シンシナティ・レッズの話をしよう
1,コメディセントラルと揶揄されたナ・リーグ中地区の最下位球団
4月のMLB界隈で騒がれた言葉がある。
「シンシナティレッズ、4月合計で4勝23敗」
アメリカを飛び越え、日本でも話題になったから記憶にある人も少なくなかろう。
シンシナティ・レッズはどうにもならないチームとしてシーズンをスタートした。
既にチームは多くの選手がFAで旅立っていた。正捕手のタッカー・バーンハート。ライトのニック・カステヤノス。ウェイバー公示を得てウェイド・マイリ―。とにかくひどい状態であった。
ジョーイ・ボットももう年齢が高くなりすぎて次回が期待できない。
そんな中、3月にソニー・グレイがミネソタに、ジェシー・ウィンカーとエウヘニオ・スアレスがマリナーズにトレード。特にスアレスはボットの後を継ぐ選手と思われていたためにファンは騒然。開幕前からお通夜状態であった。
私個人としても日米野球で若きスアレスが来日していた経験を覚えているから彼がいなくなったことに対してショックを隠せずにいた。
とはいえ全く希望がないわけでもなかった。
新人王、ジョナサン・インディアが若き彗星として活躍をし始めていたし、バーンハートの後釜にはタイラー・スティーブンソンもいる。
年老いてきたとはいえ36本の本塁打を打ったボットだって老け込むにはまだ早い。
投手陣にはかなりの不安を覚えるし、打者も決して層が厚いともいえない。
ただ全く見るところがないかと言えばウソにはなる。そんなチームが2022年のシンシナティ・レッズであった。
2,ジョナサン・インディアの怪我
そんな中ジョナサン・インディアが突然怪我をする。考えてみれば4勝23敗の序章はここからであったような気がする。
4月のレッズはとにもかくにも打てなかった。
基本はインディアを一番に置き、二番にタイラー・ネークイン、三番にトミー・ファム、四番ジョーイ・ボットという打線であった。どちらかというと攻撃に重きを置いた打線である。
しかし、そのインディアが突然消えた。
そこから一番が固定できないままぐだぐだと時が過ぎていく事になる。
インディアの前は打たれ負ける事は多くあったが打ち負ける事は比較的少なかった。逆に言えばインディアが消えた途端に打つ力が一気に衰えたチームになってしまったのだ。
先発はタイラー・マーレ、ハンター・グリーン、ニック・ロドロ、マイク・マイナーの四人。だが彼らもことごとく打たれる。去年の9勝投手ウラジーミル・グディエレスも投げていたがまあ勝てない事勝てない事。
とにかく彼らが打たれる打たれる。
下馬評的にはブルペンの方がまずいのではないかと言われていたがそれ以上に先発が崩壊。そして下馬評も間違いではなく、誰が投げても崩壊というひどい有様であった。
4勝23敗というのは別に誰が悪いというようなものではなかった。
みんな調子が上がらず、皆苦しむひどいシーズンの幕開けになってしまった結果だったのだ。
3,タイラー・スティーブンソンという星
そんなチームをおおよそ一人で支えたと言い切っても差し支えないのがタイラー・スティーブンソンであった。
正捕手としてダイヤモンドを守り、バッティングは5番に添えて高打率をマーク。時にはホームランを打ち、彼のリードでチームは勝つ。それでなんとか成り立たせていたのだ。
控えにアラミス・ガルシアがおり、週に一日彼がスタメンでほとんど出場。時には代打で出てくる事もあった事からその信頼度が見受けられるだろう。
そんな彼も6月に骨折で戦列を離れる。
そうなるとどうなったかは今更書くことでもなかろう。彼が戻ってくるまでアラミス・ガルシア、クリス・オーキー、マイケル・パピエルスキと何人もがメジャーとマイナーを行ったり来たりする事になる。
勿論投手陣は燃えた。
4,日本で一瞬だけ話題になったハンター・グリーン
日本でアメリカ最速投手としてハンター・グリーンが一瞬だけ脚光を浴びた事がある。
佐々木朗希完全試合前後だったか。アメリカにもこれだけの速球を投げる投手がいる、とMLB通がしたり顔で語っていた記憶に深い。
しかしレッズを追っていた自分から言えばなんとも言えない存在であった。
とにかく二週目から打たれ始める。そして打たれ始めたら止まらない。
恐らくレッズを観ていた人間でグリーンに期待していたファンはさほど多くなかろう。
勿論「もしかしたら」という期待はあったはずだ。
だがそれよりも「多分今日は負けるのでしょうね」が先立ち、そして「やっぱりそうでしたね」という結果に至る。
ただでさえ先発が不調を起こしていたタイミングだ。三振は取るがとにかく打たれる。そんな投手だ。
5,先発復活の狼煙を上げたグレアム・アシュクラフト
そんな先発がとにかくどうにもならない時に現れたのが2019年ドラフト6巡目(全体174位)の投手、グレアム・アシュクラフトであった。
みんな滅茶苦茶期待していたわけではなかったはずだ。
まあ、マイク・マイナーくらいやってくれたら。
グリーンの二の舞にならなければ。くらいの印象だったはずだ。
そんな彼が4勝2敗(7月16日現在)と先発を牽引し始めるとは誰が思っただろうか。100マイルのストレートでねじ伏せている。
まだ名前は出ていないがどんどんベールを脱いでいくだろう。
6、打撃の救世主、ブランドン・ドゥルーリー
チームが少し復調したのは間違いなくブランドン・ドゥルーリーが出てきてからだろう。
このチームに来るまで不安定な人生を送っていた。実際メッツからFAでマイナー契約をして開幕スタメンに名前が載る事がなかった。
実働7年で51本塁打。年間通してスタメンに立つことは数回。
マイナーに落ちるほどじゃなくてもメジャーで第一線というにはほど遠い存在。
そんな彼がメジャーに戻るとチームを牽引。
既に年間自己記録を超える18本塁打を打ち、オールスターにも選出されている。
遅く活躍の兆しを見せ始めた選手に輝きはあるか。
そんなシンシナティ・レッズも後半戦に突入。
34勝57敗とまあひどいものだけれどその上を行くシカゴ・カブスもまた35勝57敗と燦燦たるもの。
一勝でも目指して頑張ってほしいものである。
風邪を引いた結果今週は書き物をする余裕が全くございませんでした。ゆるしてください