日記:麻痺する思考と文字列

金曜の夜になると頭はそれなりに疲れていて、仕事が週5日というのはなかなかよく考えられているのだなあという気がする。ちょうど疲れ切ったところで休みがくる。昨日が偶然そうだっただけで、もちろん週半ばで疲労困憊のときもあるし、逆に金曜日になっても元気が有り余っていることもあるので、それは本当にたまたまではあるのだろうけれど。自分はそういう偶然性になんらかの意味を見出してしまいがちなので、もう少し冷静に世界を俯瞰していられるように努めていたい。

昨日は疲れ切った頭で帰りの電車に揺られながら、本を読んでも頭に入ってこないし、音楽を聞いていても耳をすり抜けていくような気がするしで何をしたらいいのかわからなかった。しかし眠りに落ちるほどに身体が疲れているわけでもない。脳の回路が焼き付いてしまったように動かないが、それ以外の機能は特に問題ないように思えるので、意識はあるのに何もすることができない不思議な麻酔状態に落ちているような感覚だった。


ふと、最近よく目にする「Wordle」というゲームの存在を思い出した。Twitterのタイムラインで謎の四角とともにシェアされる以外の情報をついぞ知らないままだったのだが、あえて情報を伏せられることでかえってこちらの興味が惹起されるという、恐らくはマーケティング上なんらかの名称をもって呼ばれているであろう手法にまんまと嵌ってしまった私は、Google検索に文字列を打ち込んで最初に出てきたページをタップする。

興味のある方は以下の日記を読むことなく一度やってみてください。試行するプロセスも楽しかったりするやつだと思うので……。




ページを開くと、英語で説明が書かれている。よくわからなかったので理解もそぞろに実際のプレイ画面へと進んでいく。どうやらな5文字の英単語を6回の試行回数の中で当てられるかということを競うゲームであるらしい。問題はおそらく全員に共通で毎日変わり、シェアすることで優越感に浸ったり相手の手腕に感動したりするのだろう。そしてそれがある程度情報を伏せられた状態でシェアされるので、「いま流行りの謎の知的遊戯の意味を理解し参加している」というラベルを持つこともでき、さらに他者を巻き込んで広まっていく。もし情報が拡散する意思を持つのだとしたら、このミームはなかなか狡猾な生存戦略を持っているということになる。そしてその手法をマーケティングと呼んだりするのだろう。多分、こういう斜に構えた分析も一周遅れたものだという気もする。

問題の切り替わりは0時であるらしいので、その直前と直後で2回挑むことができた。英単語を当てるといっても完全にノーヒントというわけではなくて、打ち込んだアルファベットが単語に使用されていなければ黒色で、使用されているが位置が違う場合は黄色で、位置も合っている場合は緑色で表示される。そのヒントをもとにして正解へと迫っていく。最初のうちは、緑色になった単語はそのまま固定で使っていたのだが、途中で文字を減らしていく戦略が存在することに気づいた。単純に考えればアルファベットは26文字で、5文字のアルファベットを6回打ち込むことができるのだから、重複なしで単語を打っていくことができれば、最終的に残った単語を並び替えるだけでよい。

だがそれも簡単にはいかない。入力可能なのは存在する英単語のみで、意味を持たないランダムな文字列は入力不可だからだ。例えば「world」と入力することはできるが、「dlrow」とは入力できない。そんな英単語は(おそらく)存在しないからだ。

なので、使用可能な文字を減らしていく戦略を取るのだとすれば、1回ごとに使われるアルファベットが5文字減った状態で構成できる英単語を考えていかなければならない。これがかなり難しい。そもそも英語なんて学生の頃に授業や単位のために学んだことしかなく、そうして身についた知識はもうとっくに錆びついている。ましてや5文字という制限がある中で脳裏に浮かんでくる英単語というのはかなり限られてくる。なのでどうしても、最後の方は当てずっぽうになってしまう。残った文字で発音が通りそうな順番で並べ、あとは子音を適当に入れ替えていく。通ったらラッキー。とりあえずは、6回の試行回数を使ってなんとか単語を当てるための戦略で挑戦していた。これが最速を狙うのであれば、緑や黄色に変わった文字をちゃんと使用しつつ単語を考えていかなければならないので、さらに難しいのだと思う。


ちなみに、最近「Wordle」の日本語版として「ことのはたんご」というゲームを作ってくれた方がいるらしく、そちらも遊んでみた。

こちらは、五十音に濁点や半濁点の文字、促音や拗音も含んだ80文字を組み合わせて、10回の試行回数で5文字の単語を当てなければならない。冷静に考えれば、使用文字に重複のない単語を10個考えたとしても、80文字には届かない。加えて、日本語はそれぞれの文字におおかた母音を含んでいるから、使用する単語の予想もつきづらい。それでも使用頻度の低い文字はあるから、それらを選択肢から外した上で単語を考えていったりするのだが、しかし文字が重複しない単語を考えるのはかなり難しい。どうしても1、2文字の重複が起きてしまう。無論、最後には当てにいかなければならないので、いつまでも文字を減らす戦略をとり続けるわけにもいかないのだが。

そうやって文字を重複しないように言葉を考えていくと、いろはうたのようないわゆるパングラムを考える人の凄まじさを思い知る。

そしてそのことを理解した上で『めだかボックス』の消去しりとりを読み返すと、改めてとんでもないことをしていたのだなということに感嘆してしまう。

いや、改めて読み返してもなんでこんなことができたのか意味がわからないな……。完結後に刊行されたガイドブックで、原作者は「『めだかボックス』で一番大変だったのはこのしりとり」と述べているのだが、週刊連載でそれをやろうと思うのも実際に成し遂げてしまうのもなかなか常軌を逸している。


そんなこんなでゲームに夢中になっていたらいつの間にか疲れも忘れていた。一番疲れているのが金曜の夜なら、一番楽しいのも金曜の夜なのだ(なぜなら最も自由な時間だから)。ほかにもニコニコのプレミアム会員になると電子書籍販売サイトのBOOK  WALKERで70%OFFのクーポンがもらえるとかで、買いたいものを考えていたらいつの間にか夜も更けていた。のでこの日記を翌朝に書いている。ポケモンをやらなければ……。

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