[NUProtein 南 #002] トム・シーベル氏、ピーフォン・チェン氏のこと
(ペースを考えると、イークラウドに記載頂いている事項について先に記載するのがよいと思い、第1回目ノートから少し飛びますが、イークラウドの案件情報と併せてお読み頂ければと思います。写真は、US101沿いから見えた当時のシーベルシステムズ社本社です。)
松下電器入社後は、枚方の研修所と電気屋さんでの研修含め1985年当時は半年程度の新人研修がありました。
バイオテクノロジーで言う、形質転換、すなわち、外来遺伝子(DNA)を導入して新しい形態・機能を獲得する時期です。「松下電器のDNAが」という言い方がされますが、まさにこの時期がその形質転換の始まりだといまさらながら思います。
(さて、ここまでが1985年ですが、少々冒頭書かせて頂いた観点から、少し飛びます。)
1988年に、当時の文書整形言語TeX(テフと読みます)をビジュアルにするVorTexをカリフォルニア大学バークレー校で研究していた南方さんが日本に戻られ、研究室のハリソン教授とピーフォン・チェン博士がベンチャー企業を立ち上げ、そのベンチャー会社と一緒に共同研究開発をやることとなりました。そのベンチャー企業の名称自体は、Chen & Harrison Internatinal, Cayenne, Gain と3度ほど変わったのですが、1989年に米国パロアルトでワークステーション用マルチメディア文書環境・ソフトウェアの開発が始まりました。
スクリプト言語でシステムが記述され、簡易に機能拡張可能なインタラクティブマルチメディア文書がワークステーション上で作れる、という当時としては画期的なものでした。
アップルのHyperTalkの後、サンマイクロシステムズのJava発表前です。技術と経営陣もかなりお金をかけてリクルートしていました。例えば、スクリプト言語ベースとなるので、当時有名なLispベースのエディター・環境の gosling emacsの開発者として有名なゴスリン氏をリクルートしようとしましたが、不発に終わりました(その後ゴスリン氏は、サン・マイクロシステムズ社でJavaを開発した、というおちがあります)。
さて、CEOも当初はピーフォンが行っていましたが、社員が20名くらいになった頃に、オラクルの部長であった、トーマス・シーベルがCEOとなり、ピーフォンは会長となりました。
シーベル氏は、ヘッドハンターにリクルートされるだけあって、恐ろしくシャープ、博覧強記、しかも、やたらフレンドリーでオーラ漂う人でした。
会社の隅から隅まで、財務から技術まで把握しており、シーベル氏はこの点でも群を抜いていました。
CTOは、ゼロックスのパロアルト研究所(PARC)出身のジョン・ダウソン氏が務めており、シーベル氏とダウソン氏の二人で会社をリードしていました。
Gain社自体は、起業から5年後にSybase社に買収されました。その契機になったのは、実は松下のエンジニア陣が内々に開発していたDBとの連携機能(いまでいうSQL連携)です。この機能が会長のチェン氏とシーベル氏に認められ、Gain社として正式の開発項目に取り入れました。チェン氏が、『この機能をSybase社に見せてくれ』と、我々の小部屋に来たのを思い出します。このDBレポート機能がSybase社の目に留まり、Gain社のバイアウトが成立しました。
その後、シーベル氏はストックオプションの売却益を種銭に、レッドウッドシティーで、シーベルシステム社を立ち上げました。私の理解の限り、CRM(Customer Relation Mangement) という言葉を作ったのは、シーベル氏だと思います。
余談ですが、1993年にIBMのCEOに就任したガースナー氏が著した「巨象も踊る」の中で、ガースナー氏とシーベル氏が2社の契約書が1週間以内にまとまるかどうかでワインを賭けた話がのっています。
その後は、案件情報にもあるように、シーベルシステム社はオラクルに60億ドルで売却されました。シーベル氏はその際に30%程度株を保有していたと記憶しています。
また、会長だったチェン氏はその後ブロードビジョン社を設立、こちらも1996年にナスダック上場を果たしています。
更に、CTOだったドーソン氏は、1997年元松下貿易株式会社出身の方とシリコンバレーでゼンテック社を共同創業、日本では携帯電話の組込みJavaの互換性検証等の事業から展開し、2001年ヘラクレス上場を果たしました。残念ながらゼンテックはその後2009年民事再生を申請されました。
この頃には、松下幸之助さんは既にレジエンドでしたが、シーベル氏だけでなく、チェン氏含めシリアルアントレプレナーの生きざまと、人間の一生でここまでできるんだということを、眼前で、まざまざと見せつけられたお二人でした。
少しまとまりないですが、大晦日の買い物に付き合わないといけないので本日はこのあたりで失礼します。
次回は、少し私の特許に関する価値観に関わるトピックを書きたいと思います。
今回も拙文読んでいただきありがとうございました。
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