【 #既存漢字グランプリ 外伝】 不選の名漢字
既存漢字グランプリ開催
先日急に謎の催し、既存漢字グランプリが開かれ、無事に募集期間を終えました。
好きな漢字とか、かっこいい漢字とかをいっぱい募集するぜ!創作漢字はNGな!とそういう企画です。
現在は3名の選評員により、日夜白熱の議論が繰り広げられていることでしょう。ゆっくりと結果を待ちたいと思います。
で、もちろん私も参加したわけですが、一人で白熱の議論をする羽目になりました。そう、一人3字までという制限がなされていたからです。少ねぇ!!ヤバい!!好きな漢字リストアップしたら35字になっちゃった!!
泣く泣く3つに絞り、渾身の3字を提出しました。胸を張れる、ベストな選抜ができたと思います。グランプリの座、勝ち取れるといいなぁ。
で、まあ選外の好きな漢字がまだまだいっぱいあるわけですよ。断腸の思いで切り捨てた好きな漢字なので、他の方が投稿してくれていれば安心、「キミ、分かってるね~~!!」つってテンション爆上げ、漢字のメンツも保たれる(?)ってなもんです。
ただ、どうしてもあるんですよ。自分が優先できなかった漢字たちの中に、誰も挙げてないやつが…!
今回はそれの供養記事です。あと誰も挙げてない=選外なので、現在グランプリを決めてる選評員が読んでも影響しないだろう、というのもあります。
※見落としで、誰かが挙げてるやつだったらごめん!
ではいってみよう!
不選の名漢字
「巡」
これ本当に入れたかった!!
まず「しんにょう」がかなり好きな部首なんですよ。ダイナミックで、奥行きを感じられる。そして書く際は最後に、グッ、グーッ、シャッ!ってなわけですね。この快感たるやもうね。
でこれすげぇ珍しいパーツを乗っけてます。「災」の上とかにもありますが、この「くくく」の部分、普通割と脇役っぽいんですよ。主題じゃない。
ところが「巡」は別。「しんにょう」が脇役に徹し、「くくく」を主題に押し上げてくれています。
矢印っぽさが漢字に収まってるのも好きですね。矢印は「巡」の動き続けるイメージにぴったりです。かつ、記号感がありながらもちゃんと漢字である塩梅がね、いいんですよ。
「祟」
これいないんだなぁ。
「出」、「示」どちらも平和な印象の漢字ですが、上下に重ねるだけでとんでもない禍々しさ。それでいて左右ほぼ対象なので、こう、魔法陣ぽさというか、呪いが秘められた模様のようにも見えます。意味が直感で分かるのは優れた漢字の証拠(個人差はあると思う)。
「出」の攻撃性が引き出されてるのかもしれませんね。よく見たらトゲゾーみたいに上トゲトゲだもんね。
「卒」
これは思い出補正もあるかもしれない。卒業式とかの。
でもさ、旅立ちや別れを表す漢字がさ、画数少ないの良くない…?メタルグレイモンまで巨大化してた相棒がさ、ウォーグレイモンになって小さくなって最強みたいなやつを、「卒」には感じます。
上に寄ってて、間に斜め線しかない脆さも、こう、憂いとか儚さが垣間見えていいよね。
「風」
小学低学年の漢字は粒揃いですが、「風」はかっこよさが抜きんでてます。絶対にさわやか系のイケメンだもんな。俺には見えるぞ。
末広がりのスタイルと、中の線の配置の均等さが、抜群の安定感を生み出しています。本当に風通し良さそう。
「ノ」と「虫」の下の線で右上がりの平行四辺形が出来てるのも好きなところ。風らしい流れを感じさせます。
「雫」
これも美しいよね~。
多分会意文字で、『「下」に垂れる「雨」粒』ってことだと思うんです。でも偶然にも、まるで象形文字のように「下」の点が雫のようになってるんですよ。雨を受ける葉っぱの先の水滴が、ありありと浮かんできます。
静かで落ち着いた雰囲気が良く出てますよね。小雨で、シンとしたような、ちょっとした神秘性もあるように思います。
「葬」
やめて!厨二って言わないで!!お前も本当はかっこいいって思ってんだろ!?
「死」を内に収める単純な構成なんですが、「葬」は華がありますよね。亡くなった存在をせめて丁寧に着飾って、黄泉の国への門出を応援する、華のある死。「死」が入っているのに、文字を受け入れやすいんですよね。
香水は、人の体臭と混ざることで一番いい香りになるように調整していると言いますが、「葬」も同じ。死を隠さずに正面から向き合って、組み込んできれいな形を成しています。
「爽」
ハツラツ!キラキラ!まぶしさの限りを尽くす4連の「メ」がもうバッチバチです。そりゃ一文字で商品名にもなるわな。
下部に広げる2本の足も、堂々とした、包み隠さないイメージに一役買っています。ジメジメなんかしないぜ。もうスカーンと足広げてね、大地の風を浴びたらいいんです。そういう字です。
「栃」
栃木県にお住まいの方、「栃」があるよ!!
これめっちゃかっこよくない?俺は羨ましいよ。住所書くたびこの文字書けるの強すぎる。
特徴的なのはやはり右側。二重のハライを内側に入れてさ、更なる外側も内側にハネよ。粋ですよね。そりゃあ飾らない木編が似合いますよ。
なんか江戸っ子気質なカラッとした印象があります。正に粋。
「剥」
いや絶妙。絶妙な気味の悪さ。うすら寒い冷や汗のバランスです。完璧だ…。生かさず殺さずを肌で感じる形です。あっぱれ。
パーツ単位でみるとそんな変なことはしてないんですけどね。なんだろうな。左上の「ヨ」がいいのかな。「祟」もそうでしたが、組み合わせの妙を思わせる不思議な字です。
「班」
これ意味の割に妙にかっこよくて好きなんだよな。
締まった漢字の多い、「縦三分割系」の先鋒のような存在ですが、中でもアウトローな感じがあって、書くのが好きな字でした。
構造はほぼ左右対称でありながら、右側「リ王」部分のはまってないようではまっている造形は結構唯一無二な気がします。離散しそうで離散しない。スレスレのバランスですよね。いいな…。
漢字たちに愛を込めて
ということで「不選の名漢字」、10字紹介してきました。
当然これらは入賞しないわけですが、紹介せずにはいられなかった好きな漢字たちです。毎日使っている言語だからさ、知らず知らずのうちに愛着も湧くというもの。あなたにもこんな一字や二字、あるのではないでしょうか。いや、あるから盛り上がったんですけどね。
今回の「既存漢字グランプリ」、かく言う自分も「内なる漢字への情熱」に気づけたのが本当に良かったです。こんなに漢字好きで、3字に絞るだけでとんでもなく悩むとは思わなかったな。ポンポン思い浮かぶのよ好きな字が。
さて、締めのようなあとがきになってしまいましたが、「既存漢字グランプリ」結果発表はこれから!
何が選ばれるか楽しみにしたいと思います。