配信観劇メモ:花組『アウグストゥス/Cool Beast!!』 付 華優希サヨナラショー
初見感想はこちら。
薄い。感想が薄い。向こう側が透けて見えるほどに薄い。
どうしてこうも薄いのか、というくらい薄い。その理由を、たぶん勉強不足が理由だろうなと分析してみていて、そして今日はちゃんと(ちゃんと?)面白かったのだけれど、さよならショーを見ていて合点がいった。
わたし、れい華のいちゃいちゃラブコメ至上主義者だったのでは??
まったく違う分野の作品を見ているのに、脳内でコレ(いちゃラブ)を想定していたのだろうなぁ、と、しみじみと思ったのでした。想定が間違っていた。だから「そうじゃないよ」と準備して観た今回は面白かったんだろうな、と思いました。という前振り。
以下、ネタバレはパンフ程度の感想戦です。
アウグストゥス
宝塚のお舞台は、どうしても人に寄せて見てしまいがちなのですが、こと物語として見ると、民衆の在り方が凄く面白い物語だった。
国の在り方、特にこれから誰とどう争っていくのかが為政者によって大きく変わり、しかもその為政者の交替が、前為政者が斃されることにによって成り立つ世界。民衆は為政者を斃す「英雄」を求めたがる。その声の大きさが、為政者たちの後押しとなり、あるいは逆風となる。
効果的にこの民衆たちの声を響かせていて、その声が為政者側の意識を、行動を変革させる。民主的といえばそうなのだけれど、なにせ長期的な視野で見通すより、目の前のひとつひとつに対してその風向きが変わる。そういう世界で民衆を率いるためには、自身に信念が必要だ。
善、というよりは勝てば官軍的な正義。そういった世界観の中で、為政者側の人間たちの本質、何を自身の核として生きて死ぬか――、というお話なのかな、と。
いきなり最後のシーンへ飛ぶと、死者たちの声が響く場面で、それぞれが「愛」「祈り」といった、彼らにとっての核であったろう言葉を言っていて、それを知ってもう一回観ると、途端に物語がわかりやすくなりますよね……。やっぱりおかわり前提案件だった気がする。
ラブコメ亡霊をお祓いした上で見ていると、「何を選んで、どう生きるか」という人間の本質、そしてそれぞれが持つ感情を明確に目に、声に宿そうとされているのが伝わってくる。というかですね、『歌劇』を読むと、みんなそこに苦戦してらっしゃったんですね……なんて難解な脚本を書かれるんですか、先生。でもその演者さんたちの苦悩の結果は、十分演技に生かされていたのかなぁとも思います。
あと配信でちょっと残念だな、と思ったのは、紗幕やライティングを使った美しい演出があまり映っていなかったことです。表情と声の演技に集中できたのは嬉しかったので、贅沢な話ですが。
そして無観客について。この短い期間で、無観客を逆手に取ってきっちり持ってきていらっしゃるな!と思いました。開演前の空っぽの客席風景は、今日この悲しい現実を突きつける感じだったけれど、始まって以降は、静けささえも味方につけているかのようでした。熱狂と静けさ、その落差が際立っていたように思います。ライティングのタイミングやなんかも工夫されたのでしょうか。
あ、薄っすらネタバレますが、ひとつ叫びたいです。17場Bの神殿での場面。悲しくも透明な微笑みを浮かべて首を振るポンペイアに、オクタヴィウスがうつむき、涙を流しながらも微笑みを浮かべたシーンが!クッソ刺さりました!
あとは東京公演始まってから、ネタバレつつ感想書きます(まだ書くんかい)。
Cool Beast!!
