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昼飲みの彼女

友人に会いに行くため、休日の電車に乗った。
昼前からイタリアンで乾杯なのである。

イタリアンの店と決まっているのに、朝食にうっかりピザトーストを食べてしまった。この間抜けさを白状するか黙っておくか、そんなことを考えながら揺られて行った。

待ち合わせ場所で私を見つけると、「ヒールのかかとが取れちゃってさ〜」と嘆きながら近づいてくる。挨拶とか近況報告とかをすっ飛ばせるのも、私と彼女の関係ならではか。


以前、彼女のことを書いた記事。超個人的な友人論です。


彼女の足元を見ると、ヒール先端に付いている1センチほどのゴム部分が、片方だけ無い。歩きづらいので応急処置をしようと駅前の修理店を覗いてみると、なかなかの金額、さらに先客が何組かいて混んでいる。
しかもこの日、都内はギラギラの夏日だった。真上からの陽射しと路面からの強烈な照り返しが容赦ない。
「暑いっ、のど渇いたっ、ビールが先だっ!」
そう叫んで彼女はくるりと向きを変え、私たちは予約した店へと向かった。歩いている途中でもう片方のゴムも取れ、彼女の左右は同じ高さになった。


イタリアの「ペローニ」というビールで乾杯。クセがなく、ほどよい苦みで飲みやすい。


キリッと辛口の白ワインは、カルパッチョに合う、チーズリゾットにも合う。

生ハム、ガーリックトースト、牛肉煮込み、どれもおいしい。
カラフェで頼んだ赤ワインが空くころにちょうどラストオーダーとなり、心配していたピザまでは到達しなかった。

ゆっくり三時間ほど飲んで店を出た。外はまだ明るく、夕方の気配はない。
昔、若かった頃は、このほろ酔い状態でゲームセンターのクレーンゲームに興じたり、ソニプラで派手なマニキュアを買ったりしてから、次の店に移動したものだ。
いつのまにかそんなパワーは無くなり、最近は二軒目に直行するパターンがほとんどとなった。

腹ごなしを兼ねて、遠回りしながら駅の反対側まで歩く。香ばしい煙の薫りに誘われて、串焼き屋さんへ入った。
ほとんどが男性一人客のカウンターに並んで座り、彼女はレモンサワー、私はハイボール。ハラミ、つくね、ホルモン系など数本ずつを注文。
カリッと香ばしい焼き上がりは、まさに別腹。おいしさを噛みしめながら顔を見合わせ、改めての乾杯をする、ああ、この瞬間の楽しさよ。

暑い日のハイボールは最高。二杯目は"メガ"のレモン抜きで。

会う前はいつも、新しい話題なんて無いなあと思うのだけど、会えば会ったで、話すことは尽きない。
仕事の愚痴、最近の親の様子(お互い実家に遊びに行ったこと有り)、将来のこと、健康診断の結果、昔の恋人の風の噂、おすすめのスーパー、新入社員時代の笑い話・・・。時空を縦横無尽に行き来しながら、真面目なことからくだらないバカ話まで、毎度のことながら振り幅がものすごい。長いつきあいだからね。

夕方まで小一時間ほど飲んで、暗くなる前にお開きとなった。別れるときは割とあっさりなのも、いつものこと。
いつでも会えるから、またしばらく会わない間も元気でね。
いつも言うことだけど、帰りの電車、乗り過ごさないようにね!


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