アムロジピンはラセミ体
アムロジピンはIUPAC名だと
3-Ethyl 5-methyl (4RS)-2-[(2-aminoethoxy)methyl]-4-(2-chlorophenyl)-6-methyl-1,4-dihydropyridine-3,5-dicarboxylate
この名前からわかるとおり、R体とS体の等量混合物、ラセミ体です。
日本薬局方では
「性状 本品は白色~帯黄白色の結晶性の粉末である.
本品はメタノールに溶けやすく,エタノール(99.5)にやや
溶けにくく,水に溶けにくい.
本品のメタノール溶液(1→100)は旋光性を示さない.
融点:約198℃(分解).」とあります。
不斉中心を有するが旋光性を示さない記述があり、ラセミ体だろうとわかります。
さて、異性体をもつ医薬品の多くは、その異性体同士を比較すると効果が異なります。一方の異性体は効果が高く、もう一方は効果が低いなどです。
そのため、効果の高いものと低いものが混ざった混合物(ラセミ体)から効果の高いもののみを取り出すことで、薬効が上ることが予測できます。
例えば、ゾピクロン(アモバン®)からエスゾピクロン(ルネスタ®)などが有名でしょう。
実はアムロジピンも異性体(R体か、S体か)によって効果が異なるといわれています。
S体はL型カルシウムチャネルの遮断作用がありますが、R体のその作用はおよそ1/1000といわれております(PMID:11791006)。
それではR体の方はなにも効果がないのかというと、NOの産生を高めたり、アテローム性動脈硬化症など平滑筋細胞遊走の状態の治療に有用とされています(USP:6080761)。
L型カルシウムチャネル遮断作用は異性体によって異なりますが、
おもしろいことにT型などL型以外のカルシウムチャネルについては異性体に依存しない(R体でもS体でもよい)という研究もあるそうです。
じゃあ、純粋にL型カルシウムチャネルの効果だけが欲しいと、エスゾピクロンのようにS体のみの製剤はないのかと思いますが、ありませんね。
アムロジピンのS体のみを精製するコストと、需要や臨床的な効果が見合わないのでしょうか。
一応、ラセミ体とS体のみを比較した臨床試験があり、良好な結果がでてます(PMID:27586538)。
ジヒドロピリジン系も非ジヒドロピリジン系も、それ以外の医薬品も、ラセミ体結構あります。もっと調べてみたいですね。