2幕モノのショーを、まだシルクロードしか体験していなくてですね。それを踏まえた上での本作、あの、わっかりにくっ!!って思ってしまいました、すみません。むしろシルクロードが例外的なのだろうな、ものすごく物語だった。
Cool Beastでも、すべてのシーンにおいてなんらかのストーリーのつながりみを勝手に見出そうとして、んんん?となった結果、あれ?あれ?となっている間に終わってしまった感。体感5分。面白い、面白かったし好きなシーンもあちこちたくさんあったのだけれど、あれは……幻?という残像みたいな記憶。
なので、今回はわかることを放棄した結果、出てくる場面を見てすなおに面白い素敵!みたいな感じになれました。よかった。なんで世界観もまるで違う結婚式はじまった……?とか思っちゃいけない。結婚式のシーン、可愛いだろ?それでオッケー!でいいんだ、たぶん。なぜベスティアさま性別変わった……?とか思っちゃいけない。だって綺麗じゃん!!あの並び、あのダンス、見たいでしょ?!オールオッケー。
となった結果、結局体感は5分。おかしいな。
華優希サヨナラショー
ネタバレます。東京公演への配慮はしません、すみません。
なぜなら!スカステの録画を!失敗していたから!!泣
サンスポさんが、華さんからのメッセージを文字起こししてくれているのでこちらから。それぞれが連ツイとなっているので、全文を知りたい方はクリックしてどうぞ。
これがショーの後半の伏線になっているとは知らず、ただただ華さんの言葉に涙していました。「ただの高校生」だった彼女が、あんな綺羅星ばかりの100期生の中で選ばれてこの場所に立つまで、どれだけの努力を重ねて来たのか、これまでの努力の一端を伺わせてくれるお話に。
先日のDream Timeでのお話と合わせても、その努力のほどは凄まじかったのだろうな、と思わされました。宝塚という努力をすること、し続けることができる才能が集う場所で、さらに周囲からその努力を認められるほどの人だったのだろうな。
わたし個人として、華さんの一番の魅力はヒロイン力だと思っていました。例えるなら、少し昔の少女漫画。平凡に近しい女の子が、努力をして、その努力が認められて、見出される話。頑張ったら報われる。恋だって叶う。そういうヒロインのような、頑張っている人が自分を重ねて「わたしも頑張ろう」と思えるような、そんな力。または隣に存在する人をヒーローにしてしまう力。
でも、同時に、彼女は少年漫画みたいな熱い生き方をしてきた人なんだなぁ。聞いた話で、彼女が誰よりも早く稽古に入り、誰よりも遅くまで練習していた、とか。そうして努力し続けてくれたおかげで、わたしはこの世界を知ることができたのだな……と感謝しかないです。
幕開け、TAKARAZUKA 花詩集 100。
ブルーのドレスに身を包み、大階段にひとりたたずんでのスタート。初舞台のお歌を、同期と一緒に、って……!!と、かつての思い出を共有できない自分ながらも、その設定でもう泣ける。
輝く未来(恋スルARENA)
あああ、これ華さんのお披露目の日のヤツですね!!
わたしが見た映像の中の彼女は、震えて、自信なさげで、声も届かなくて、でもキラッキラで。そんな彼女の姿を脳裏に思い浮かべつつ、遠い親戚モードで「こんなにも立派になって……!」って気持ちになりました。あの姿を見守っていた人たちは、より一層そう感じるのだろうな。
Never Forget You(A Fairy Tale)
まだA Fairy Taleを見ていないがため、印象は上に同じところで止まっています。結果的に、かわいいかわいいまじ天使以外の感想がない。
はいから極道(はいからさんが通る)
これまで浮かべていた表情から一転され、紅緒だ!あれは紅緒さん!紅緒さんの顔!くっそ可愛い!あんなドレス着てるのに、お転婆紅緒さん!!頬っぺた潰したい!
わたしが拝見した初めての宝塚、2020年のはいからさん@東宝。銀橋も使えず、オケもなく、という状態だったので、たった一人で、セットもなくて、でもあの日、本当なら見られるはずだったものはこれなんだよ、という完全版を見せてもらえた気分でした。
そして最後のハケ方!あんなドレス着てるのに、紅緒じゃん。完全優勝でした。なんなん、あれ。
スーパーアキラさんタイム。
わたしは!過去作をまだまだ知らなくて、履修が不十分でして!!
