体温管理(発熱)

受け持ち患者さんが発熱している時、何を考えて何をするでしょうか
発熱時に行う検査や治療等はあると思いますが
“発熱を起こしている患者さんの苦痛を取り除く“ 
という視点で考えていきたいと思います
文献や研究、解剖生理学や物理学などの科学的に考えることができて簡単にですが紹介していきます


1.発熱とは
2.ガイドラインを元に考える
3.解剖学的・物理的要素を元に考える4.まとめ

1.発熱とは

米国のガイドラインでは38.3℃以上を発熱としている
SIRSの定義は発熱は38.0℃以上
発熱の定義には根拠がないようだ

2.ガイドラインを元に考える

日本版敗血症ガイドライン2020より

発熱は,抗体産生の増加,T 細胞の活性化,サイトカインの合成,好中球およびマクロファージの活性化を惹起する生体防御反応であり,重症感染症患者における発熱は死亡率低下との関連が示唆されている 。一方,発熱は,患者不快感, 呼吸需要および心筋酸素需要の増大,中枢神経障害などを生じ,負の側面もある 。
冷却による解熱には,体表クーリングや氷嚢を体幹 部にあてる表面冷却が使用される。 鎮静は寒冷反応 (シバリング・立毛筋収縮)を抑制し,冷却による解 熱に併用することで効果的な体温低下をもたらすとさ れている。 しかし, 患者が鎮静下でない場合, 冷却による解熱は寒冷反応を惹起する。寒冷反応を生じた場合,特に表面冷却での解熱は困難となり,むしろ, 酸素消費量や分時換気量は増加する。 解熱療 法の目的が患者の酸素消費量・脈拍・分時換気量の低 下あるいは寒冷反応に伴う不快感の軽減である場合, 非鎮静下における表面冷却は逆効果であり,避けるべきである。

※ガイドラインの元となった研究では、鎮静化のクーリングは解熱効果はあったが、酸素消費量やエネルギー消費量が増加していた

クーリングでは基本的に解熱しない、寧ろ逆効果になる可能性あり苦痛を伴うこともある


3.解剖生理、物理学的に考える

体温の中枢(解剖生理)
 間脳・視床下部
→セットポイントを定めて熱の産生と放散を指令する

※セットポイント:体温中枢が調整する深部設定温度のこと、何らかの理由で体温中枢が反応して深部設定温度を上昇もしくは下降すると、それに合わせて体温が変化する

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時期に合わせた生理的変化を助けるためのクーリングや保温はあり




温度受容体(解剖生理)
 皮膚に散在する冷受容体・温受容体
→保温やクーリング部位の選択を考慮する

冷受容体・温受容体が特に多い部位を身体の前面・後面に分けて以下に記載する

冷受容体 
 前面:前額 頬 手掌 下腹部  
 後面:頚部 足底 腰

温受容体 
 前面:頬 前腕 前額 手掌   
 後面:頚部 肩甲

目的別に部位を狙って保温・クーリングをすると効果的な可能性がある
逆に保温やクーリングを行わない方が良い部位もある



熱の産生(生理的現象)
 交感神経を刺激し褐色脂肪細胞で行われる
 運動神経を介して骨格筋を震わせる
 皮膚血管の収縮による熱放散の防止
→体温の上昇期では交感神経優位の反応が起こる


体温の上昇期は保温をする

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熱の放散(物理的現象)
 対流:温度を持つ部室の周囲に流体があれば熱
    が奪われること
 伝導:温度を持つ物質がより低温の物質に接し
    ていれば熱が低温側に移動すること
 輻射:温度をもつ物質が真空中でも電磁波の形
    で熱を放散すること
 蒸発:液体が気化する時に物質から奪う気化熱→保温やクーリング方法の選択
    をする

(例)クーリングを考えると対流や伝導はエアコンや扇風機、輻射は日光を遮るための遮光、蒸発は清拭など

(例)保温を考えると対流や伝導は電気毛布や温風機、輻射は日光を当てる、蒸発は汗を拭いたりタイミングの悪い清拭をしないなど


発汗(生理的現象)
 発汗は交感神経の刺激で亢進するが、分泌され
 る神経伝達物質が通常とは異なりアセチルコリ
 ンである
 アセチルコリンが皮膚組織の汗腺に結びつくと
 汗腺は血管から血漿を汲み取って汗を作り皮膚
 から出す
 通常はノルアドレナリンであるが血管収縮が起
 こり熱放散に不利である
→体温の解熱期では交感神経刺激が低下する

体温の解熱期では熱の放散を助けるために室温など環境調整をする

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4.まとめ

色々言っても体温の時期の見分けは難しいので防御反応や生理的変化の邪魔をしないという意味で何もしないのもありだと思いますが、ルーティンでのクーリングはやめましょう
アクションを起こすにしても起こさないにしても、フィジカルアセスメントを行いメリット・デメリットを評価してからにしましょう

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