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2020年の野球を展望する

 本日は別稿でエベッツフィールドに触れたのだが、本来は一年がどうなるかを書きたかったので、ここにかくとする。

1、変化する高校野球~とどまるか、進むか~

 さて大きな変革を迎えようとしているのが高校野球だろう。新潟高野連の球数制限への取り組み、大船渡高校佐々木投手(ロッテ一位)の夏季大会決勝における登板回避など、既存のエース一人が投げる時代からの変化が訪れ始めている。

 もともとこの議論は90年代の沖縄水産高校大越投手の件から議論されている場所であり、それゆえに休養日の設置などで緩和策を図ってきたが、ついに国内外から散々批判されてきた投手酷使が持ち上がってきたという形だ。

 これには前述の二つのみならず、前年の甲子園春夏連覇をした大阪桐蔭高校が柿木(日ハム)、根尾(中日)、横川(巨人)の三本柱の存在も大きかろう。その前からも2014年の東海大相模における140㎞/hカルテットなど、強いチームは一人のエースだけではなく複数のエースをもって立ち向かう方向性を見せている。これは大船渡高校における佐々木、大和田、和田というトリオを形成し、控えに柴田投手を置くという、投手四人体制を敷いてい他事からもうかがえる。むしろ2018年における金足農業における吉田に完全に任せきる方が全体的に珍しくなりつつあり、少なくとも二人、三人は投手を構える方針が高校野球で顕著になり始めた。

 また、昨今のホームラン増加と国際大会へのアプローチに伴いアメリカからで使われている「飛ばない金属バット」を使用を検討に入れている。また、萩生田文科相の「高校野球における本当の頂点は甲子園でなく秋の国体ではないか」発言など、高校野球と甲子園を取り巻く環境にも段々と変化の兆しが表れている。

 果たして2020年、高校野球はどういう回答を出していくのか。変化の見物人としては面白い年になりそうである。

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2、中央から地方へ、独自路線を目指す大学野球

 首都大学野球リーグにおいてホームゲームデーが入り、応援席での来場者は記念物がもらえるようになるなど、18年のネット放送以降大きな変化を見せつつある。本リーグの成長は目覚ましく、今まで中央の大学野球といえば東京六大学と東都、というイメージだったのが、18年ドラフト一位の松本航(西武)、東妻勇輔(ロッテ)などから段々と「東海大学だけのリーグ」から脱却を始めているのが面白い。19年ドラフトでも吉田大喜(日体大)がヤクルト、海野隆司(東海大)がソフトバンクに二位指名と上位指名が二人入っている。

 またドラフト指名一つ見ても優良選手が必ず中央のリーグに行くとは限らなくなってきているのが特に目に映る。SNSの発達などにおいて地方のアマチュアファンや選手が発言できる機会が増えたことも影響し、神宮大会にこれなくても名前を売っている選手や関東でも比較的影の薄い東京新、関甲越、神奈川、千葉などのリーグ、または下部リーグでの選手が知られるようになってきている。北東北リーグの蛯名達夫(青森大→ロッテ6位)を皮切りに中国地区リーグの梅林優貴(広島文化学園大→日ハム6位)、札幌大学野球リーグの本前郁也(北翔大→ロッテ育成一位)、東海地区大学リーグの奥山皓太(静岡大→阪神育成二位)、愛知大学野球リーグの松田亘哲(名古屋大→中日育成一位)。またドラフト候補として注目されたがBCリーグへの入団が決定した山田綾人(玉川大→栃木特別合格)など、どの大学からでも専門職としての野球を選べる時代が本格化しつつある。

 勿論既存のノンプロへの道も開けており、大学野球は本格的に花咲き始めているといっても過言ではないだろう。プレイヤー人口も減りつつある他の連盟と比較して唯一右肩上がりを見せている。また、ソフトバンク柳田悠岐(広島経済大)、西武山川穂高(富士大)など地方出身の選手が元気なのがそれを象徴しているようにさえ思える。この傾向はまだまだ続きそうである。

