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「この花壇は美しいね」 あなたは魔法の言葉を紡いだ レモングラスの風に乗って 私の耳元をほんのり染めた 花を咲かせる土である私は 芽吹くことができなくて 渡り鳥のあなたは遠く 遠く 二度と届かない魔法が欲しくて 抱きかかえた心はマグマのように 呪縛されていく 瑞々しい花が一輪 真っ赤に咲いた 人々は突然変異だと感嘆した あんなに青白かった花がと 鳥も近寄らない花を喜ばないで 涙は次の花へ託されて 花壇は眠り姫を始めて 少しずつ 少しずつ 魔法を濾過していく ここは何
ねぇ 貴女 どちらが月でスッポンか よく競い合ったよね 私 スッポンになりたくなくて 月を掴もうと藻掻いていた 水面から 羽ばたこうとしていた 貴女は黙って見ていたよね 月のように輝いた眼で優雅に泳いでいた 私 ザラメで心を燃やしながら 貴女が飛び立つ瞬間を待っていた きっとそうなると思って 貴女は岸辺に寄って立ち上がった 私のことを見たのかどうか でも 月を獲り合った 月は抱きしめられないと分かっていた それでも 月は落ちてきたの 藻掻いて足掻いて 月を獲ったの