水ぼうそうで白い塗り薬が処方されませんでしたが大丈夫でしょうか?
水ぼうそう(水痘)は一般的にもよく知られた子どもの病気で, 結構な人が子どものころにかかったことがあるのではないでしょうか. 私もその1人です.
ただ近年は水ぼうそうに対する予防接種が2014年に定期接種になってから接種率が非常に高くなったため, 小さいお子さんがかかることは以前より少なくなりました.
さて水ぼうそうと診断されて薬を処方された時にみかけることがある白い塗り薬があります.
その薬はカチリという名前で, 以前はほぼ定番化され使用されていました.
私もかすかな記憶の中では, 自分がかかったときに塗られていたように思います.
ところが最近は以前と比べて処方されないこともあるかもしれません.
ただ医療機関によっては処方されることもあるため, 周りで処方されたりする人を知っていると「自分の子どもには処方されなかったけど大丈夫?」となるかもしれません.
結論から言えば「処方されなくても問題なさそう」と考えて良いと思われます.
カチリは正式には「フェノール・亜鉛華リニメント」と呼ばれる薬です.
インタビューフォームの情報によると土肥慶蔵氏の創案による処方と言われているようです.
(*土肥慶蔵氏は日本皮膚科学会を創設したことで知られる東京帝国大学医科大学教授)
古くから使われていて, とりあえず「水ぼうそうにはカチリ」というイメージも定着していたようで, 私も小児科医になったころに「水ぼうそうにはカチリ」と教わりました記憶があります.
ただ古くから使用されているにも関わらず, 効果や安全性に関係する情報はほぼありません.
この1つの要因としては「外国公定書には収載されていない」, つまり海外では基本的に用いられていない, ということが挙げられると思います.
海外で基本的には使用されていないので研究も特に行われていないので情報がないのではないでしょうか.
以上から, 現状では「経験的には広く使用されているが, 本当に効果があるかはわからない」状態だと思われます.
したがって効果があることを否定できるわけでもないので, 処方されることに問題があるとは言えません.
その妥当性を判断するには情報が足りない状況です.
ただし近年はChoosing Wiselyのように, 過剰な医療を避けようとする考え方が一般的になりつつあると思います.
また水ぼうそうは通常自然治癒するため, 重症化のリスクが低い場合には明らかに効果がある抗ウイルス薬も一般的には必要とせず処方されないことも多いでしょう.
そういった点も考慮すれば, 処方しないという選択肢も十分妥当だと思われます.
あらためてまとめると, 処方されなくても問題なさそう, というのが結論かな, と考えています.