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3、安定を見せる社会人野球、揺れる独立リーグ、女子プロ野球

 そして変わらずの社会人野球。いまだに多くの問題を抱えつつも、北海道ガス野球部登場以降、エイジェック、サンホールディングスなど新チームが増え、室蘭シャークスが企業登録にし、新日鉄室蘭シャークスとして再発動するなど、新たな風が出つつある。北海道ガスはわかるにせよ、人材派遣のエイジェック、株スマイクが登場してきたのは経済の流れが影響する社会人野球部の中で新たな時代を感じさせずにはいられない。これでリクナビなどが加入したら人材派遣という経済ツールが本格台頭してきたことへの証明にもなるだろうし、現在の地図も変わってくるだろう。

 また、不動産をメインに扱っているシティライト岡山、アミューズメント業界の伯和ビクトリーズが中国地方代表として、自動車教習を扱っている梅田学園が九州地区代表として都市対抗に上がってきたりと、名門以外の新興チームが台頭してきているのも見逃せない。

 今年はオリンピックの影響もあり、全日本社会人野球選手権が夏に、都市対抗野球大会が秋に開催されるがどうなるか。そして個人的には日の丸を背負うことがなくなった社会人野球選手が日本代表をみてどう思うか。そこへの感情が今年から来年以降のキーワードになるであろう。

 一方安定期に入ったとみられていた独立リーグ、女子プロ野球が不安定になった。福井ミラクルエレファンツが突如の清算。あわや球団消滅か、となったところにSNSを中心に大きなサークルとなったトクサンTVが買収。福井ワイルドラプターズとして再出発することになる。地区優勝達成後の清算ということになってしまい、改めて独立リーグの経済地盤の緩さが浮きだってしまう結果となってしまった。こういうことが続けば1988年のパリーグ、熊谷組廃部後の社会人野球のように将棋崩しがごとくチーム解散というのは歴史が証明しているので、今年そして来年とどう踏ん張るのか、また経営基盤をどう変えていくのか、というのは大きな要素となってくるだろう。

 またSNSの普及などに伴い、特に独立リーガーを中心に野球のことばかりを書けばいい、という時代も終焉を迎えると筆者はとらえている。選手、球団がどう地方と結びつくか、ということを再確認させられることになるのではないか。

 その反面、神奈川フューチャードリームがBCリーグに参加。関西独立リーグでは堺シュライクスが漫画「バトルスタディーズ」コラボなどで派手に活動、レラハンクス富良野BCなどの野球アカデミー登場。南では琉球ブルーオーシャンズなど、どんどんと独立リーグやプロ野球チームを興そうという気質が高まっているのも事実。その姿は1880年代に様々なチームが興り、リーグとして発展していったアメリカン・アソシエーションさながらであり、現状のNPBとは違ったプロ野球のあり方が模索され始めていることには注目したい。

 一方、ほぼ終焉を迎えつつあるのが女子プロ野球である。親会社のわかさ生活がほとんど手放す方針を構えていることもあり、選手が大量の自由契約、エイジェック女子野球部などアマチュアセミプロに転身するものや引退するものと、斜陽に照らされつつある。

 国際野球の観点からみても、もはや全力を入れているのは日本のみで、いつどの国が日本を倒すのか、という雰囲気を醸しつつある。海外ではソフトボール経験者が代表として参加することも少なくなく、台湾が唯一といっていいほど力を入れている以外はやはりマイナーな状態になってしまっているのは否定できない。やはりソフトボールという偉大な先人がどうしても邪魔になってしまうか。

 おそらく女子プロ野球は1950年の東京ブルーバードよろしく姿を消すことになるだろうが、ヴィーナスリーグなどまだまだアマチュア女子野球は活発そのもの。このまま歴史の一ページになるのか。それとも違う形が興るのかは見物であろう。

 不安定というのは新しいことへのチャレンジへのきっかけにもつながるため、すべてが悪いわけでもないのだ。昨今ではBCリーグからドラフト中位での指名も出てき始め、日ハムなどは女子選手入団の発言も残している。

