8、お股ニキ「セイバーメトリクスの落とし穴」を読んで

1、世間が評価するお股ニキの書籍を読んだ

世の中には野球の書籍が溢れ返っている。本屋に行けば野球選手の誰かが書いた自伝的なもの、昨今ではブログ的なものも出てきている。そう思えばライターが多くの取材をもとに一冊の本にしたためていたり、今時の人がそれを読むのか、というほど読む人を選びそうな作品など、多岐にわたっている。

そんな中、ネットで話題になった書籍がある。ダルビッシュ有投手にツイートを投げられる事によってその名前を一躍上げ、特にツイッター界隈では知る人ぞ知る人、お股ニキ、がこの度「セイバーメトリクスの落とし穴」という本を出した。

どちらかというと野球史などに興味のある人間ゆえにこういう本はあまり手に取らないのだが、ツイッターなどでは絶賛の嵐だったので、一度読んでみようと思ったのである。

世間が持て囃すお股ニキ。書籍はどういうものなのか、どういう考えなのか、一度触れてみたいと考えたのだ。

2、現在の球界におけるトレンド

目を引いたのはやはり目次であった。今時の野球書籍としては如何せん古い形式で、序章、各論、という形で合計八章というスタイルだ。各論には技術論も含まれており、その形式にアル・カンパニスの「ドジャースの戦法」を思い出させる。ドジャースの戦法は技術書なので現在のメジャーに於ける理論を書いているというわけではないのだが、最初にピンと来たのはそこだった。

一方で気になったのは、いくらなんでも手広すぎないか、という事だ。目次だけではこの書籍の「方針」というものが見えてこない。よくも悪くも本人の思う事を書こうとする哲学書的書き方に重きを置きそうである事は容易に想像が出来た。

哲学書的、というのはいい意味では著者の思想をしっかり描けることであり、悪い所では徹底的な論拠論証が無い場合はふわついたものになる傾向がある。果たしてそれは吉とでるか凶と出るか。

それがいい形でにじみ出ているのが第一章・野球を再定義する、であろう。

野球をスポーツ的ではなく「すごろくやボードゲームの要素が強い」と著者は指摘しているが、これはまさにベースボールが制定される前のラウンダーズ、タウンボール時代の名残ともいうべきところで、元々は投げられたボールを打って走る事が主体の遊びがA・カートライト達によってルールの制定をされるまでの在り方だったのだから、それを現代の野球から読み取れるというのは慧眼である。それに関しては19世紀から20世紀初頭まではホームランというのは怠惰な行為で最もアクティブなプレーがスリーベースヒットであった、という事象を考えると、野球の大きな柱に、ボールを打って走る遊び、という概念が隠れている。

その後は観方が鋭いというよりは、誰もが当たり前に思っていてもそれを言語化出来ない、という所をしっかりと抑え、今のトレンドというものをしっかりと捉えられている。昔のような力か技術か、という時代の終わりも予感している。

その点では、現代の感覚を見据えた書籍であると言える。

3、一方で気になる論証論拠の不安定さ

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