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宇宙科学連合 講演会 2024 姫路

11/5-8の宇宙科学技術連合講演会に参加してきました。
今年はSLIM, ルナクルーザー、LUPEX, MMXなど大型プロジェクトの発表が目白押しで、行きたいセッションがあり過ぎて周りきれない、大満足の学会でした。
参加者数は2500人を超え、ここ数年でかなり増えてきているようです。

アクリエ姫路という大変綺麗な会議場で開催されました

嬉しい悲鳴ですが、参加者が多いため小さめの会議室では立ち見でも入りきれず、廊下にまで聴講者が溢れかえっていました。より大型の会議場は日本国内で限られるため、運営の皆様のご苦労が伺えます。

セッション中の撮影はNGなため、文章のみでのまとめですが、印象に残っていることを徒然に書きます.

SLIM
2024年の1月に月着陸して大きな成果を挙げたSLIMについて、総括した発表がされました。セッションの数も7個と多かったです!プロジェクトマネジメント、軌道計画、着陸シーケンス、通信、着陸機構、マルチバンドカメラ、小型ローバなど多様な発表が行われ、深く理解することができました。余談ですが、プロジェクトメンバーの方々の結婚や出産などを毎回メンバーでお祝いされるなど、風通しをよくして若手とシニアの良好な関係構築にご尽力されている話も印象的でした。

月面3科学
JAXAさんとしては今後月面において、月面3科学を検討しています。
月面天文台、月からのサンプルリターン、月震計ネットワークです。

 月面天文台は、ダイポールアンテナという10mくらいの高さのシンプル形状のアンテナを複数月面に設置して、より精度の高い宇宙探査を行うものです。月の裏側は人類由来の電波ノイズがなく観測に適していること、天の川銀河自体の電波ノイズをキャンセルして電波探査を行うようです。
 サンプルリターンは、月の岩石を採取して地球に持ち帰ります。月は地球よりも静かな天体(地殻活動的に)なため、太陽系初期の情報を保存しているようです。ただ表面の岩石を採取するのではなく、隕石衝突などで飛散した比較的内側のより原初の岩石を狙って採取するようです。SLIMのピンポント着陸が活かせそうですね。アポロが先行し、中国が近年リターンを成功させるなど活発な分野です。
 月震計は、地震計を地表に設置して月震や月の内部探査を行うものです。月の地震は昼と夜の温度差などで発生していると考えられ、月震自体が弾性波探査源になります。アポロでも震度計が設置され、複数のネットワークを構築できたことで月内部の探査にアプローチできたようです。一方、アポロのネットワークを月の表側の一部のエリアになるため、月の裏側等にも震度計を設置することで、より正確な内部探査も可能です。月の将来的な滞在のためにも、震度の強さや頻度の正確な情報が必要です。日本は地震大国であり震度センサーも高い技術を有しており、それを活かしてクロリティの高い観測機器を開発します。

月探査
私たちは月の砂を固めて建材ブロックにして、ルナロード(月面道路)やルナストラクチャー(月構造物)を構築する研究を発表しました。
他にも、宇宙服などに付着したレゴリスの除去、レゴリス地盤での基礎挙動、月面電源設備(太陽電池タワー、燃料電池)など興味深い研究がありました。
「いま月について語ろう」のパネルディスカッションでは、産官学の理学・工学分野の代表者が集い、今後の月探査・開発の魅力についてお話がありました。

月について語ろうのパネルディスカッション

この中で特に印象的だったことを書きます。月の水について、存在していたとしても初期に取れる量は僅かであること、なので過度に期待せずに割り切って、圧倒的に軽い水素を地球から運搬して、月の砂に多量に含有される酸素を熱分離して水を生成するのも良い。 放射線対策で月面モジュールに月の砂を被せても、散乱した放射線がより長期にわたって蓄積暴露され、砂を被せない方が放射線の影響が小さい。防護するには3mを超える厚さが必要であり,重量が大きくなり過ぎる。
月面開発に取り組む私には重要な示唆を多く得られました。

有人与圧ローバー(ルナクルーザー)
 5つのセクションで発表がされ,積極的なPRを感じました。ローバーミッション・システム・探査計画についての発表から始まりました。
走行システムでは,既にシャーシのプロトタイプの試験走行が始まっており,国内の屋外試験場所で傾斜や悪路走行を検討されています。またバーチャルでのシステム試験と同時に駆動系に実際に負荷を与えて,月面走行を模擬して最適化する検討には驚きました。他にも通信アンテナ群の検討,環境生命維持,燃料電池など詳細な発表がありました。

ローバーのプロトタイプ
extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mext.go.jp/content/20240823-mxt_uchukai01-000037646_1.pdfより転載


 クルーシステムの発表では,10年間のローバー稼働で年1回宇宙飛行士が探査で使用し,1回につき28日程度の滞在が計画されているため,必要な物資でキャビン内は結構きつそうな印象でした。これから最適化が行われると思われます。月面に計測機器を設置する際,まずは有人の時に計測機の立ち上げや初期設定をします。この時にトラブルが多いので,有人での対応で確実性が上がるようです。その後,ローバーにセットしたら,残りの数ヶ月は無人で稼働して所定の場所に無人でローバーにより計測器をセットしたりできるそうです。
この計画では,2030〜2040年は毎年,宇宙飛行士が月面に滞在することになります。持続可能な月面探査・開発となるよう祈っています。
 月面探査で大変なのは越夜です。夜は太陽電池で発電できず,燃料電池に頼り過ぎると,電池の質量が極めて大きいようです。そのため,夜時間の短い南極においては,効果的に太陽電池を展開して発電する必要があります。ルナクルーザーも展開式の太陽パネルが搭載され,ロール状に巻き取れるポールにシート状の太陽パネルぶら下げる形式でした。ポールの角度は調整でき,太陽光の入射角度を調節します。

太陽光パネルの展開イメージextension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mext.go.jp/content/20240823-mxt_uchukai01-000037646_1.pdfより転載


宇宙飛行士セッション
今回は山崎直子さんと若田光一さんが発表される超贅沢なセッションがありました。お二人とも宇宙飛行の経験を活かされて生命維持システム(ECLSS)に関する発表をされていました。
この学会の大トリは若田光一さんによるご講演で,ポストISSとなるAXIOMスペースの軌道ステーションについてお話を頂きました。

若田光一さん
AXIOMのステーション 宇宙工場も設置され無重力環境で実現可能な半導体や人工臓器が生産されるそうです。
最初は国際宇宙ステーションとドッキングし,ISS運用終了後は独立稼働します。
ドッキング時カッコいいですね!


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