『線は僕を描く』砥上裕將
🖌あらすじ🖌
「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」
家族を失い真っ白い悲しみのなかにいた青山霜介は、バイト先の展示会場で面白い老人と出会う。その人こそ水墨画の巨匠・篠田湖山だった。なぜか湖山に気に入られ、霜介は一方的に内弟子にされてしまう。それに反発する湖山の孫娘・千瑛は、一年後「湖山賞」で霜介と勝負すると宣言。まったくの素人の霜介は、困惑しながらも水墨の道へ踏み出すことになる。第59回メフィスト賞受賞作。─Amazon商品説明より
🖌感想🖌
生きる、ってなに?
なぜ僕だけ生きているの…?
誰しもが触れられなかった霜介の心の中に、水墨が砂漠に湧き出た水のように柔らかく染み込んでいく…。
そうして孤独と融和しながら書き連ねた幾千もの線や花たちは、霜介に「生きろ」と強く背中を押すとともに、湖山や千瑛をはじめ霜介を取り巻く人々との意思の疎通を果たします。
もはやそこに言葉などは不要。
水墨画を通じて命を描くその胸は熱く、時に孤高であり、水墨画というひとつの芸術に親しみを感じました。