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彩雲棚(Saiun-dana)

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彩雲棚は小笠原流煎茶道において別伝で伝えられる点前で用いられる棚の名称。丸みを帯びた形は優雅で棚の中央に茶入れを置く直線的な棚が設けられている。そのデザインは、彩雲棚の名前から伝わる雲の柔らかさと太陽を、そして段違いの棚に置かれたお道具の色彩が彩雲の光の筋を思わせる。 彩雲棚点前には、仕服扱いのある彩雲棚点前、香羽を用いる三客立ての彩雲棚香羽点前、風炉を用いる彩雲棚風炉瓢杓点前がある。彩雲棚点前は仕服に入れた塗のお茶入れを扱う数少ないお点前である。棚の名前の由来となっている「彩雲」とは、雲が太陽の近くにあって、虹の様々な色が雲に現れる現象。
Saiun-dana (彩雲棚) is a kind of a portable shelf unit (tana) which tea implements are displayed in a tea room for the tea-ceremony. “Saiun" means "iridescent clouds”, which is the occurrence in a cloud, located in the vicinity of the sun.

彩雲という言葉は、唐の詩人、李白の有名な詩『早発白帝城』の冒頭に登場する。『早発白帝城』が作られた時期には諸説あるが、李白が永王の乱に加担した罪に問われ流罪となった後、赦免となり白帝城から江陵にもどる途上の三渓の船上での様子を記した詩と言われている。
The word “saiun (彩雲)" appears in the beginning of a famous poem "Departing from Baidi in the Morning” written by Li Bai (701–762).

李白『早発白帝城』
<原文>
早発白帝城
朝辞白帝彩雲間
千里江陵一日還
両岸猿声啼不住
軽舟已過万重山

<読み下し文>
早(つと)に白帝城を発す 李白
朝に辞す白帝彩雲の間(かん)
千里の江陵一日(いちじつ)にして還る
両岸の猿声(えんせい)啼いて住(や)まざるに
軽舟(けいしゅう)已に(すでに)過ぐ万重の山 (ばんちょうのやま)

<解説>
李白(701〜762):唐の詩人。杜甫と双璧の中国史上最高の詩人
白帝城:中国重慶の長江三峡の地名。漢の時代に築かれた白帝城の名が由来。三国志で劉備が戦に敗れ白帝城に逃れ、後の事を諸葛亮に託し没したのは有名。
千里の江陵:1里は約400m、現在の中国では500m。白帝城から江陵までの距離はおおよそ400〜500km。日本の1里は3km弱で定義が中国とは異なる。
猿声啼いて住(や)まざる:このあたりは猿が多いことで有名
軽舟(けいしゅう):小さな船
已に(すでに)過ぐ:すでに過ぎてしまった
<参考図書>
『李白』筧久美子(著)(ビギナーズ・クラシックス 中国の古典文庫)

1300年の時空を越えて、李白が目にした彩雲の風景を心に浮かべつつ心静かにお茶を淹れたくなる彩雲棚です。

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