭文字を取ってソープ(SOAP)と読みます。
Subjective(主観的情報):患者の反応の事。
(話し、問いかけに対する反応、自覚症状(痛みやかゆみなど))
Objective(客観的情報):医療者が見た情報の事。
(フィジカルアセスメント、バイタルサイン、行動、検査値など)
Assessment(情報の評価):SとOで収集した情報が正常なのか異常なのか健康状態を評価する事。
Plan(看護診断):アセスメントで評価した内容を分析し、患者の問題を特定して明確にする事。
■PDCAサイクルとは?
継続的な改善を促進するために使用されるフレームワークです。それぞれの頭文字を取ってそのままピーディーシーエー(PDCA)サイクルと読みます。
Plan(計画立案):SOAPのPで特定した患者の問題に対する目標や成果を設定し、実施するケアを立案する事。
Do(ケアの実施):計画立案したケアを実施する事。
Check(ケアの評価):実施したケアの効果を判断し評価する事。計画立案した目標や成果が達成されない場合、達成できなかった要因の分析を行う。
Action(改善):今後、看護計画をどの様にすればより良くなるかを検討し、改善すべき点や改善案を決定する事。
サイクル:改善すべき点や改善案を踏まえてPに戻り計画の追加や修正を行う事。
<PDCAサイクルのイメージ>
PDCA→PDCA→PDCA……(繰り返して改善していく)
「SOAP」と「PDCAサイクル」については分かりましたか?
ここで「看護過程の展開」と「SOAP+PDCAサイクル」を見比べてみてください。
■「看護過程の展開」と「SOAP+PDCAサイクル」
※( )の中は「SOAP+PDCAサイクル」を表します。
アセスメント(評価)(S+O+A)
看護診断(SOAPのP)
看護計画(目標設定)(PDCAサイクルのP)
看護の実施(介入)(D)
評価(C+A)
同じ流れを辿っていますね!
それではつぎに、実習の流れと「SOAP+PDCAサイクル」を合わせてみましょう。実習中に自分がどのタイミングでなにをすれば良いのか具体的なイメージができると思います。
■実習の流れと「SOAP+PDCAサイクル」
※( )の中は「SOAP+PDCAサイクル」を表します。
実習1~2日目:情報収集(S+O)
実習3~4日目:アセスメント(A)、関連図、看護診断(SOAPのP)
実習5~6日目:看護計画(PDCAサイクルのP)、ケアの実施(D)、ケアの評価(C)、ケアの改善(A)
以降:看護計画(PDCAサイクルのP)、ケアの実施(D)、ケアの評価(C)、ケアの改善(A)の繰り返し
領域によってはこの限りではありませんが、ほとんどの実習はこの流れとなります。
はじめにで述べた様にその時々で自分がなにをすべきか分からないと後手後手の対応になります。なにをすべきか分からないのにただ一生懸命に実習を行っても良い結果には繋がりません。実習の流れを知り、いま自分がなにを行うべきか考える事で実習を主体的に進める事ができる様になるのです。
看護実習は兎にも角にも評価と判断の練習!
看護実習では患者とのコミュニケーションや看護技術に目を向けがちです。これらは実習の大切な要素ではありますが、実習の本質は評価と判断の練習です。
実習期間の中で患者の状態の評価、看護診断、どんなケアを行うべきか、実施したケアが効果的だったかと繰り返し評価と判断を行います。この様な評価と判断は言語化されていない事も多いのですが、臨床の場面では1日に何十回、何百回と行われています。
どうしてそんなにも多くの評価と判断が行われているのかと言うと、看護は適切な根拠に基づいた実践を求められるからです。看護師は根拠に基づいた看護ケアを提供するため常に新たな知見や情報を収集し、自己の知識と照らし合わせながら患者にとって最適なケアを選択し提供しなければなりません。
実習場面で行われる評価と判断を以下にまとめました。
■実習で行われる評価と判断
1.アセスメント:収集した情報が正常なのか異常なのか健康状態を評価します。次に患者の健康上にいまある問題や今後問題となり得るリスクの評価を行います。
2.看護診断:患者の健康上の問題を判断します。患者の健康上の問題から優先順位を評価し、どの問題から取り組むべきか判断します。
3.看護計画:ケアの方向性、目標や成果、具体的な看護ケアを立案します。
4.計画の実施:立案した看護ケアを実施します。ケアを実施している中でケアが効果的であるか、計画に不足や修正点はないか評価します。
5.計画の評価:ケアが効果的であったか、計画に不足や修正点はなかったかを評価します。ケアが効果的でなかったり、計画に不足や修正点があった場合は計画のどこをどの様に追加・修正するか判断します。
実習は事前学習からはじまっている!
