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ヰ世界情緒 3rd ONE-MAN LIVE「AnimaⅢ」ライブレポート

バーチャルダークシンガーヰ世界情緒の3rdワンマンライブ「Anima Ⅲ」が去る8月7日にパシフィコ横浜にて開催された。

2年前の2021年秋に1stワンマンライブ「Anima」を観た時は、初めてソロで観る彼女の動く姿と圧倒的な歌唱力に感動したものだった。しかし昨年の2ndワンマン「Anima Ⅱ」はARによる世界観が壮大ではあったが、個人的にはまたしてもリアルではないことや演奏者が観られないことに物足りなさを感じずにはいられなかった。

そして今回は3rdにして満を持してのリアル会場での開催である。V.W.Pとしてのライブで彼女のパフォーマンスを生で観たことはこれまでもあった。しかしワンマンとしてはデビュー以来4年8ヶ月にしてこれが初となる。

会場はパシフィコ横浜の国立大ホール。涼しい夕暮れのベイサイドは絶好のロケーション。しかし場外の行列が並ぶのを躊躇うほど長く伸びており、案の定開演も予定より押すこととなる。物販が中断したり、フードトラックが中止になったりと、かなり運営には混乱が見られた。

私の席は1階右手の後方だった。場内にはベートーヴェン"月光"の静かなピアノの調べが流れていたが、これはお情の選曲だろうか。会場アナウンスはAI星界の声だった。

オープニング映像が流れた後に、SEから"描き続けた君へ"でスタートした。ステージは左手にギター、ベース、ドラム、キーボード。右手にはチェロやバイオリン等の弦楽四重奏。そして大歓声の中、ステージ中央にお情が顕現し歌い始めた。ようやくこの日が来たなという感慨を抱く。場内は早くもオールスタンディングでサイリウムの嵐。歌詞を聴き改めてこの曲はオープニングに相応しいと思った。

続いて"ディメンション"、"暮れなずむ約束"とアッパーな曲が展開していく。正直アルバムでは打ち込みサウンドを多用していたのが少し不満だったが、この日はちゃんと生楽器による演奏なので非常に聞き応えがあった。そしてそこに乗るお情の歌唱力が圧倒的だ。高音から低音までアルバム以上に力強い。さらに最近発表された"システムズコア"。ハードなバンドサウンドがライブに映える。

ここでMCが入る。相変わらず歌ってる時とは全く印象の異なる可愛らしい話し声のギャップが凄い。

また強めな"そして白に還る"の後は、雰囲気を変えて耽美的なワルツ"ラピスのお人形"。そして怪しげなポエトリーが魅力的な"グレイスケイル"では、アルバムと違うヘヴィなアレンジが新鮮だった。

MCで編成がさらにパワーアップすると話があり期待していると、弦楽器隊の右手にトランペットとサックスのホーンセクションが登場し、始まったのは"此処に棘と死を"。お情は一段上に移動しており、50年代キャバレー風のステージに変化している。お情もジャズシンガーさながらの振り付けで張りのある歌い上げを聴かせる。ここまで本格的なスウィングジャズを魅せてくれるとは嬉しい驚きだった。

その編成のまま演奏は続き、"いろはに咲きて"ではサックスのプレイヤーがフルートに持ち替えて和の音を巧く表現していた。"ヰ世界の宝石譚"や"シリウスの心臓"といった他の1stアルバムの楽曲にも、少し新鮮な響きが加わっていた。

この後はparallel canvasコーナー。アイドル衣装にチェンジしてVALISがゲストとして登場。総勢6人で息の合ったダンスと歌で魅了する。続いて登場したゲストはAiobahn氏。ターンテーブルで"new world"が演奏され、その右隣でお情が可愛らしい歌声を聴かせた。

衣装はparallel canvas Ⅱ の黒い衣装にチェンジ。個人的にはお情はやはり黒が一番しっくりくる。曲はLemm氏作の新曲"Capullo"。以前お情がカヴァーしていたLemm氏の"Tourbillon"が大好きだったので、この楽曲提供は嬉しい。相変わらずダークで複雑怪奇な曲展開が最高だった。続く新曲"アンビバレント"はうねるベースラインが気持ち良かった。

続いて衣装はウェディングドレス風にチェンジし、香椎モイミさんのバラード"ANGELIC"。創介さんの静かなピアノから始まり盛り上がっていく。

AI星界とのデュエットで"シェイク"を歌った後は、MV企画で"眠りゆく芽吹き"。これもカッコいい新曲で、今回の公演で撮影出来る唯一のチャンスとあり、場内見渡す限りスマホの海だった。

最後にお情の感情のこもったMCがあり、その感動を引き継ぐ形でモイミさんの名曲"ARCADIA"。バックには色鮮やかな渓谷の風景が広がっている。

盛大なアンコールを求める拍手が鳴り響き、お情が再度登場。感謝を述べるMCからラストに"かたちなきもの"。お情の綴った歌詞が染み渡る。そしてラストは新曲"みらいのかたち"。こちらもお情の作詞らしい。正直最後がバラードばかりになってしまった感はあったが、どれも良い曲なのは間違いない。

ようやく観測できたお情のリアルライブは、長いようであっと言う間だった。重厚な生演奏のバンドサウンドをバックに、お情の圧倒的な歌声を堪能し、改めてライブの良さとお情の歌唱力の高さに感嘆した一夜だった。早くこれも円盤になることを期待している。

1.描き続けた君へ
2.ディメンション
3.暮れなずむ約束
4.システムズコア
5.そして白に還る
6.ラピスのお人形
7.グレイスケイル
8.物語りのワルツ
9.此処に棘と死を
10.いろはに咲きて
11.ヰ世界の宝石譚
12.シリウスの心臓
13.異世界転調リクエスト / ぼくらの逃避行 ft. VALIS
14.new world ft. Aiobahn
15.Capullo
16.アンビバレント
17.ANGELIC
18.シェイク with. 星界
19.眠りゆく芽吹き
20.ARCADIA
21.かたちなきもの
22.みらいのかたち


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