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シャカリキナース奮闘記①

第一話「アップルウォッチは突然に」

ドゥバンッヌ!

勢いよく叩いた机の音が部屋中に響き渡る。

開けていたドアから、ふくよかな見た目の副看護部長が心配そうに除き込んできた。

「僕、絶対やめませんからね」

学生時代から目立た無いグループにいた、いわゆる陰キャの俺は、23年間の人生の中で過去最高にドキドキしながら看護部長に言い放った。

「そこまで言うなら部長の言う新人配置の案、 受いれますよ。そこで結果出したら、絶対に緩和ケア病棟に配置してくださいね。約束ですよ」

うわずる声を極力抑えながら、眉一つ動かさない小木看護部長に言い放った。

「そんな約束はできませんが、あなたが本当の意味で、組織に必要な人材になったら考えましょう」

大声で話す俺とは対照的に、小木看護部長は淡々と話してきた。

「ぐぬぅぬぬ…
よくわかんないですけど、結果出したらいんですよね半年!うーん。いや、イッカゲツゥ。一ヶ月で結果出しますから! 」

自分でも、無謀な事を言ってる自覚はあったけど、坂道を転がり出したボールのように、俺の口は止められなかった。

開いていたドアから、事態を伺っていた飛永副看護部長が、イキリたった僕をなだめるように話しかけてきた。

「三浦さん。落ち着いて。まだ部長も許して下ると思うから、謝りなさい」

興奮している僕は、返す刀で
「落ち着けませんよ。僕の小さい時からの目標だったんです。それを組織だの個人だの。よくわかんないですよ!
でも、結果出せばわかってもらえるんですよね。僕絶対、部長の事見返しますから」
と言い返した。

それを黙って聞いていた、小木看護部長は、慌てる飛永副看護部長を諭すように話し始めた。
「飛永さん。いいじゃないすか。本人もそう言っているので、一ヶ月後には、どうせご自身で進退を決めることになるでしょう。
まあ、組織の為に頑張ってください。楽しみにしてますね」
というと、痺れるような笑顔で語りかけてきた。

ゾクゾクっと寒気を感じると同時に、それ以上何も言えなくなった、僕はペコリとお辞儀をすると看護部長室を後にした。
部屋を出ると、大きな深呼吸をしながら、必死にこぼさないように溜めていた涙を、拭き取った。
拭き取った左手が静かに振動を始めた。
目を移すと、スマートウォッチが僕のHeart rateが120回を超えた事を告げていた。

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