宝物
苦しのだ。いつも。
空気が在ったとしても、
うまく呼吸ができなければ意味がない。
そんなふうに何かが欠けている。
いつも。
心療内科の予約を取り損ねていたせいで、
朝の薬がなくなってしまってから2日が経つ。
案の定、激しい躁転と体内の血中濃度が
下がってきたからかわからんが、
離脱症状みたいなのも相まって自己の
コントロールが制御不能になりそうになる。
かろうじて、なんとか必死に意識して保つ正気ってやつも、そんな危ういもんなんて、
例えばわたしが、1秒でも呼吸をひとつ抜くだけで
簡単に崩れるようなものでしかない。
強い憤りが腹の中から湧き上がる感覚を
久しぶりに知った。
産毛ひとつひとつが逆立って、
敏感なアンテナのようにこの世界の目に映る
全てのものを受信しては内臓が煮えくりかえる。
悲しみは人の心を壊さないらしい。
だが、怒りは人の心を簡単に壊すらしい。
以前、なんかで読んで覚えてた。
猫と犬と魚とシロナガスクジラが好きで、
音楽と映画と読書と裁縫が好きで、
黒と青と白色が好きで、
タバコと無糖の冷たい紅茶が好きで、
ジョアン・ミロと奈良美智と芦雪が好きで、
お布団が好きで長く眠ることが好きで、
ただそれだけじゃダメですか。
そこに加えられるのは躁鬱の女とその女の過去。
わたしはわたしなのに。
わたしはどこにもほんとうはいない。
同居人がわたしの様子がおかしいことに、
気づいてくれて薬は箱の大量の薬の中から
なんとか4日分の薬がでてきてくれた。
もうお薬飲んでたくさん寝ます。
たくさん起きてたので。
この子たちは、どうしてわたしのことを
信じきって、こんなに無防備なんやろか。
もしわたしが正気を見失ったとして、そしたら
わたしはこの子たちを撫でてきたその手で簡単に
骨を折って殺すことも簡単にできてしまうのに。
そんなこと、微塵も疑わないまんまるなおめめで
真っ直ぐにわたしをみつめてくれる。
例えどんな状況下でどんな状態であっても、
絶対に何がなんでも保たなければならない自分が
やっぱりあるんだよ。
絶対に見失っていても見失ってはいけない自分。
もし、万が一、わたしがこの子たちを殺めてしまいそうになった時はどうかわたしは自分のことを殺していますように。
この子たちは一切の傷も負わず、
どうか無事でありますように。
ほんとうにただそれだけは、
お願いします。
おやすみなさい🌙
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