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私の好きな本を7日間で振り返る。2
二日目 「サキャ格言集」
読書好きの人は座右の本というものを持っていることがあります。
私の座右の本は今回ご紹介いたします「サキャ格言集」です。
著者のサキャ・パンディタは七世紀の中ごろに活躍した、チベットの宗教指導者です。
当時世界最強とまで言われたモンゴルと、チベットの間の外交において非常に大きな役割を果たしました。
なんと彼は祖国の取り決めとは言え、63歳にしてチベットを代表する人物として、
モンゴル宮廷に入ったのです。そして70歳でこの世を去るまで、チベットの保全に努めたそうです。
日本で彼の残した本を読むことは難しいかもしれません。
知名度もほとんどありません。
しかし、彼の残した言葉の数々は令和の世においても、いまだにストレートで、力強い教訓を与えてくれます。
この本とは、人との待ち合わせのときに出会いました。いまだによく覚えております。
それは私が高校2年生の頃でした。
たくさん並んでいる本の中から、はっと、この本が目に入りました。
手に取って中身を確認するまでに時間はかかりませんでした。
これほど明快な箴言集は知らないぞ、と興奮したことを覚えています。
あとになって、私に本を読むことの楽しさを教えてくれた先生に、上記の話を致しました。
すると、先生は微笑されて、
「そういうときは、本が呼んでるんよ。こっちこっちって。」
と嬉しそうにおっしゃいました。
そうか、本が呼んでいるのか、と妙に納得した覚えがあります。
この企画のおかげで、先生を思い出す良い機会を得ました。
先生はもう鬼籍に入られております。
こうして先生の思い出をここに書くこともまた、一つの供養なのではないか、と思います。
そして今、
令和の世において、チベット屈指の宗教指導者と、昭和生まれの恩師と、平成生まれの私がつながったのです。
ちょっとした奇跡ですよね。
だから読書というのは素晴らしいのです。
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温和は温和を征し
温和は粗悪をも征する。
温和はすべてを達成するので
温和は鋭いと賢者は言う。
誰々は私の敵だとか
誰々は私に不親切だと
不親切でもそうは言うな。
言えばそれが仲違いとなる。
(本文より)
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