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ノマド~漂流する高齢労働者たち~
車中泊やソロキャンプが流行っているけど……
いま、車中泊やソロキャンプが流行っているみたいだけど、それを趣味の一つとしてではなく、完全にライフスタイルになっている人たちがいる。それらを密着取材して書かれたのが『ノマド〜漂流する高齢労働者たち〜』という本だ。
漂流する高齢労働者
サブタイトルの『漂流する高齢労働者』というフレーズ。穏やかではない。
アメリカの映画などを見ていると、でっかいトレーラーハウスなどが出てくるけど、あそこまで巨大でない車に寝泊まりをしてアルバイトで生計を立てている人たちがいるのだ。しかも六十才を過ぎているような人たちが。
住民税がかからない。
ようは生活苦のため、そんなことになっているのだけど、車で寝泊まりすることにはメリットがある。家賃や住宅ローンからは解放されるし、決まった住所がないので住民税を払う必要がない。
冬は暖かい所、夏は涼しいところに移動し、気ままな生活。同じような境遇のかけがえのない仲間たちと知り合うことができる。みんな犬や猫を飼ってたりして楽しそうだ。
バイトが肉体的にきつい。
とはいえ、話を聞いているとバイトそのものがきつそうなんです。
シーズン時の農作物の出荷なんて、やったことがなくても重労働なのは想像できるし、キャンプ場にしても然り。
この本、働き先としてアマゾンの倉庫がやたらと出てくるんですが、商品をよみとるスキャナーの使いすぎて腱鞘炎になったり、コンクリートの倉庫を毎勤務20キロ近く歩くため、足腰がボロボロになったりします。
僕も若い頃、グッドウィルという日雇い派遣会社に登録していたので、短期バイトのキツさは経験しています。20代の若者でさえ、しんどいのですから高齢者なんてなおさらのことでしょう。雇用する側は使い潰す気でいるのがよくわかります。
夢のアースシップ
リンダという60半ばの女性のエピソードがとくに描かれているのですが、リンダには夢があります。それは自分のアースシップを造ること。
アースシップというのは廃材で造ったエコハウスのことで、雨水の循環システムをそなえたり、地中にパイプを敷いて冷暖房なしでも快適に過ごせるようにしてあります。
リンダはアースシップを建てるために、砂漠に土地を買うのですが、国境付近のそのあたりは麻薬の密輸人がうろついていたり、おそろしく猛暑だったり、ガラガラヘビがいたり、鉄砲水が吹きでそうだったりと前途多難な感じがします。それでもリンダの目はキラキラしています。
この本ではアースシップがどうなったかの顛末までは描かれていないので非常に気になります。
アメリカの話ですが、他人事には思えない。
老後くらいは引退して悠々自適にすごしたいけど、年金受給年齢は引き上げられ、定年後もアルバイトを余儀なくされそうだ。そんなときに笑って過ごせればいいのですが、根がネガティブなので暗い気分になりました。
映画化されていますね。
まだ渋谷でギリギリやってますね。本が出てから数年経っているけど、リンダのアースシップはどうなったのか? 気になります。