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降誕劇『その夜ベツレヘムで』(オリジナル新作)

登場人物

羊飼いA
羊飼いB
ナレーター

台本

  • 一幕もの。礼拝堂をベツレヘムの町に見立てている。

ナレーション:
その夜、羊飼いたちは野原で野宿しながら羊たちの番をしていました。
すると突然、天使たちが現れて告げたのです。
「今日、ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになりました。この方こそ主、メシアです」
そこで羊飼いたちは大急ぎで、ダビデの町と呼ばれるベツレヘムに向かいました。

(羊飼いAと羊飼いB、礼拝堂に駆け込んでくる)

羊飼いA:(息を切らせながら)ベツレヘムに着いたな。

羊飼いB:(息を切らせながら)でも、どうやって救い主を見つけるんだ?天使たち「ダビデの町で」としか、教えてくれなかったじゃん。

羊飼いA:ベツレヘムは「いと小さき町」だ。聞いて回ればすぐ見つかるさ。

羊飼いB:じゃあ、手分けして探そう。

(羊飼いA、上手へ。羊飼いB、下手へ)
※上手(かみて):会衆席から見て講壇右側。
※下手(しもて):会衆席から見て講壇左側。

羊飼いA:(上手そでに向かって)ごめんください。あ、ご主人、夜分すみません。この町で今夜、赤ちゃんが生まれた家を探してるんですが。知りません?そうですか。あ、奥様、何かご存じないですか?(以下、羊飼いBのセリフが進むまでアドリブで無声で、上手そでにいる人と会話する演技)

羊飼いB:(下手そでにむかって)すみませーん。この町で救い主が生まれたって聞いて来たんですが。は?いや、救い主。おばあちゃん、耳が遠いのかな。す・く・い・ぬ・し!(以下、羊飼いBが話しかけるまでアドリブで下手そでにむかって話しかけ続ける(無声ではない))

羊飼いA:(上手そでにむかって)そうですか。行ってみます。ありがとうございました。(羊飼いBのところに行って)おい羊飼いB、むこうの家畜小屋だって。

羊飼いB:(羊飼いAに向き直って)待てよ羊飼いA、救い主が家畜小屋では生まれないだろ。

羊飼いA:確かめりゃいいんだよ、行こうぜ。

(羊飼いB、羊飼いA、礼拝堂から退場)

ナレーション:しばらくお待ちください(少し間を置く)

ナレーション:しばらくお待ちください(少し間を置く)

ナレーション:しばらくお待ちください(少し間を置く)

(羊飼いA、羊飼いB、礼拝堂に入ってくる。以下、ゆっくり講壇まで歩きながら会話。二人ともニマニマ)

羊飼いA:救い主、いたな。

羊飼いB:ひとめで救い主だってわかったな。

羊飼いA:尊いな。

羊飼いB:尊すぎて死ぬ。

羊飼いA:マジ、神だな。

羊飼いB:救い主しか勝たんな。

羊飼いA:ベツレヘムは「いと小さきもの」とか言うけどな。

羊飼いB:けして一番小さくはないな。

羊飼いA:これからは「救い主が生まれた町」て呼ばれるんだろうな。

羊飼いB:みんなにも知らせようぜ。

羊飼いA:そうだな。

(羊飼いA、上手そでへ。羊飼いB、下手そでへ)

羊飼いA:(上手そでに向かって)ごめんください。あ、先ほどはどうも。あの、教えてくださった家畜小屋で救い主がお生まれでした。ええ、救い主です。いや、「不思議な話だね」とか言ってる場合じゃなくて、実は天使のお告げで(以下、羊飼いBのセリフが進むまでアドリブで上手そでにむかって話しかける)

羊飼いB:(下手そでに向かって)あ、おばあちゃん、救い主がお生まれになったよ。す・く・い・ぬ・し!今日!ダビデの町で!このベツレヘムで!救い主が生まれたの!(羊飼いAが話しかけるまでアドリブで続ける)

羊飼いA:(羊飼いBのところに行って)おい羊飼いB、ダメだこれ。誰も信じないぜ。

羊飼いB:(羊飼いAに向き直って)なんでだろうな、羊飼いA。みんなが待ってた救い主なのにな。

羊飼いA:ところで、大事なこと忘れてるって気付いてる?

羊飼いB:え?なんかあったっけ?

羊飼いA:俺たちの羊は?

羊飼いB:やべぇ、忘れてたぁ!

(羊飼いA、羊飼いB、大慌てで走って礼拝堂から退場)

ナレーション:
羊飼いたちは、救い主がお生まれになったと聞いて、すぐに町に会いに行きました。
ベツレヘムの人たちは、すぐそばで救い主がお生まれになったと聞いても、誰も会いにいきませんでした。
みなさんは、救い主に会いに行くほうの人ですか?会いにいかないほうの人ですか?
(おしまい)

本作品に関するノート

制作

2023年12月の作品。
ふと思いつきで(あるいは「ふってきて」)執筆しました。その時点では特に使い道は考えていなかったのですが。

私の教会では礼拝中に、牧師のメッセージとは別に、教会学校奉仕者などによる「聖書のお話」の枠があり、たまたま2023年12月24日の日曜日の「聖書のお話」の担当だったので、そこで本作品を使用することになりました。

演出等

見てのとおり、ややコメディ寄りですね。
特に最後の、羊たちのことを忘れていたくだりは、コントふうでよいと思います。

台本中で「羊飼いA」「羊飼いB」と呼び合っているのは、配役の実名で呼び合ってもよいでしょう。
ナレーターは、講壇など礼拝で司会者が立つ立ち位置でもよいですし、顔を見せずにマイクをとおして「声の出演」でも可。

著作権等

本作品は著作権を放棄していませんが、次の場合をのぞき無断で自由に使っていただくことができます。

  • 本作品の他のメディアやWebサイトなどへの転載、あるいはその類似行為の場合。(お断りすることはないと思いますが把握しておきたいため事前にご連絡ください)

  • キリスト教、ユダヤ教、イスラエル、ユダヤ、ユダヤ人への批判、揶揄、攻撃などを目的とする、あるいは目的としているという印象を与える場合(お断りすることはできないと思いますが把握しておきたいため事前にご連絡ください)

上記の場合をのぞき、本作品の使用にあたってご連絡などは特に必要ありません。
本作品を使用する際、必要に応じて加工していただいてかまいませんし、その際も許可をとる必要は特にありません。
でも「使いました」などコメントしてくださるとうれしいですし、動画などに使用する際は「原作」「原案」などとして作者名をクレジットしてくださると光栄ですが、必須ではありません。

作者名または原案者名が必要な場合は、次のいずれかを使用してください。
・坂井信生
・布屋忠次郎
・布忠

このnoteページ冒頭の画像について

アーニョロ・ブロンズィーノ『羊飼いの礼拝』または『羊飼いたちの礼拝』所蔵:ハンガリー国立美術館
制作:1539-1540年

アーニョロ・ブロンズィーノ『羊飼いの礼拝』まはた『羊飼いたちの礼拝』

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