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page13 たとえば残暑の厳しい秋に

ナツはベッドから抜け出すと洗面所へ向かい、静かに昨夜のアルコールを吐いた。水分ばかりが三回の吐き気で外に出た。固形物が出てくる可能性だってあったのだから、トイレで吐くべきだったと後から考えたが、寝起きに因数分解をするような明晰さを持ち合わせていたのなら、朝から吐くことはなかっただろうし、そもそも昨夜に飲み過ぎることもなかっただろう。「アキはあのあと帰れたのかな」。ナツは口を丁寧にゆすいでから寝室に戻り、ベッドを見下ろした。見覚えのない小柄な男が、いびきをかいて裸で寝ていた。ナツは思わず舌打ちをした。
(小説『ナツとアキ』より)

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小説の一部を切り抜いてみれば、想像力がムラムラします。

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