マスカレードホテルしか観られていないんですけど、あの女言葉の歌の作品が観たいです、あれをきちんと衣装を着て歌っているアキラさんが観たいです。
あと黒燕尾のまま、センターで花組の組子さんを率いて踊る姿が、これまでの一端しかしらない私でも泣くヤツでした。これは、どれだけ特別なことなんだろう?それだけの人だったのだな、と、容易に想像ができる。Cool Beast本編の男役群舞(あっちは大階段の使い方が好きなので、あれはあれで見たい!)と違って、黒燕尾といえばコレ、といったダンスを見せてもらえて、それが凄く良かったです。
退団者の皆さんのシャルム!!、からの華さんとアキラさん加わって6名でEXCITER!!。
ずっと見てきた方には、この流れもまた感動的なモノになるんだろうな……!という。華さんもアキラさんも、ピンクのドレス&燕尾がめっちゃ可愛かったしお似合いだった。
'S Wonderful(NICE WORK IF YOU CAN GET IT)
銀橋でウエメセ気味だった華さんが、けれど大階段から現れた柚香さんを前にしてくるん、とビリーになってしまう可愛さよ。なんなの!!タップをしながら楽しそうに歌い合う姿はやっぱりビリーとジミーで、相変わらずジミーのタップは歌うように美しくて、ビリーのそれは時におぼつかない感じもあるのだけれど、それを見るジミーの目が優しすぎる。手を取り、導き、声をかけ、二人だけの世界。
この瞬間、最初に戻りますが「わたしが!勝手に観られると期待していたれい華はこれだった!!」って腑に落ちました。
ところでナイワを(はいからさんも)入院中の友達に貸してしまっているので確認できないんですが、あんなにもジミーはビリーだけを見つめてましたっけ??ビックリするほど、ビリーしか見てなかったですね??
というところを見ながら、なんとなく今日、無観客だったからなんだろうな、などと考えておりました。疎外感という意味ではなく、です。
合間に小さくジミーが声をかけるところが、本当に好きで。物語の後も、二人がこうやって過ごしているんだ、というところを見ているよう。と、脳内ではナイワの世界が再生されるんですよね。短い1シーンだけなのに、1芝居分の思いを感じる瞬間。客に聞かせるつもりのなさそうな大きさの声で、彼女を見つめながら「ビリー」っていうのが、本当にもう。こういうお芝居を見せてくれるから、柚香さんと華さんの二人の組み合わせが好きなんですよ!と叫びたくなる気持ち。
最後、ぐるんぐるんと振り回され、目を丸くしてびっくりして声をあげる華ビリーの可愛さが天元突破でした。それを抱きとめつつ勢いに驚く柚香ジミーも。ああ、幸せな時間だった。
風の誓い→大正浪漫恋歌(はいからさんが通る)
見つめ合ったまま始まる二人。伝説のおでこコツンで終わる風の誓い。はいからさん千秋楽の発表に崩れ落ちた日のことを思い出してしまうけれど、でも画面越しに伝わるのは凄まじいまでの多幸感。
コツン、からの少尉からのキスの仕掛けに、慌てて逃げ出す紅緒さん(衣装は違っても、あれは少尉と紅緒さん)。そんな彼女に、両手を広げておいで、と迎える笑顔。本当にこのやりとりだけで、1芝居見させてもらった気になる。
胸に飛び込んできた彼女を抱きしめたまま、ゆらゆらと耳元で歌う大正浪漫恋歌。生の感情を通わせているように見えるのが、唯一無二の、この二人ならではの表現に思えてくる。どこまでがリアルで、どこからがお芝居か、まったくわからない。お芝居が上手い、という範疇を超えて、こちら側に夢を見させてくれる。凄まじい。
