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【編集部コラム】慶應大卒25歳は、なぜ夢を捨てきれないのか

「森林監督より面白そうな人を知ってるよ」

 昨夏、慶應義塾高校が甲子園を制覇し、世間が慶應フィーバーに沸いている頃、野球部関係者がある人を紹介してくれました。NPB入りの夢を追い続けて独立リーグでプレーしている生粋の慶應ボーイ。それも聞くところによると高校、大学とレギュラー経験のない、全くの無名選手だったらしい。それが保科圭伸だったのです。

 みなさんは独立リーグに所属する選手の生活をご存知でしょうか。チームによって違いはあるものの、基本月給は10万から多くても15万前後。そこにヒット1本1000円というように活躍給が上乗せされます。しかし道具にかかるお金や遠征費、家賃、食費などの生活費を除けば残るお金はわずかばかり。オフシーズンにバイトを掛け持ちしてシーズンインに備えるという選手も少なくありません。多くの有望な選手がNPBの華やかな舞台を夢見てジリ貧の戦いを続ける、シビアな世界なのです。

 保科もそんな生活の中で、もがき続ける夢追人の一人です。しかし、野球に関しては非エリートである彼が、夢を諦めるのに使えそうな理由はこれまでもたくさんあったはず。野球を離れて社会で輝く慶應の先輩や同期の姿を横目に、それでもバットを振り続ける彼に対して最初に浮かんだ問いがこれでした。

「なぜ君は〝夢〟を捨てきれないのか」

 取材中の彼は、とても真摯で、かつ強靭な言葉を返してくれました。まっすぐな彼の言葉をどのように受け止めるかは、その人の心が今どのように揺れ動いているか教えてくれるリトマス紙のようです。

 1093号掲載の彼をとりあげた記事のタイトルは、先ほど書いた「問い」をそのまま使いました。何かに向かって挑戦し続ける人にこそ、読んでいただきたい記事です。

(写真・西村満、文・本田祐也/Number編集部)


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