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何処かへ
ある時のミーティングで、生きる場所を変えていくことについて、2人でつらつらと話しあったことがあった。
土居も私も大学進学と同時に地元を離れた身であり、この1−2年はそれぞれ引越しの多い年月を過ごした。また2人とも、よく旅行に出かけては、此処とは違う場所を見てくることが好きなタイプである。
”ここで暮らそう”
”ここからもう出て行こう”
と思う要因やタイミングは、人それぞれあるとは思うが
果たして自分はどこに居るのが一番満足なのだろうとよく考える。
時々、何としても行かずにはおれない場所というのは不思議とあって
どうしてだか、一度そうなったら行かないことには、他に代えが効かない。
導かれる景色というのが予め脳裏にある。
その場所に行った時は、世界が開けると同時に
自ら閉じて行くことを厭わない矛盾のような気持ちを抱える。
できるものならそこで暮らしたいと思ったこともあった。
実際そう思った場所に暮らしたこともあった。
それでまた何かを求めていま此処に居るが
こうして思い返してみると
結局のところ、いつどこに居ても
此処じゃないどこかへ行きたい気持ちが常にあったような気もする。
子どもの時に見ていた、もう何処にも無い景色を
何時か何処かでまだ見られると期待しているのか
いつか思い浮かべた”其処”が自分の”此処”になると
次の”其処”を”此処”にしようとして
また指先で時間が止まり、行き過ぎていく。
そうやっていたら、あっという間に人生も過ぎてゆくような気もするし
そういう一生行き着かない場所を延々と求めていることが
生きる時間というものなのかと思ったりした。
町田藻映子
この記事について
インスタレーションアーティストの土居大記と、絵描き・ダンサーの町田藻映子によるコラボレーション展示の企画『濡れた地蔵』(@海老原商店)。展示は開催延期となってしまいましたが、展覧会までの間、2人のワークを写真と言葉の綴りでnoteに掲載してゆきます。
この企画のプロフィール記事は➡︎こちら
プロフィール
土居大記 (Hiroki Doi)
学生時建築を学び、卒業設計を機にアーティストになる。”美しいは生ものである”という考えから制作している。
自然現象を素材としてインスタレーションやパフォーマンスを行っている。
常にまわりで起り続けている小さな変化を抽出して振り付けることが作品の主軸にある。それらの空間では気づくことが連鎖する。即興である。ダンサーとの共同制作も行っており、自身も制作の過程で身体表現のメソッドなどを経験している。
主な表現媒体はインスタレーション、パフォーマンス、写真、詩、製本。
HP https://www.hirokidoi.com/
町田藻映子(Moeko Machida)
京都市立芸術大学大学院修了。「生命とは何か、人間とは何か」を主題に、岩石やそれに関わりの深い生物・人の文化に焦点を当てて絵画制作を行う。かねてより、身体を通した主題へのアプローチを重視し、コンテンポラリーダンスと舞踏を学ぶ。『私が石ころを描き続ける理由』についてはこちらにまとめています。
個展「生きる者たちを想う為」(GALLERY TOMO(京都)2019年)、「名前を知らない死者を想う為」(GALLERY b. TOKYO(東京)2019 年)、「MoekoMachida Solo Show」(Marsiglione Art Gallery(イタリア)2017 年)等を開催。「シェル美術賞展2018」( 東京) 入選。「飛鳥アートヴィレッジ2017」( 奈良県明日香村) 参加。
HP https://www.moekomachida.com
Instagram https://www.instagram.com/moeko_machida/
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©︎ 土居大記・町田藻映子