 ピンチをどうチャンスに変化させていくか。ここが重要になってくる。

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4、NPBと国際野球

 さてNPBである。パリーグが強くなってきたためセリーグもDH導入することやルール5ドラフトよろしく現役ドラフトなど様々な論点が巻き起こっているが、それよりも目下の課題としてオリンピックが本格的に近づきつつある。

 すでに2024年のパリオリンピックでは空手と共に野球は種目から落選。日本への忖度のために野球を種目に選ばれるような形になってしまった。果たして侍ジャパン機構やNPBはどうとらえていくのか、というのは大きな注目になる。

 目線をMLBに移すと前WBC以降、アメリカ、パンアメリカ以外への活動が大きくなりつつある。イギリスでのゲーム。南アフリカ共和国出身選手の契約など、いわゆる「野球を本格的にやっている国」以外での広報も目立つようになっている。MLBがワールドドラフトを視野に入れているというのは今日始まったことではないが、それの下積みは着々と整いつつある。オリンピックがあろうがなかろうがアメリカはMLB、ここが世界野球の王国なのだ、という独自路線を作ろうと進めているのが現状だ。ここ数年の国際野球協調路線もそういった思惑が見え隠れしている。

 その一方でオリンピックの旗のもと、野球をしたこともない国やまだまだ覚えたての国が積極的に参加しているのも事実で、特に海外青年協力派遣隊を送って野球を伝えているウガンダなどが参加。ジンバブエ、ブルキナファソなど、「野球してたの!?」と驚くような国が目指している。想像以上のオリンピックという言葉の重さを実感した国際野球ファンも少なくなかったのではなかろうか。

 その中で日本野球は良くも悪くも日和見主義的な姿が見られるというのが正直である。刻々と変化しつつある海外情勢で、アメリカを中心としつつ、かといってアメリカの独自路線にも積極参加をするわけでもない、いわば宙ぶらりんな状態であるのは間違いない。それが良く作用しているときもあれば悪く作用しているときもあるというのが、今の日本野球を表すにはちょうどよかろう。

 筆者としてはアメリカの独自路線というものに協調ができず、オリンピックとWBCの日本柱によって立っていくべきである、という考え方なのだがこのオリンピックにてその解答は迫られるだろう。そうでもなければNPB、侍ジャパンもまたMLBの考える世界野球の中にある独立リーグ、という位置づけに落ち着いてしまうだろう。スポーツによる平和の祭典、という名義がオリンピックに持ち続けられる以上、ヨーロッパから見れば金と力だけはやたらある新興国で、発展途上国からみれば割とわがままなアメリカの主義主張のみでは好き嫌いがはっきりしてしまい大きく伸びることは難しいと考える。

 どちらにせよ、2020年のオリンピックというところでNPBを中心とする国際野球はどういうスタンスをとるのか、ということが明白にされるだろう。ここで決断を決めておかなければ後々苦労をすることになるだろう。

 これに対してどういう路線をとるべきか、というのは私論があるため別の稿で書くものとする。

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 5、まとめに変えて

 2019年という時代を終え、2020年という新しい時代、特にオリンピックを迎え入れる時代が来るに伴い、各々野球にかかわるすべての人間が本格的にグローバリゼーションを日本で目撃することになっていくだろう。もう日本と外国さんという時代が終わりを迎えつつある。そこに対して各々がどうとらえるか、というのが今年の大きな課題になるだろう。

 一方で国内各々の野球連盟は変化が伴いはじめ、それを積極的に行うか否かで若干スタンダードが変わりそうである。ある意味マスコミュニケーションが本格的に変質を求められる中で、そこに関わる人々は何を提案していくか。こういったことが求められる一年になるだろう。マスメディアも段々と紙やテレビといった不特定多数への発信から特定のサークルへの発信、という時代へなっていく。ここをどう見定めるかがポイントとなろう。

 そして、今年一年も様々なことがあろうが、いい一年になることを祈ってここで終えるものとする。

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