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page12 亡骸

ベッドで虫が死んでいた。小さな小さな虫だった。その小さく丸い体には、三角の黒い羽が一組ついていた。飛ぶことができる虫だった。しかし人間の血を吸って生きる種類ではなかった。また、人間の残飯を食って生きる種類でもなかった。虫はベッドで羽を広げて死んでいた。それはこの虫が、人間の夢を食べている最中に死んだことを示唆していた。世の中には、人間の夢を糧として生きている虫がいる。それは人間が寝静まる夜になると現れる。樹木の葉の影や、テレビや冷蔵庫の裏から這いだしてきて、ふわふわと飛び立つ。まるで太陽を浴びた雪のように輝きながら、人間の耳や鼻や口から漏れてくる夢の滓を求めて、虫は一晩中飛んでいる。夢の滓は人間の目で見ることはできない。それは、夢の滓が色も形も持たない靄のようなものだからだ。匂いもないから、多くの人間は寝ている間に夢の滓が漏れ出ていることさえ知らない。ところが虫はこれを察知する。一説によれば、虫は夢の滓に残っているビジュアルを見ることができるのだそうだ。朝起きて、夢を見たという認識があるにも関わらず夢の内容をまったく思い出せないのは、虫に夢のビジュアルを食われてしまっているからだという。
ベッドで虫が死んでいた。小さな小さな虫だった。虫は悪い夢を食って死んだのだ。

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小説の一部を切り抜いてみれば、想像力がムラムラします。

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