MIRAIさんの作品展から考えた「夢と睡眠」
芸術の秋ですね。
私の暮らす福岡でも色々な個展や展覧会が開催され、時間をみつけては足を運んでいます。
今回訪れたのは
gallery cobacoさん(福岡県朝倉市)で開催中、
アーティスト MIRAIさんの個展
「Die Träume(トロイメ)」です。
『寝ている時に見る「夢」をテーマに、夢に出てきたらなんだか嬉しいものたち』
をモチーフにした作品が楽しめるということでした。
期間中はMIRAIさんがずっとご在廊とのことで、わたしもお会いしてお話をうかがうことができました。
ふんわりと優しい印象の絵ですが、絵の中の建物には階段の一段一段やら靴箱の小さなお靴やらが細かく描かれ、ドールハウスをのぞくようなワクワク感があります。
モチーフはどれもクリアに描かれているのですが、その一部が彗星のようにすっと現れたり消えたりしているところが幻想的です。
みていてとても心地がよい絵です。
夢の中のことをここまではっきりと再現できるとはすごいな…と思いましたがMIRAIさん自身、夢はわりとよく覚えてらっしゃるとのことでした。
たくさんの夢の絵の中でも一番印象に残ったのは夕焼けに染まったような真っ赤な平原のなかに、地平線にむかってのびる線路がある絵でした。
おもちゃ箱みたいな列車にまたがって、ワンピース姿のこどもが遠いかなたを目指しているようです。
じつは私も同じような夢を見ることがよくあります。小さな列車に乗る夢です。
けれど私の場合はもっと薄暗く、まわりは見えずにスポットライトだけが自分に当たっていて「どこにつれていかれるのだろう」と不安な気持ちでいることが多いです。
一方MIRAIさんの絵は
「もっと楽しい世界にいってやろう!」
という明るい希望や自主性を感じられるものです。
知らないどこかへ向かう列車にまたがる…という同じシチュエーションなのに、夢の持ち主(とでも言うのでしょうか)の感情によって描くイメージもかわるものですね。
MIRAIさんにこの絵のもとになった夢を見たときのことをお尋ねしましたが、絵の印象のとおり楽しい気分だったそうです。
「夢」については思うところがありました。
実は知り合いの方から
「ここのところ現実と混同するようなはっきりした夢をみる」
というお話をきいて、自分でもあれ調べていたところだったのです。
人間はこれまで体験したことを眠っているあいだに脳内で仕分けしているといいます。
年代だとか、ジャンルだとか、記憶をひきだしてカテゴライズしてまた脳にしまう…という作業中に再生される記憶が夢となるのだそうです。
また人間の睡眠には
「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。
レム睡眠のREMとは
「rapid eye movement」
の略で、ねむりながらも目がうごいている状態…つまりねむりが浅い状態です。
徐々にねむりが深くなると目玉がうごかない状態
「non -REM sleep」
になります。
ねむっている間はこのレム睡眠とノンレム睡眠を90分周期で交互にむかえるといわれます。
実は人間はレム、ノンレムに関わらず、ねむっている間ずっと夢はみているのだそうです。
ただ、浅いレム睡眠の時の方がはっきりと実体験に近い夢をみているそうで、朝起きて鮮明に夢をおぼえているということは、レム睡眠で目が覚めたということになります。
つまり、深い眠りから浅い眠りになって自然に目が覚めたということですから、まだねむりが深いときに起きてしまうよりも睡眠のパターンはうまくいっているのではないか、とも考えられます。
ちなみに深いねむりの時に起きてしまうと現実味がなく、抽象的でよくわからない夢が残るそうですよ。
(知り合いの方にもつたえようと思います。)
ところで、MIRAIさんの個展紹介文にあった
「夢に出てきてほしいモチーフ」
というコンセプトはとてもユニークですよね。
初夢に縁起物が出てくるように宝船の絵を枕の下におく、というおまじないがありますが、おもいどおりの夢をみたいと昔から人は願ってきたのでしょう。
見たい夢を見るための研究もこれまで色々と行われてきたそうです。
寝ている人に見たい夢の内容を話しかけたり、匂いを嗅がせたり、なんらかの刺激をあたえるというものです。
でも結局、希望したとおりの夢を見ることは今でも不可能なんだとか。
現在の科学技術を持ってしてもだめなのですから夢とはなんとも不思議なものですね。
でもMIRAIさんは見たい夢があれば、そのままキャンバスに描いてしまえばよいのですね。
こうして自分だけでなく、たくさんの人に見てもらうことができます。
つくづくアーティストって素敵におもしろいと思います。
夢のテーマの他にもMIRAIさんの考えた「神様」だとか、ご主人との共同制作による能面シリーズも大変見応えがあります。
MIRAIさんにお願いすれば、能や能面に関することをたくさんおききできると思います。
私はお話をうかがって、このような素晴らしい文化をもつ日本人でよかった!と思えました。
能については私ももっと詳しく勉強したいと思いましたので、またこのあと記事にかこうと思います。
こちらのMIRAIさんの個展は2024年12月1日まで開催されています。
色鮮やかで想像力豊かなMIRAIさんの世界をぜひ楽しまれてください。
作品をご覧になりながら、自由にご自身だけのストーリーを作られるのも面白いと思いますし、MIRAIさんはきっとそれをよろこんでくださると思いますよ。
今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。
ナース刺繍は現役看護師兼、刺繍家の私が人体、医療をモチーフにした制作をおこなっています。
ホームページでは作品紹介やお知らせなどをいたしておりますのでご覧いただけますと幸いです。