アイビーリーグメジャーリーガー四季折々
佐々木麟太郎が日本のどの球団にも属することを選ばずアメリカへの道を渡ることを決めた。これがまた日本野球の変化を促すのだろう。
行先はスタンフォード大学という。情報工学を得意とする世界最高峰の知識を要する大学だ。彼がどういう学問を修めるのかは別として行く末を見守りたい。
しかしアメリカにも多くの大学がある。とりわけちょっとでもアメリカ史をかじった人ならアイビーリーグの名は出てきやすいだろう。
その多くが1700年代に開校し、多くの経済、社会に影響を与える有名人を輩出した、日本で言えば東京六大学に相当する大学群及びそのスポーツリーグだ。
例えば日本では「早稲田大出身の選手は」と問われれば多くの名前が上がるであろう。プロ野球と縁遠いとされる東京大学ですら好きな人間なら門前の小僧がごとく選手をそらで言えるだろう。
だが、いかんせんアメリカの大学出身者を言える人は少ない。
距離的なものがあるから仕方ないが、それ以上に語れることは少ない。
ではどういう出身大学を持つ選手がいるのだろうか。アイビーリーグを例にやってみよう
1,流石!コロンビア大
タイ・カッブに飛び蹴りを食らった写真がネットでよく見る。あのキャッチャーがヤンキースの名スカウトであったことを知っている人はどれほどいるであろうか。
彼の名はポール・クリッチェル。当時セントルイス・ブラウンズの控え捕手をしていた選手だ。
その彼がアイビーリーグはコロンビア大で見つけてきたのがかのアイアンホースことルー・ゲーリッグだ。
コロンビア大はもはやゲーリッグだけでアイビーリーグ全体の選手でもトップの成績を残しているといっても過言ではない。その壮絶なプレーと悲劇的な死は私がここで書き記すよりよっぽど良著があるだろう。
コロンビア大はゲーリッグ一人でおつりがくるといっても差し支えがない。
だが、コロンビア大はそれだけではない。
彼が減益になるはるか前に20世紀最高の二塁手と呼ばれた選手の出身校でもあるのだ。それがエディ・コリンズ。現在フィラデルフィア・アスレチックス10万ドルの内野陣で二塁を務めただけでなくシカゴ・カブスでも活躍。犠打512はメジャーレコードであり、それに足して3315安打に741盗塁と打の要として活躍した選手だ。彼もまたコロンビア大の流れを受ける。
多くの人間がふつうはこれだけいれば、と思うのだが投手からも一人大物が出ている。
サンディー・コーファックスだ。
ドジャースタジアム象徴の一人となった「レフティ」の一人も蔦のリーグから出身なのだ。HoFに三人(在学しながらプロをしていたジョン・ウォードも含めると四人)いるというのもコロンビア大学がアイビーリーグでもどういう大学だったかが想像できて面白い。
近年はNYMなどで控えであったマイク・バクスターを最後に選手が登場していないが今後が面白い大学だ。
2,ブラウン大、ダートマス大、プリンストン大
しかしコロンビア大はアイビーリーグの中でもコーネル大の12人に次ぐ22人というメジャーデビューの少なさが象徴するように数人の活躍と引き換えるかのようにメジャーでの登録人数が少ない。
その点ブラウン大はアイビーリーグでも41人というトップクラスの選手登録を成しえている。
ここも大打者と呼ばれる選手はフレッド・テニーなど19世紀の選手が多く、20世紀において活躍したと言えるのは70年代後半から80年代のSDPなどでショートストッパーとして活躍したビル・アルモンと打撃より守備で長く活躍した選手であった。
投手は1936年NYYに所属しワールドチャンピオンの一人になった161勝投手のバンプ・ハドリーとなかなかに活躍している。
その次に多いのがニューハンプシャー州ハノーバーに本部を置くダートマス大で36人。なんとこの大学は19世紀や20世紀初頭に記録を持つ選手の多いアイビーリーグでは珍しく近年メジャーデビューした選手のほうが記録を持っている。
例えば現在最多安打は90年代から00年代にかけ三度にわたってゴールデングラブ賞を受賞したキャッチャーのブラッド・オースマス。