ほとんどの看護学校では実習の前にその領域のメジャーな疾患などを調べる事前学習があります。実はこの事前学習は実習をより良く進めるためにとても大切な学習なんです!
前項の看護実習は兎にも角にも評価と判断の練習!の中で「看護は適切な根拠に基づいた実践を求められます。看護師は根拠に基づいた看護ケアを提供するため、常に新たな知見や情報を収集し、自己の知識と照らし合わせながら、患者にとって最適なケアを選択し提供しなければなりません。」と述べました。
例えば家のトイレで嘔吐している家族がいた時、あなたに医療知識が全くなければ嘔吐している原因、成り行き(これからどうなるのか)、どう対処すれば良いのか適切な評価や判断はできません。しかし、専門的な知識を持っていればその原因、成り行き(これからどうなるのか)や対処方法を適切に評価し判断できます。
上記の嘔吐している家族であれば、状況によってそれぞれ次の様に評価し判断する事ができます。
・嘔吐している家族が夜遅くまで多量のお酒を飲んでいた場合
評価:二日酔い
判断:様子を見ようかな
・嘔吐している家族が発熱している場合
評価:風邪
判断:病院に受診
・嘔吐している家族の呂律が回っていない場合
評価:脳卒中かも!
判断:すぐに救急車を呼ぼう!
実習も同じです。あなたが受け持ち患者の疾患に対する知識がなければ、その患者に必要な情報、患者の状態、症状、経過、治療、必要なケアなど見当もつきません。だから事前学習が大切なんです!
事前学習の量の多さに圧倒され、ただ言われた事を調べて書き写すだけでは意味がありません。まずは実習は事前学習から始まっている事を知ってください。そして次にどんな事を知っておいたら良いかを抑えておくべき8項目としてかんたんにまとめました。
■事前学習または患者の疾患が分かった時点で抑えておくべき8項目
※( )はこの限りではありません。実習内容、実習状況、患者や患者の状態により変化します。
1.病態生理:疾患が人体の生理学的な機能にどのような影響を与えるかを知る。
(情報収集、アセスメントに役立つ)
2.病因:疾患の原因や要因を知る。
(情報収集、アセスメントに役立つ)
3.検査:疾患特有の検査内容や検査値を知る。
(情報収集、アセスメントに役立つ)
4.症状、随伴症状:疾患特有の症状を知る。
(情報収集、アセスメント、看護診断、看護計画立案、患者の状態の変化を予測するのに役立つ)
5.合併症:疾患や症状の進行によっておこる合併症を知る。
(アセスメント、看護診断、看護計画立案、患者の状態の変化を予測するのに役立つ)
6.増悪因子:疾患が引き起こされるまたは悪化する原因や要因を知る。
(情報収集、アセスメント、看護計画立案、看護ケアの実施、患者の状態の変化を予測するのに役立つ)
7.治療:疾患の治療方法を知る。
(情報収集、アセスメント、看護計画立案、看護ケアの実施、患者の状態の変化を予測するのに役立つ)
8.経過、予後:疾患により患者がどの様な経過を辿るかを知る。
(アセスメント、看護計画立案、看護ケアの実施、患者の状態の変化を予測するのに役立つ)
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