![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/86455007/rectangle_large_type_2_cc28c0e038ecd09415f9c3799a4b5ae9.png?width=1200)
page8 スナック「雨宿り」にて
「止まない雨はないって言うじゃない?」
ママは細いタバコに火をつけ、ゆっくりと吸ってから続けた。
「だけど私は好きよ。雨粒が屋根を打つ音とか、濡れたアスファルトの匂いとか」
僕は続きを待ったが、どうやら彼女は言いたいことをすっかり言葉にし終えたらしい。
「そうだね、雨だって悪くない」
そのときカウンターの端に置かれたコードレスフォンが鳴った。僕の返答は、電話が彼女を呼ぶ電子音に混ざり、汗をかいたハイボールのグラスを越えることなく落ちていった。僕はふと考えた。言葉が地面に落ちるときは、どんな音がするのだろう。「はい、雨宿り。あら! 蛙さん、お久しぶり! 空いてるわよ」受話器の向こうでは、空席を確かめる酔客の声に混じって、雨が降り始めていた。
(小説『一粒の言葉』より)
ここから先は
0字
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/107988876/profile_2bdee6155d094d8e6264029134d813bc.jpg?fit=bounds&format=jpeg&quality=85&width=330)
神出鬼没的不定期で更新中の『胃の中に蛙』が、まさかの有料コンテンツでスタートします。といいつつ、無料で読めます。優しいね、蛙さん!
ブログ→http://inonakanikawazu.blog103.fc2.com/
ツイッター→https://twitter.com/kawazu_inonaka
切り抜き小説
100円
小説の一部を切り抜いてみれば、想像力がムラムラします。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?