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切り抜き小説

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小説の一部を切り抜いてみれば、想像力がムラムラします。
神出鬼没的不定期で更新中の『胃の中に蛙』が、まさかの有料コンテンツでスタートします。といいつつ、無…
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#超短編小説

page23 都会の狩人

街の再開発で、一帯は工事が行われている。簡易フェンスに掛けられた垂れ幕には、次のように書…

ナナバン
1年前
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page22 彼は家族

息子は学校から帰るなりキッチンへやってきて私に尋ねた。「ねえ! 昔はタロウも喋れたって本…

ナナバン
1年前
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page21 人情噺

男が蕎麦を手繰ると一匹の江戸っ子が釣れていた。まだ子どもの江戸っ子だった。男は不憫に思い…

ナナバン
1年前

page20 生き残るための犠牲

太古の昔、地球には大型連休がいた。彼らは様々な種に進化を遂げ、支配者として君臨した。なか…

ナナバン
1年前

page19 生態調査

白地に黒い縦縞の入った服を着て、男たちは棒で球を叩き、地面を走り回る。周囲には大勢の人々…

ナナバン
1年前

page18 ドア・トゥ・ドア

満員電車が辛いと彼は言った。だったら車で通勤するかいと彼は聞かれた。車の運転は苦手なんで…

ナナバン
1年前

page17 サングラスは投げられない

高速道路を走っていた。後ろから赤い回転灯の光が見えた。光は徐々に近づいてこちらの後ろに付き、停止を求めた。路肩に寄って止まると、中から二人の男が降りてきた。「ご存知なかったかもしれませんが」と一人が言った。もう一人は無線で何か話していた。「マラソンコースはこの下なんです」。

page16 猿の話

山から猿が下りてきた。そのとき初めて、自分の住む町の山に猿が居ることを知った。猿はコンビ…

ナナバン
1年前

page15 knock knock.

子どもの頃、砂場を掘ることに夢中だった。どこまでもどこまでも掘って、砂場の底を見たいと思…

ナナバン
1年前
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page12 亡骸

ベッドで虫が死んでいた。小さな小さな虫だった。その小さく丸い体には、三角の黒い羽が一組つ…

ナナバン
2年前
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page11 童貞男子は色白美少女の夢を見るか

三回連続で隣の席になった。好きですと告白をした。「やめてください」と彼女は言った。 (小…

ナナバン
2年前

page10 私の仕事ではない

彼の名前はマツザキといった。どういう漢字を書くのかは知らない。下の名前も知らない。周りが…

ナナバン
2年前
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page9 向き不向き

結婚の申し込みは受け入れられなかった。男には十分な蓄えと貧しくはない生活を維持するだけの…

ナナバン
2年前

page8 スナック「雨宿り」にて

「止まない雨はないって言うじゃない?」 ママは細いタバコに火をつけ、ゆっくりと吸ってから続けた。 「だけど私は好きよ。雨粒が屋根を打つ音とか、濡れたアスファルトの匂いとか」 僕は続きを待ったが、どうやら彼女は言いたいことをすっかり言葉にし終えたらしい。 「そうだね、雨だって悪くない」 そのときカウンターの端に置かれたコードレスフォンが鳴った。僕の返答は、電話が彼女を呼ぶ電子音に混ざり、汗をかいたハイボールのグラスを越えることなく落ちていった。僕はふと考えた。言葉が地面に落ち