「君に贈る火星の」 #ショートショートnote杯
一通の手紙と、”謎の石”が届いた。
差出人を確認すると、遠く離れて暮らす弟からだった。
紙の手紙なんて、いつぶりだろう。
まして、あの、口下手で無口な弟からなんて。
”姉ちゃんへ
姉ちゃんには、俺が生まれてから、本当に世話になりっぱなしだった。
俺が困った時は、いつも姉ちゃんが現れて、助けてくれた記憶でいっぱいです。
それなのに、大したお返しもできず、お礼をしたこともなかったよね。
今日はその気持ちだけでもと思って、こうして手紙と贈り物をさせてもらいました。
不器用で、口下手で、ごめん。笑
これは歳を重ねても、改善できなかったみたい。笑
実はこの手紙、未来から過去に向かって送ってます。
俺ももう70歳になった。
この前、若いお兄さんが
”今話題の火星の石。贈り物にいかがです?”
って勧めてくれたから、買ってみたんだ。
喜んでくれると嬉しいです。”
いやいや、どんだけ口下手なのよ。
あとさ、この石、騙されて買ってない?
弟の将来が益々心配になった。