投手には19世紀のリー・ビアウ(83勝)を抜いて現役としてシカゴ・カブスで投げるカイル・ヘンドリックス(93勝)がいる。100勝まであと少しのところまで来ていることを考えればアイビーリーグから久しぶりに、それも現代野球からとしてはアイビーリーグ初の100勝投手が生まれる可能性もある。シカゴ・カブスは日本人も多く在籍しているから日本人も観る可能性は高いだろう。ぜひ彼も気にしていただきたい。
また近年活躍した選手が出たといえばプリンストン大だ。2010年代にSDPの外野を担ったウィル・ベナブルはプリンストン大出身。707安打と結果を残している。
2007年、SDPからオールスターに出場したクリス・ヤングもまたプリンストン大だ。この二名の高学歴コンビがパドレスの屋台骨を支えていたと思うとパドレスの違った姿が見えて面白い。
プリンストン大は古い時代よりも近年メジャーの記録に挑戦する選手が出てきているからこれからも期待大だ。
3,イェール大、ハーバード大、ペンシルベニア大、コーネル大
そういう意味で古い時代に大物がたくさんいるのがイェール大だ。エクセレント!
投手にはビル・ハッチソン。キャップ・アンソン率いるホワイトソックスのエースであった彼は182勝している。
19世紀も1870年代、その打棒でホームランが定まり始めた、ホームランを打つに足が必要であった時代に本塁打王3回、通算安打2639安打を放ち野球殿堂入りを果たしたジム・オルークなどはまさにメジャーリーグの歴史がどれだけ長かったかを証明する存在ではないか。
あまり目立っていないが50年代ワシントン・ナショナルズ(現ミネソタ・ツインズ)などで活躍したサム・メールも面白い存在だ。
アイビーリーグでは一番古い大学にあたり、シンプソンズのバーンズ社長もライバル大と掲げているハーバード大もテッド・ルイスの93勝にブレント・スーターが追いかけている。
テッド・ルイスは盗塁王ビリー・ハミルトンやホームラン打者ジミー・コリンズ、エースキッド・ニコルスなどボストンを支えた選手。そこにマイナーだったシアトル・パイロッツがメジャーリーグ入りしたミルウォーキー、まだまだ新参者のコロラドで勝ち星を重ねているのはある意味で野球史の対比となっていて面白い。
全米初のUniversityの名を冠したペンシルベニア大では1900年代フィラデルフィアフィリーズを支えた打者、ロイ・トーマスがいる。ペンシルバニア生まれのペンシルバニア育ちの彼は特に選球眼がよく、フィリーズで毎年100以上の四球をとっていた名打者。生涯打率も.290(5296-1537)とフィラデルフィアを代表する打者であった。
同じ時期にアスレチックスで投げていたアンディ・コークリーは現役引退後、1920年から1950年までコロンビア大の監督となる。まさにアイビーリーグの雄だ。つまりルー・ゲーリッグもまたコークリーに見守れていったとみてもいい。
そういう意味では全く選手も集まっていなければ力も入れていないのがコーネル大だ。
若きシューレス・ジョー・ジャクソンと共にプレーしたジョー・バーミンガムくらいが目立っているだけでそれ以外はほとんどいないに等しい。
1940年にメジャーから姿を消したジョー・ギャラガー以降選手が出てきていない。ジョン・ナトリ(https://cornellbigred.com/sports/baseball/roster/john-natoli/52760)と出身者はいるので今後の活躍に期待したい。
4,古豪の蔦はいつまでも
現在はダートマス、プリンストン両大学が努力をしているというところでメジャーでの選手が活躍するめどはたっていないのが現状だが、ジョン・ナトリのように毎年一人か二人はアイビーリーグから選手が入っているのは間違いない。メジャーまでの長い道のりの中で淘汰されてしまっているだけだ。
だからこそこういった歴史を振り返りながら新しく生まれてくる歴史の発芽を期待したいものだ。
とりあえず、佐々木選手頑張れ。