ここから銀橋を渡って戻ってくるまで、ずーーーっと手を繋いだままの二人。これを見ながら、華さんのごあいさつ、手を引いて導いてくれた、という柚香さんに対する想いを思い出して「うわぁ、リアルに手を引いてるよ、ずっと手を離さないよ……?!」となりました。元々こうする予定だったのか。華さんのご挨拶を聞いて、こうすることに決めたのか。わからないけれど、見ていて圧倒的な多幸感を与えてくれたな。
冬星アキラさんが登場して歌うのを、いちゃつきながら見ている二人に「ちょっとは気を使えよ!」と思い出したりもしましたが笑、以降もマジで手を繋ぎっぱなし、離したかと思えばバックハグ。しかし心から嬉しそうな笑顔を浮かべている紅緒さんな華さんを見れば、まあそのまま幸せでいてね、以外に言う言葉ありませんよね……となりました。
ここまでで無意識のうちにくすぶり続けていた「れい華のイチャコラが見たかったんじゃー」という亡霊が成仏しました。本当に素敵なショーをありがとうございました、幸せ。
退団者さんからのごあいさつとカテコと。
瀬戸さんは、私が拝見した時にはもう圧倒的な「男の中の男(役)」で、花組を率いるアニキで、でも最初からそうではなかったというエピソードを振り返られていて、途中で諦めず、ここまで来てくださって本当に良かった、と心から思いました。
「宝塚の生徒が、二度とこのような景色を見ることがないような世界になることを」という言葉を、かみしめるように言いながら客席を見渡されている姿が、目に焼き付いています。自分のためではなく、後に続く人のためにそう言える瀬戸さんの姿が本当に素敵でした。
柚香さんからの「あきらさん」呼びが初という、なんか「これ見てもいいヤツですかーーー?!」というもだもだ感が良かったです。呼ぼう今日こそ呼ぼうと決めていたのかな。そこから瀬戸さんの男役としての格好良さを言語化すべく、「小さな頭、広い肩幅……」と一通り言ったのち、リピートしはじめたところまで、実に良いものを見せて頂いて……感。
美花さんの「悔いなしッ!」は、本当に気持ちがストンと落ちました。いつそうなっても仕方がない、という覚悟は、そうそうできるものじゃないと思うのです。
そして柚香さんの、今の時代だからこそ可能になったこの配信という環境への感謝。拍手が聞こえるようだというお話。それでも言わずにいられなかった「あと2日……!」という言葉。すべてが沁みました。わたしはその悔しそうな言葉を聞けたことで、正直、ホッとしました。もう無観客になったことを、演者さんに謝られたくはなかった。あれは本当につらい……。
前後しますが、華さんの絶叫「愛してます!」が本当に本当に、なんというかもう。きれいなおべべ着せてもらって、タップもできたしね、と公演を振り返ったくせに、他の皆さんには重めで長めの一言を述べていらっしゃるのに、声のトーンがお花がフワフワ舞っていそうな柔らかトーンの癖に、華さんからの愛の告白にはレスポンスがないままとか。とか!でもそれこそ、華さんが世界で一番好きな場所、楽屋で思う存分二人きりでいちゃこらしながらレスしてください、という妄想を掻き立てる、本当に素敵なコンビでした……。それを見守る組子の皆さんのお顔も含めて、本当に、本当に。
「花組サイコー!」と瀬戸さんの声での花組ポーズ。そして締めの言葉は「負けないぞーっ!」。本当に素敵な公演で、素敵なショーでした。
どうか、東京公演は瀬戸さんが願った通り、あんな景色が広がるような事態に、二度となりませんように。そして最後まで無事、負けずに完走できますように。楽・前楽は無理でしたが、他に数日間、座席を埋める一人となれそうです。空間をつくる一人となって、いまの花組の皆さんのお姿を目に焼き付けたいと思います。