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切り抜き小説

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小説の一部を切り抜いてみれば、想像力がムラムラします。
神出鬼没的不定期で更新中の『胃の中に蛙』が、まさかの有料コンテンツでスタートします。といいつつ、無…
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#切り抜き小説

page14 カラアゲ

わけもなく精神を参らせてしまうことが時々(あるいは頻繁に)あって、そういうときに僕は揚げ…

ナナバン
2年前

page13 たとえば残暑の厳しい秋に

ナツはベッドから抜け出すと洗面所へ向かい、静かに昨夜のアルコールを吐いた。水分ばかりが三…

ナナバン
2年前

page12 亡骸

ベッドで虫が死んでいた。小さな小さな虫だった。その小さく丸い体には、三角の黒い羽が一組つ…

ナナバン
2年前
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page11 童貞男子は色白美少女の夢を見るか

三回連続で隣の席になった。好きですと告白をした。「やめてください」と彼女は言った。 (小…

ナナバン
2年前

page10 私の仕事ではない

彼の名前はマツザキといった。どういう漢字を書くのかは知らない。下の名前も知らない。周りが…

ナナバン
2年前
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page9 向き不向き

結婚の申し込みは受け入れられなかった。男には十分な蓄えと貧しくはない生活を維持するだけの…

ナナバン
2年前

page8 スナック「雨宿り」にて

「止まない雨はないって言うじゃない?」 ママは細いタバコに火をつけ、ゆっくりと吸ってから続けた。 「だけど私は好きよ。雨粒が屋根を打つ音とか、濡れたアスファルトの匂いとか」 僕は続きを待ったが、どうやら彼女は言いたいことをすっかり言葉にし終えたらしい。 「そうだね、雨だって悪くない」 そのときカウンターの端に置かれたコードレスフォンが鳴った。僕の返答は、電話が彼女を呼ぶ電子音に混ざり、汗をかいたハイボールのグラスを越えることなく落ちていった。僕はふと考えた。言葉が地面に落ち

page7 うどん

その本はおもしろいのか、と彼は聞いた。おもしろいとは一体、どういう意味だろう。彼の興味は…

ナナバン
2年前

page6 聞き上手と話し上手

ヤモリさんがニヤニヤしながら歩いていた。100円でも拾ったのだろうか。 「やあやあ、蛙さん。…

ナナバン
2年前

page5 カレー味のカレー

「本当にいいの?」と彼女は尋ねた。僕は4つに割ったカレールゥのひとつをお玉に載せ、鍋の中…

ナナバン
2年前

page4 トマトは赤い

「トマトって赤いじゃない?」 「赤いね」 「だけどさ、私が見ているトマトの赤と、あなたが見…

ナナバン
2年前
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page3 不眠

最近よく眠れないんだと言ってヤモリさんは仕事中によく眠っている。眠れることはいいことだ。

ナナバン
2年前

page2 彼女の嫌いなもの

「肉屋のコロッケって言えばおいしそうに思う?」 そう言って彼女は、僕に別れ話を切り出した…

ナナバン
2年前
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